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チェンマイ・イニシアチブは投機マネーを規制しない

ASEAN3.jpg5月の連休に京都でおこなわれたアジア開発銀行(ADB)の総会と平行して行われたADB市民フォーラムに参加してきた。同フォーラムは、ADBが「開発」の名の下に、融資対象国の人々にさまざまな悪影響を与えていることを告発するもの。5月5日-6日の二日間でのべ600人ほどの参加者を集めた。attacも通貨取引税、債務、貿易、女性などのワークショップを主催/共催した。参加した団体の多くがこの取り組みに自信を持ち、今後の活動のさらなるステップとなったことは間違いない。

同フォーラムの報告はまたattac本体がやるだろうから、ここではADB総会と同じ時期に開催されたASEAN+3(日中韓)財務大臣会議で合意した多国間金融協力について。
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5/4~6日の各紙には、「通貨危機回避へ多国間協力」とか「金融危機再発防止へ前進」とか「外貨準備を一元化 通貨危機防止へ合意」などの見出しが躍った。

5月4日に行われた日中韓三カ国財務大臣会議および、翌5日に行われたASEAN+3(日中韓)財務大臣会議で、チェンマイ・イニシアティブの多国間化が合意されたことによるものだ。

チェンマイ・イニシアティブ(CMI)とは、「(1997年アジアの)通貨危機を教訓に2000年の財務相会議で合意した2国間の通貨交換協定を推進する金融協力」(京都新聞)である。簡単に言えば、協力に合意した二国間のどちらかの国で通貨危機が発生し、その国の政府が為替介入をする外貨が不足した場合、合意したもう一方の国が外貨を融通するというもの。そしてこの二国間合意をアジア各地に張り巡らして通貨危機に備えるという構想で、現在までにASEANおよび日中韓の域内で8カ国が参加、総額は800億ドルに上る。

概念図(PDF)

これまでは二国間合意の集合体であったが、これを多国間協定に改めて、各国が保有する外貨の一部を一箇所に集め、域内の通貨危機に対応するという。資金規模や為替介入発動のシステムなどは今後の検討課題であり、2-3年後をめどに検討を進めるという。

日本のメディアは「歓迎」一色のようだが、投機マネーを規制するつもりのない、無責任な政策だと言っておこう。いや、あるいは野心的な政策かもしれない。

今回、京都ADB市民フォーラムに際してattacなどが招聘したパトマキさんたちや、attacが提唱している通貨取引税は、CMIのように金融資本や投機マネーに好き放題させるという前提のもとでの対処療法ではなく、売り買いを何百回と繰り返してぼろもうけをたくらむ投機マネーを積極的に捕捉して課税することで、投機に対するインセンティブを減少させる攻勢的な政策だ。

 ○ 通貨取引税(トービン税)とは(ATTAC Japan)

通貨取引の大半は生産的な投資や貿易の決済とは全く何の関係もない、たんにボロもうけするためだけに金融市場に投げ込まれたマネーである。市場にたくさんのプレーヤーとマネーが投じられればそれだけ安定性が増す、という新自由主義イデオロギーとは裏腹に、ぶくぶくに膨れ上がり、つねに儲けを求めて巨額のマネーが徘徊している通貨取引市場は、世界的な規制緩和が推進され市場が拡大した1980年代以降、世界的な通貨危機を何度も引き起こしてきた。それだけをとってみても、流動性のある大きな市場が安定するものではないことは明らかだ。

CMIおよびその拡充版は、このような巨大に膨れ上がった通貨取引市場を規制し、適正な規模に縮小させることにはなんの役にも立たない。どんどんどんどんもうけなさい、投機や売りぬけ結構です、もしそれで通貨危機が発生したら、人々が額に汗して蓄えた資金(外貨準備や税金など)で買い支えますから、というのがCMIだ。

今回の財務相会議で合意された多国間CMIは、その資金のプールをアジア開発銀行など既存の多国間金融機関にゆだねる、という案もでている。日本のメディアは、97年通貨危機直後に日本政府が提案し米政府に速攻で粉砕された「アジア通貨基金」構想の再来だ、として一様に歓迎ムードでこの多国間CMIを持ち上げている。

ただでさえ浮遊マネーから調達された資金による「開発」が、アジアの人々の生活や環境を破壊しているのだ。人々の生活を破壊する国際金融機関にさらなる外貨プールをつくることになんら疑問を呈しないほうがおかしい。

情けない話だが、ADBと多国間CMIの協力を公然と批判したのは、自らの権益が脅かされることにはきわめて敏感で行動力に長けるアメリカ資本の代理人、ピール米財務次官補代理だけだった。

ピール代理はADB総会の演説で「(ADBは)経済開発機関としての本来の役割を引き続き果たすべきであり、その使命から外れた新しい任務を目指すべきではない」。「ADBは、民間のベンチャー・キャピタル・ファンドと張り合う必要はなく、中銀の資金運用を担う必要もない。ミニIMF(国際通貨基金)になる必要はない」と述べた。(ロイター5/7)

新自由主義者にCMI批判を委ねてはならない。「もう一つの世界」をもとめる社会運動の側から積極的にCMIへの批判を展開しよう。

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ヘッジファンドの規模は拡大している。運用資産総額は10年前の約4倍となる1兆5000億ドル近くに膨張しているという。(産経5/8)

アジアの新興国市場はいまバブルだ。投機マネーがどんどん流入している。バブルは必ずはじける。バブル崩壊で路頭に迷うのは普通の人々だ。多数の犠牲(リスク)のもとにしか成り立たないシステムはいらない。

投機マネーを規制し、タックスヘイブンをなくし、途上国債務の鎖を断ち切り、貧困と戦争を生み出すシステムを廃止し、世界規模での民主主義を実現するための取り組みを、たくさんのひとたちと考え実践していきたい。

国際的な投機マネーに課税を!通貨取引税(トービン税)導入を求める市民運動の呼びかけ(ATTAC Japan)
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