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ドキュメント「首飾りを作ったのは誰?~中国・出稼ぎ少女の労働事情~」

qui_bia.jpeg昨年11月にNHK BSで放映されたドキュメント「首飾りを作ったのは誰?~中国・出稼ぎ少女の労働事情~」を見た。

BS世界のドキュメンタリー
「首飾りを作ったのは誰? ~中国 出稼ぎ少女の労働事情~」

[原題] ~Mardi Gras: Made in China~
[制作] アメリカ 2006年

おもしろかったです。アメリカのニューオリンズで行われるお祭りで使われるビーズの首飾り。金持ちのオヤジが500ドルも出して購入する大量のビーズの首飾りは、祭りに参加している女性たちに投げ与えられ、ビーズをもらった女性は胸を見せる、といういかにも「アメリカン」なお祭りです。

そのビーズは中国福建省でつくられている。500人もの労働者の90%以上は農村からの出稼ぎ女性労働者。おおくが10代後半から20代前半。早朝6時起床、7時過ぎから仕事が始まり、14時間はたらかされる。ビーズは合成樹脂なので、健康への被害も懸念される。1日はたらいても2-3ドルの稼ぎ。同じ動作を1日3000回。ミスをしたら罰金、工場内での恋愛は禁止。

経営者は、香港でそだち、改革開放で帰ってきたロジャー・ウォンという62年生まれの男性。

「この工場はこの町でトップ10にはいるくらい条件のいい工場」「労働者は自由だ。昔のような奴隷ではない」「従業員を弟や妹のように、信頼した一人の人間としてみている」と、自信満々に工場を紹介してくれる。

しかし「罰則は必要。ミスをしたりノルマを達成できないと罰金。工場内で色恋沙汰のばあいは一ヶ月の賃金を差し引く」。

工場で働く女性達は16歳のクイ・ブイ、18歳のガ・ホン・メイなどみんな若い。「うちは貧乏。弟がいるが、二人が進学することは無理。弟に期待している」「工場に来て一年目は寂しくて泣き通し」「正月に帰省する。弟にお土産を買った」など話してくれる。

シーンはふたたびニューオリンズのお祭り。街ゆく若者に「この首飾り、どこからきたかしってますか」という監督の質問に「そんなことに興味はない」「ここへは楽しみに来た」「ビーズ会社からだろ」と、またまたいかにも「アメリカ人」的な答え。もちろんみんな酔っ払っている。まわりはみんなお祭り騒ぎ。「中国からきた首飾りで、低賃金で働かされている」と教えても「低賃金といっても、中国ではそうではない」「資本主義とはそういうもの」とこれまた模範解答。

シーンは再び中国。16歳のクイ・ブイは、正月休みの帰郷する。カメラは彼女の帰郷に同行する。久しぶりに会う家族たちとのひと時の団欒。しかし父親は「うちの子の出稼ぎがないとやっていけない。将来は仕送りで商売でもやりたい」と屈託のない笑顔でカメラに話しかけるところがちょっと切ない。

もっと条件のひどい工場はいっぱいある。このドキュメンタリーで登場したビーズ工場はまだかなりましなほうだとおもう。しかしそれにしてもあらためて悲惨だとおもいました。中国の出稼ぎ労働者の境遇の厳しさを知って入るつもりでも、映像でみるとまたインパクトがあります。

ただ、ちょっとだけ希望があったのは、お祭りに参加していた若い人の中でも、中国の工場の様子をビデオでみせたところ、「首飾りをはずしたくなる」「不公平だ」と悲しげな表情を見せた人たちがけっこういたこと。

そして工場で働く女性たちが、厳しい中でも屈託のない笑顔を見せてくれ、「この前賃下げでストライキをした。賃金を上げるという約束で仕事に戻ったが、賃金が戻らないので、またストライキをやる」と話していたことだ。だまって搾取はされていない、社会を作り変える可能性のある若くはつらつとしたプロレタリアートの誕生を垣間見た気がした。

50分の番組。何かの機会にまたみんなで見たい。
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NHK BS-1 の「米市民が驚き低価格を支える中国の出稼ぎ少女」を見ましたので、これも個人的なまとめを載せておきます。別名は「首飾りを作ったのは誰? ~中国 出稼ぎ少女の労働事情~」。ニューオーリンズのマルディグ

2007/03/01 (Thu) 23:33 | 中華狂の詩