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わがまま放題の規制緩和ボーイズ--労働法制改悪をねらう経済財政諮問会議

gen0324.jpg「労使自治で労使が対等の交渉ができるかというと、実際の力関係から言ってできない、という考え方で労働法制ができている。これを全く平等でフリーマーケットでやれるなら、民法でやればいい。何のために労働法制が制定されたか。最低限の労働者保護規定を設けることは労働法制の一番の基本」

新自由主義改革の司令塔、経済財政諮問会議のなかで柳澤伯夫・厚生労働大臣がおもわずこぼしたセリフだ。自民党出身の大臣がこんなことを言わなければならないほど、同会議の内容はネオリベに染まっている。
(画像は1922年第三回メーデの垂れ幕:大原社研デジタルミュージアムより)


労働法制の大改悪がもくろまれている。

1)8時間労働の規制撤廃につながるホワイトカラーエグゼンプション。これは残業代0円、長時間労働、過労死を促進する。
2)会社の一方的都合で解雇や労働条件の改悪をすることができるようになる労働契約法。金さえ払えば解雇OKになる。会社が一方的に変更できる就業規則が労使の合意よりも優先されてしまう。

など、はたらく人々にとっては何一ついいことがない。政府や財界、御用学者などは「多様な働き方にあった労働法制」などとほざいているが、結局は企業にって有利な「多様な働かせ方」でしかない。

12月20日、安倍晋三首相が議長をつとめる経済財政諮問会議では、「労働市場改革専門調査会」という労働法制の大改悪にむけた参謀本部があらたに設置された。会長は「規制緩和で雇用が拡大した」とふざけた放言を放っている八代尚宏・国際基督教大学教授が就任した。

この調査会の設置が提案された11月20日の経済財政諮問会議でのやり取りを紹介する。八代氏は、労働ビックバンについてのビジョンを説明した後、柳澤伯夫・厚生労働大臣に向けて次のように噛みついた。

八代 「柳澤臨時議員は、例えば派遣の期間制限は派遣労働者の固定化防止のために必要ということだが、本当にそうなのか。新しく雇用される人にとってみると、例えば3年間の派遣が4年である方が、雇用はより安定するが、3年に制限されるということは、その企業でもっと働きたいと思う人が、法律によって首を切られることになる。派遣期間を制限することで、本当にその人が正社員になれる保証はどこにあるのか。規制というのは、それが持つプラス・マイナスをきちんと判断した上で必要になるのではないか。 長期雇用はよい慣行というのは全くそのとおり。ただ、国が規制しなければ、企業はあえて長期的視野に立った人的資本の蓄積をしないということはない。そういう規制は企業のためからは必要ないはずであり、あくまでも労使の自治によって終身雇用、年功制を決めればいいのではないか。」

こいつ何をいっているんだ・・・。法律で規制しているから、これくらいですんでいるんじゃないか。規制がなかったらどんどん使い捨てをすることくらい分からないのか。「本当にその人が正社員になれる保証はどこにあるのか」?聞く相手が違うだろう。雇う側に聞け。

八代氏の発言のあまりのひどさに、柳澤大臣もついこんな発言をしてしまう。

柳澤 「長期雇用については規制しているわけではない。長期雇用は、今までの長い日本の労使の間ででき上がった単なる慣行である。少し誤解があるようなので申し上げておきたい。 もう1つは、先ほど労使自治ということを言われたが、労使自治で労使が対等の交渉ができるかというと、実際の力関係から言ってできない、という考え方で労働法制ができている。これを全く平等でフリーマーケットでやれるなら、民法でやればいい。何のために労働法制が制定されたか。最低限の労働者保護規定を設けることは労働法制の一番の基本なので、そこはしっかり考えていただけたら大変ありがたい。」

おもわず「異議ナシ!」と叫んでしまうような名セリフだ。自民党の大臣からこんなことを言われるくらい八代氏の発言に代表される規制緩和ボーイズの考えは奇異なものなのだ。

柳澤大臣は続ける。「先ほども申し上げたが、三者構成による労働政策審議会での労働法制の改廃ということは、是非御認識を賜りたい。労働者、経営者にとって、まさに現場の規律をしているのが労働法制であり、それゆえに労使と中立な公益委員の入った三者の間で実際の法制度が整備されていくプロセスである。諮問会議で御議論いただいて、いろいろ教えていただくことは結構だが、その上で法制度の改廃ということになると、労働政策審議会の場に持ち込んでエンドースしてもらうプロセスを避けるわけにはいかない、ということだけは申し上げたい。」

極めてまっとうな意見だ。政府の諮問会議で改めてこんなことをいわなければならないほど、八代氏らの主張は尋常ではないのだろう。しかし意見がまっとうだからといって、審議会での議論もまっとうかというと、そうではない。「労働政策審議会」では、財界の意向を受けた厚生労働省が年内中に労働法制改悪の法案骨子を確定しようとしている。もし財界の意向を受けた厚生労働省案が国会に提出され、可決された場合、時計の針を100年以上も逆転させる労働法制の大後退になってしまう。なんとしても審議会段階でつぶしたいものだ。

新たに設置された労働市場改革専門調査会は、審議会の攻防に対する新たなプレッシャーになるだろう。八代氏ら規制緩和ボーイズは、労働側、使用者側、政府の三者による審議会はもちろんのこと、関係閣僚らが参加する経済財政諮問会議でさえも気に食わないようだ。閣僚や関係省庁(厚生労働省)の影響を排除した労働市場改革専門調査会という規制緩和仲良しクラブの密室のなかで、「今後10年程度の中長期的な労働市場改革のあり方を検討する」。

こんな非常識な専門調査会にわれわれの税金を使うな。専門調査会も経済財政諮問会議もすぐ解散を!

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■労働市場改革専門調査会の構成(予定)
会長
 八代尚宏 経済財政諮問会議議員
専門委員
 井口 泰 関西学院大学経済学部教授
 大沢真知子 日本女子大学人間社会学部教授
 小嶌典明 大阪大学大学院高等司法研究科教授
 小林良暢 グローバル産業雇用総合研究所所長
 佐藤博樹 東京大学社会科学研究所教授
 中山慈夫 弁護士
 樋口美雄 慶應義塾大学商学部教授
 山川隆一 慶應義塾大学大学院法務研究科教授

(資料)
2006年11月30日 経済財政諮問会議議事要旨
労働市場改革専門調査会の設置について(2006年12月20日)
労働市場改革専門調査会の検討項目についての意見(2006年12月20日)
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