
日本を含むアジアのセックスワークを取り巻く環境を説明していただき、わたしたちの身近な事柄として日本の状況を理解し、アジアの運動とどのようにつながるのかが最後に提起されました。これについてはまた後日おたのしみに。
いつものように、どたばた準備で始まったattacこうとうですが、提起された中身は、教育基本法改悪くらい深いです。勉強になりました。報告は後日に譲るとして、参加者から出された問題について、さめないうちにメモとして残しておきたいとおもいます。それは「性の商品化」とセックスワークとの関係をどうみるのか、という質問についてです。もちろん講師の水島さんからは、参加者からのこのような質問に誠実に答えていただきました。謝謝! 僕も発言の中でも少し触れましたが、それについて答えている本を紹介します。箇条書きでまとめましたが、一部抜粋している箇所もあります。参加した皆様、参考までに。(い)
『Q&A 男女共同参画/ジェンダーフリー・バッシング バックラッシュへの徹底反論』(日本女性学会/ジェンダー研究会編/明石書店)
Q20 ジェンダーフリーの考えでは、買春する男性やセックスワークをどうとらえているのですか?(103~107頁)より箇条書きおよび抜粋
・性の商品化としてセックスワークを批判する考え方、当事者の自己決定としてセックスワークを肯定する考え方のどちらにも一理あり、どちらかを見下す考えはやめたほうがいい
・強制売春にはみんな反対している
・道徳観に基づくセックスワーク蔑みは女性を分断する男性にとって都合の良い考え方
・(家父長制の)結婚秩序の肯定とその裏返しとしてのセックスワーク、という考えから解放される必要がある
・社会全体に蔓延する性における貧困な状況をおさえなければならない
・「カネや権力や暴力で他者を支配してもいいという考えとジェンダー規範、セクシュアリティ規範をベースにした、今の貧困かつひどい“性にまつわる秩序・文化”」を「性貧困秩序」とよぶ
・フェミニストに共通しているのは、このような「性貧困秩序」を変えたいという思い
・セックス産業、ポルノ関連商品はこのような「性貧困秩序」の意識の上に成り立っていることが多い
・「フェミニストは、本人の自己決定、自由、尊厳の尊重の視点から、セックスワークと買春自体は理念において権利と認め、性産業で働く女性たちの自己決定を尊重する(したがって、案前夜労働条件が守られるようにする)と同時に、社会的文脈を考えて、性貧困秩序を再生産する様々な商品やサービスや行動に対する異議申立の運動を行っているのです。そして、人間関係なんてこんなものと見くびるような性貧困秩序と対抗的な、新しい人間関係をつくろうと模索しているのです。その『新しい人間関係』とは、『カネ第一主義の従来の物欲・性欲、物質的効率第一主義、従来のジェンダー・家族単位思考、従来の性別役割関係、従来の恋愛観、従来のセックス観、従来の美醜観』などと結びついた支配・従属関係と対抗的な人間関係なのです。」
・上記のような差別・支配構造の変革は簡単ではないので、「売春を労働と認めるべき、労働法の問題」「合法化すればいい」等というだけではだめ
・非処罰化を要求する人々と性差別的な秩序をなくしたいと思う人々が一緒になって「変えていくべき対象は性貧困秩序であり、めざしたいのはひとりひとりが自分や他人を傷つけずに生きられることなのだ」と確認して、一緒になっていくことが重要
・セックスワーカー当事者からの意見を聞くことは重要
・セックスワーカー当事者が現存しているのだから、多様な個人のセクシュアル・ライツの尊重、セックスワーカーの自由・安全・権利の拡大、セックスワーカーに対する蔑視・差別の解消、社会全体の性暴力・性差別の減少、性暴力・性差別被害者の心身が癒されることなどが必要
・「セックスワークを、他人事として論じず、性に対する考え方が多様であることを認め、『あるべき正しい性のあり方』を押しつけるような道徳主義、性的保守主義をまず排除し、自分と社会の性的な解放を考える姿勢で臨むことです。今までこの点をよく考えもせず、セックスワークを忌避してきた自分の世界観(セクシュアリティ観)の見直しをはじめていくことが必要なのです。そして性暴力の被害者実態から学び、誰の性的自己決定権も侵害してはならないことを強調すると同時に、性における差別秩序をなくし、高いレベルの人間関係・社会関係をつくろうとしている人々の価値観への共感が広まることをめざしているのが、フェミニストであり、ジェンダーフリーの立場なのだわたしは思います。」