
今回の署名では(1)日本からの投資に対する課税引き下げ、(2)フィリピンへの進出企業に対するみなし外国税額控除の10年延長、の二つについて合意した。
(1)日本からの投資に対する課税引き下げについて
フィリピンへの投資促進のために日本からの投資に対して以下のように税率を引き下げることに合意した。
配 当に対する税率 現行25% → 改正後15%
利 子に対する税率 現行15% → 改正後10%
使用料に対する税率 現行25% → 改正後10%
これは世界各国・地域でおこなわれている投資に対する優遇競争であり、社会運動が「底辺に向けた競争」と批判するものそのもの。「あの国が引き下げたから、わが国も引き下げなければならない」と、どんどん投資マネーに対する優遇政策が拡大されていく。それは課税や関税だけにとどまらず、労働条件の引き下げや金融規制の緩和などにおいても同じように「底辺に向けた競争」が進められる。フランスではCPEとなって現れ、日本ではホワイトカラーエグゼンプションとなって登場しつつあり、タイや韓国をはじめ世界各国で通貨危機を引き起こしてきた。
あたかも投資受入れ国側(今回の場合であればフィリピン)の必要によって「底辺に向けた競争」が進められているかに見えるが、実は投資する側の強い要望がそこには反映されている。「税率高い?じゃあほかの国に投資するよ」「労働組合運動を弾圧できないの?じゃあこの国から撤退してもっとしっかりと組合を弾圧してくれる国で生産するよ」と。小泉政権を支え続けた経団連前会長の奥田碩氏のお膝元、トヨタ自動車の子会社、フィリピントヨタでは長年にわたる組合弾圧が行われている。これが安倍首相とアロヨ大統領の言う「経済協力」の一面である。
□ フィリピントヨタ労組を支援する会
(2)フィリピンへの進出企業に対する「みなし外国税額控除」の10年延長について
「みなし外国税額控除」とは、進出先で支払ってもいない税金を支払ったとみなして、日本国内の本社に対する課税を減免する措置。
トヨタの場合を例にみてみよう。フィリピントヨタはフィリピン政府に税金を納めた後の利益をトヨタ本社など株主に株主配当として支払う。日本の国税庁は、トヨタ本社が受け取ったその配当利益はすでにフィリピン政府に対して納税した後のものであり二重課税を避けるために、税額控除を認める。しかし、もし(1)のように税率優遇が行われた場合、フィリピンでせっかく課税率が引き下げられても、日本国内で課税対象となってしまうことから、トヨタにとっては(1)のような税制優遇制度はあまり「おいしい」ものではなくなってしまう。
そこで「開発途上国が減免した租税を、進出企業があたかも納付したものとみなして、進出企業(の親会社)がその本国で納付すべき租税の額から控除するもの」として「みなし外国税額控除」という制度をつくり「開発途上国から強い要望がある場合に、開発途上国への経済協力という政策的配慮から、租税条約上みなし外国税額控除を規定することに応じてきた」(財務省)という。
フィリピンに進出する日本企業は、今後10年ものあいだ、支払ってもいない税金の控除を受け続けることになる。事実上の減税措置だ。消費税を引き上げよ、という財界だが、自分たちはちゃっかりと減税されている。日本企業、日本政府、フィリピン政府による共謀である。
いま日本政府とフィリピン政府が推し進めようとしている日比経済連携協定では、日本から有害廃棄物がフィリピンに輸出されるのではないかという懸念が高まっている。税金は払わないが廃棄物はおしつける、フィリピンの日系企業で働く労働者の権利を弾圧し、日本ではたらくフィリピンからの移住者には厳しい労働条件と低賃金をおしつける日比の「経済協力」でいいのだろうか。
□ 日本政府は廃棄物の「国内処理原則」を守り資源循環に名を借りた「途上国への輸出」戦略を止めるべき市民団体共同声明(2006年12月8日)
(化学物質問題市民研究会)
WTO交渉の再開にむけた水面下の動きが活発化する中で、各国間の経済連携協定(EPA)交渉も網の目のように進められている。しかしそこには労働者、環境、生活、人権、平等などオルターグローバリゼーションの理念は排除されている。
「底辺へ向かう競争」を拒否し、国内各地の草の根の取り組みをつむぎ、国境を越えた希望と闘争の連帯を。
□ 脱WTO草の根キャンペーン(連続講座開催中!)
(参考)日・比租税条約改正議定書の署名について 外務省 平成18年12月9日
(参考)日比租税条約(改正議定書)の署名について 財務省 平成18年12月9日
(参考)Tax Sparing Credit Systemタックス・スペアリング・クレジット(みなし外国税額控除)
(1)日本からの投資に対する課税引き下げについて
フィリピンへの投資促進のために日本からの投資に対して以下のように税率を引き下げることに合意した。
配 当に対する税率 現行25% → 改正後15%
利 子に対する税率 現行15% → 改正後10%
使用料に対する税率 現行25% → 改正後10%
これは世界各国・地域でおこなわれている投資に対する優遇競争であり、社会運動が「底辺に向けた競争」と批判するものそのもの。「あの国が引き下げたから、わが国も引き下げなければならない」と、どんどん投資マネーに対する優遇政策が拡大されていく。それは課税や関税だけにとどまらず、労働条件の引き下げや金融規制の緩和などにおいても同じように「底辺に向けた競争」が進められる。フランスではCPEとなって現れ、日本ではホワイトカラーエグゼンプションとなって登場しつつあり、タイや韓国をはじめ世界各国で通貨危機を引き起こしてきた。
あたかも投資受入れ国側(今回の場合であればフィリピン)の必要によって「底辺に向けた競争」が進められているかに見えるが、実は投資する側の強い要望がそこには反映されている。「税率高い?じゃあほかの国に投資するよ」「労働組合運動を弾圧できないの?じゃあこの国から撤退してもっとしっかりと組合を弾圧してくれる国で生産するよ」と。小泉政権を支え続けた経団連前会長の奥田碩氏のお膝元、トヨタ自動車の子会社、フィリピントヨタでは長年にわたる組合弾圧が行われている。これが安倍首相とアロヨ大統領の言う「経済協力」の一面である。
□ フィリピントヨタ労組を支援する会
(2)フィリピンへの進出企業に対する「みなし外国税額控除」の10年延長について
「みなし外国税額控除」とは、進出先で支払ってもいない税金を支払ったとみなして、日本国内の本社に対する課税を減免する措置。
トヨタの場合を例にみてみよう。フィリピントヨタはフィリピン政府に税金を納めた後の利益をトヨタ本社など株主に株主配当として支払う。日本の国税庁は、トヨタ本社が受け取ったその配当利益はすでにフィリピン政府に対して納税した後のものであり二重課税を避けるために、税額控除を認める。しかし、もし(1)のように税率優遇が行われた場合、フィリピンでせっかく課税率が引き下げられても、日本国内で課税対象となってしまうことから、トヨタにとっては(1)のような税制優遇制度はあまり「おいしい」ものではなくなってしまう。
そこで「開発途上国が減免した租税を、進出企業があたかも納付したものとみなして、進出企業(の親会社)がその本国で納付すべき租税の額から控除するもの」として「みなし外国税額控除」という制度をつくり「開発途上国から強い要望がある場合に、開発途上国への経済協力という政策的配慮から、租税条約上みなし外国税額控除を規定することに応じてきた」(財務省)という。
フィリピンに進出する日本企業は、今後10年ものあいだ、支払ってもいない税金の控除を受け続けることになる。事実上の減税措置だ。消費税を引き上げよ、という財界だが、自分たちはちゃっかりと減税されている。日本企業、日本政府、フィリピン政府による共謀である。
いま日本政府とフィリピン政府が推し進めようとしている日比経済連携協定では、日本から有害廃棄物がフィリピンに輸出されるのではないかという懸念が高まっている。税金は払わないが廃棄物はおしつける、フィリピンの日系企業で働く労働者の権利を弾圧し、日本ではたらくフィリピンからの移住者には厳しい労働条件と低賃金をおしつける日比の「経済協力」でいいのだろうか。
□ 日本政府は廃棄物の「国内処理原則」を守り資源循環に名を借りた「途上国への輸出」戦略を止めるべき市民団体共同声明(2006年12月8日)
(化学物質問題市民研究会)
WTO交渉の再開にむけた水面下の動きが活発化する中で、各国間の経済連携協定(EPA)交渉も網の目のように進められている。しかしそこには労働者、環境、生活、人権、平等などオルターグローバリゼーションの理念は排除されている。
「底辺へ向かう競争」を拒否し、国内各地の草の根の取り組みをつむぎ、国境を越えた希望と闘争の連帯を。
□ 脱WTO草の根キャンペーン(連続講座開催中!)
(参考)日・比租税条約改正議定書の署名について 外務省 平成18年12月9日
(参考)日比租税条約(改正議定書)の署名について 財務省 平成18年12月9日
(参考)Tax Sparing Credit Systemタックス・スペアリング・クレジット(みなし外国税額控除)
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