世界の未来をいっしょに取り戻そう--attacの基本綱領

1998年6月3日のフランス結成総会で採択されたアタックの基本綱領です。
世界の未来をいっしょに取り戻そう
アタックの基本綱領


金融のグローバル化は経済的不安定や社会的不平等を悪化させる。また、人々の選択、あるいは全体の利益をはかる任務をおびた民主主義的諸機関や主権国家といったものの脇をすり抜け、そういったものの地位を低下させる。そして、それに取って代えて、多国籍企業や金融市場の利益だけを代弁する投機的論理を持ち込む。

世界の変化は宿命であるという錦の御旗のもとに、市民とその代表はみずからの運命をみずからの手で決める権利を奪われようとしている。このような市民の地位の低下、無力化は反民主主義的な諸党の前進を利するものである。こうしたプロセスを食い止めるために、国内次元、ヨーロッパ次元、国際次元において、調整と統制をおこなう新たな機構をすぐにでも創出しなければならない。しかし、これまでの経験に照らして考えるならば、政府が外からの働きかけなしに、そのようなことに着手することはおよそ期待できない。したがって、内部からの社会崩壊と政治的絶望という二重の挑戦に立ち向かうためには、市民の積極的な活動がどうしても必要である。

資本流通の全面的な自由化、税金天国、投機取引の爆発的な増加のために、国家は機関投資家を優遇しようとやっきになっている。近代のグローバル化という美名のもとに、外国為替市場では、財やサービスの取引や生産とは無関係に、瞬間的な利益の獲得を求めて一日あたり一兆五千億ドルもの資金が行き来している。こうした変化は、資本収入の絶えざる増加をもたらす一方、労働収入の減少、雇用不安の増大、貧困の拡大という結果をまねいている。

かくして、賃金労働者は、当面の安定を求めて、年金制度を年金ファンドに切り替えることを余儀なくされる。そうすると、企業はさらに目先の収益だけを追及するところとなり、労働条件は悪化し、金融界の勢力圏は拡大し、市民は国民のあいだ、民衆のあいだ、世代のあいだの相互連帯の構築は何の役にも立たないと考えるようになる。

OECDに属する国々は、経済成長と雇用の促進を口実にしながら、多国間投資協定(MAI)の締結をあきらめてはいない。この協定は投資家にあらゆる権利を与え、国家にあらゆる義務を押しつけるものである。同時に、ヨーロッパ委員会といくつかの政府はアメリカとヨーロッパを結ぶ新市場の設置(NTM)によって自由貿易の十字軍を続行しつづけている。これは視聴覚分野においてアメリカ合衆国のヘゲモニーを公然と確立するとともに、共同の農業政策を解体しようとするものである。

南北間の不平等ならびに先進諸国内部の不平等を生み出すこうした機構のメカニズムを食い止めることはまだ可能である。しかし、それに取って代わるオルタナティブに関する情報が制限されているために、往々にして宿命論的な議論が幅をきかせることになる。そのため、たとえば、外為市場の投機取引に課税しようというアメリカのノーベル賞経済学者ジェームズ・トービンの提案に対しても、国際金融機関や大手マスコミ(そのオーナーの多くはグローバル化の受益者である)は無視しつづけてきた。トービン税は〇.〇五パーセントという低率であっても、年間一千億ドル近くの収入をもたらす。この税はもっぱら大金融市場が集まっている先進工業国で徴収されるものだが、徴収された金は貧しい国々における不平等の是正のための行動、教育や保健の向上、食料安全保障、持続可能な発展といったもののために使うことができる。この課税はまた、抵抗の論理を育て、市民や国家に行動の余地を与えるものであり、しかも、政治の復権を可能にするものである。

このような目的のために、署名人一同は、ここにアソシエーション・アタックを創設する。このアソシエーションは、それぞれの国のみならず、ヨーロッパ次元、国際次元においても、共同の行動を行うために、情報を生産し、伝達する。国際投機を阻止すること、資本所得に課税すること、税金天国を制裁すること、年金ファンドの一般化を食い止めること、そして、おおづかみにいうなら、金融界の利益のために民主主義が失った活動空間を奪回し、投資家や商売人の《権利》を口実にして国家主権が放棄されることに反対すること。要するに、われわれの世界の未来をみんなでいっしょに取り戻そうということである。

(一九九八年六月三日の総会で採択されたアタックの基本綱領)

『反グローバリゼーション運動 アタックの挑戦』(ATTAC 著 杉村昌昭 訳 柘植書房新社 発行)より
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