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『她的工廠不造夢:十三位深圳女工的打工史』(彼女は工場で夢を見ない 深圳の女性労働者13人の物語)

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メーデーなので『她的工廠不造夢:十三位深圳女工的打工史』(彼女は工場で夢を見ない 深圳の女性労働者13人の物語)という本の前書きを訳してみました。

台湾の書籍ポータルサイト「博客網」で、もくじ、および前書きが原文で読めます。
https://www.books.com.tw/products/0010933144

今後の中国研究会でもテキストに使ってみよう・・・。

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『她的工廠不造夢:十三位深圳女工的打工史』

(彼女は工場で夢を見ない 深圳の女性労働者13人の物語)

朱暁玢 著/尖椒部落 企画
2022年8月/新鋭文創より出版

【もくじ】

◎筆者まえがき  
 彼女たちと私たちの間のつながりを求めて/朱暁玢 3頁
◎まえがき 
 商品の背後にいる生産者を知る/尖椒部落(青唐辛子ブログ)・雅清 9頁

◎1960年代に生まれて
 萬萬の物語  手先の器用な萬萬・・・20頁

◎1970年代に生まれて
 小琴の物語 前半は文字通り「逃」人生・・・38頁
 江華の物語 ウィーチャットビジネスで自家用車を手に入れる・・・58頁

◎1980年代に生まれて
 書尾の物語 深圳を故郷だと思ったことはない・・・78頁
 丁当の物語 NGOを続けてたら今の私はなかった・・・96頁
 飯飯の物語 労働者シンガー飯飯・・・118頁

◎1990年代に生まれて
 曉娟の物語 ストライキが変えた人生・・・132頁
 小五の物語 もし出稼ぎに出てなければ巫女になってたかも・・・158頁
 斗斗の物語 フォックスコンのライン作業で働いた大学生・・・176頁
 燦梅の物語 働き始めて5か月で工場を訴えた・・・198頁
 紅艶の物語 目標はフォロワー1万越え・・・210頁
 小妮の物語 12星座のボーイフレンドたち・・・224頁
 多多の物語 私は他の人とは違う塵みたいなもの・・・240頁

◎撮影者の手記 あなたが何を考えてるのかは分からないけど/周厦中・・・257頁
◎謝辞/朱暁玢・・・260頁
◎参考資料・・・262頁


【まえがき】商品の背後にいる生産者を知る

携帯電話、カメラ、バッグ、衣類、枕・・・あなたの人生がこれらのモノから切り離せないのであれば、彼女たちの物語はあなたに関係しています。

彼女たちはこれらの商品の生産者であり消費者です。彼女たちはさまざまな地域からこの街にやって来て、さまざまな職場で働いています。彼女らの共通のアイデンティティは、中国人の女性労働者だということです。

中国国家統計局のデータによると、2020年の中国の農民工の総数は2億8560万人で、そのうち女性が34.8%、約9939万人を占めています。本書に登場する13人の女性労働者は、この約一億の人々の縮図です。同時に、彼女たちは血の通った生身の人間なのです。

学校を中退した女学生から市民団体の代表へ、労働運動の女性リーダーから専業主婦へ、倉庫作業員から歌手へ、大学生からライン作業労働者へ・・・彼女たちの物語は、寡黙で従順な庶民の女性という女性労働者に対する一般的なイメージを再考させるかもしれません。これらの物語は非常に複雑かつ生命力に溢れており、私たちは彼女たちの勇気、知恵、忍耐力を理解するだけでなく、自身の境遇と環境を変えようとする努力を知り、また異なる状況にある人々の生活を知ることを通じて、彼女たち一人一人の選択を理解することができるでしょう。

◆ なぜ中国人女性労働者に注目するのか

女性労働者のためのオンラインのプラットフォームである尖椒部落(青唐辛子ブログ)の活動に携わるなかで、職場における自分の仕事の状況や仕事に対する女性労働者の考えを耳にすることがしばしばありました。「疲れた」、「足が棒のよう」、「まるで機械みたい」などの言葉は、どれも彼女たちとの会話や彼女たちの文章に頻繁に登場します。特に工場の組立ラインで働く女性労働者は、毎日、極めて過酷かつ反復的な作業に適応しなければならず、彼女たちの身体と精神状態にとって大きな問題となっていました。

2010年3月17日、フォックスコン[アップル製品等の製造を受託する台湾企業]で働いていた田玉さんは賃金支払いカードを受け取れなかったことを苦にして寮の上から飛び降り、下半身不随の大けがを負いました。これは社会を震撼させた「フォックスコン13回連続飛び降り事件」の2回目の飛び降り事件でした。その後、田玉さんは一命をとりとめた生存者として多くのメディアから取材を受けました。メディアの意図は、飛び降り自殺を図った原因が労働者個人の「感情的問題」に起因するのか、それとも経営側の過酷な管理体制にあったのかを探ることでした。この一連の事件はまた「超搾取工場」(スウェットショップ)に社会が注目するきっかけにもなりました。

2010年10月、両岸三地[中国・台湾・香港]大学調査チームが発表した「両岸三地の大学によるフォックスコンに関する総合報告書」 は、次のように指摘しています。「フォックスコンの労働システムは、高強度の生産労働、低賃金、低消費、暴力的規律制度、労働者の分断などが特徴であり、それは労働者の尊厳を犠牲にしており、その本質は労働者に対する深刻な疎外と搾取である。」

この報告書のデーターによれば、労働者の38.1%が管理者や警備員によって自由を制限された経験があると回答し、労働者の54.6%が程度の差こそあれ工場のシステムや管理者に怒りを感じていると回答し、労働者の16.4%が管理者や警備員によって体罰を受けた経験があると回答しています。労働者がフォックスコンに対する印象を表すのに最もよく使う言葉として「厳しい管理」と「情け容赦がない」が挙げられています。調査チームはこの生産体制を「規律と懲罰の労働収容所」と名付けています。

フォックスコンは中国の経済発展モデルの縮図です。2015年のレポート「多国籍企業の人権責任保護に関する研究――『超搾取工場』を例に」(韓欣、林瑶、馮志偉) は次のように提案しています。「『超搾取工場』は劣悪な環境、賃金の遅延、労働時間の延長など一般的に想像される単純かつ粗暴な搾取方式にはとどまらない、新たな特徴を帯びている。」

例えば、「法定休日は守っているのに休日期間が圧縮されるという疑い、時間外労働の割り増し賃金は規定通り支払われているが残業そのものが強制的であるという事実、社会保険への加入と法定住宅積立金など企業の福利厚生は法律通り実施されているが、いざ労災が発生したら規定通りの補償を得ることは難しいという実態、特殊な業務、特に有毒物質を伴う作業において適切な手当が支払われないなどである」。労働者の意識の高まりに伴い、従来のような労働時間や賃金水準を通じた単純な搾取方法はもはや持続可能ではないが、新しい形態の搾取が大手を振ってまかり通っています。報告書はまた、余暇における労働者の単調な文化的生活、企業文化の欠如、コミュニケーションメカニズムの欠如など、通常は当然と思われるそれら製造労働者が置かれている状況も、超搾取工場の重要な特徴であると指摘しています。

これらのデーターと分析は、何人かの女性労働者の経験からも確認できます。本書のインタビュー対象者の一人である小五は、かつて尖椒部落(青唐辛子ブログ)への寄稿で次のように述べています。

「私がやっているのは金型の研磨の作業。流れ作業でロボットのように休みなく働く必要はありませんが、実際には生産ラインの同僚と同じように、孤独と寂しさの鎖から抜け出すことができません。時々、研磨のために機械台に登る必要がありますが、機械台の中は高温で、スペースも非常に限られているため、機械台での作業は少なくとも 30 分はかかります。出てくると、疲れて椅子に座りこんで寝入ってしまい、他の同僚と会話することもできません。こうして時は流れていき、私たちは工場に青春をささげ、汗を流してきましたが、それで残ったのは疲れ切った身体と魂だけです。」

「東平怡嬌」というペンネームを持つ女性労働者は、自分とチームリーダーやラインリーダーとの口論の過程を書き記しました。彼女は出勤の際にタイムカードを打ち忘れてしまったが、就業規則では出勤記録を後から補記することができるとされていました(さもなければ無断欠勤で処分されてしまう)。しかし、彼女の上司は補記などできないと一刀両断に主張。彼女は従業員向けの苦情窓口を通じてこの件を解決したのですが、この上司に「仕返し」され、大声で批判されました。

「翌日、私がいつものように組立ラインで製品を作っていると、ラインリーダーが怒りながら私に駆け寄ってきて「どうしてそんなに遅いんだ。他の職員は2000個以上できている。もう2時なのにあなたはまだ800個しかできてない。今日は残業をせずに早く帰りなさい」と大声で言いました。私たちの組み立てラインの労働者の基本月給は非常に低く、残業してやっと何とか生活費が足りるというのに。理由もなく残業をさせないことに、私はとても腹が立ちました。私が扱う素材はほかの同僚が扱う素材よりも時間がかかるので、その日は朝からずっと休憩もせず忙しく作業をしていたのです。彼は明らかに私のあら捜しをして嫌がらせをしている。」

ほかにも、女性労働者は工場内でのセクハラや理不尽な勤務制度による女性特有の健康問題にも直面しなければなりません。これらの問題は多くの場合隠蔽されていることから、関心がもたれることも難しい面があります。

「深圳経済特区ジェンダー平等推進条例」の施行から1年後の2013年、深圳手牽手工友活動室は「セクハラに遭う——セクハラに遭った工場の女性労働者に関する調査報告書」 を発表しました。報告書によると、回答者全体のうち、驚くべきことに71.2%が工場内でさまざまな程度のセクハラを経験しており、ハラスメントが発生した場所は主に作業場に集中し、セクハラ行為を行った者のほとんどは同じ班や近くで作業をしていた同僚らによるものでした。

調査結果は、セクハラに直面した女性労働者が一定の防衛意識を持っていることを示しています。回答者の六割以上が程度の差こそあれ抵抗していますが、事件の46%はうやむやに処理されています。セクシャルハラスメントの防止という観点からみると、企業には予防および対処のメカニズムが不足していると言えます。

こうした困難に直面しつつも、女性労働者たちは声を上げ、行動を起こし続けてきました。

2015年3月8日の国際女性デーでは、深圳の女性労働者は「生理休暇が欲しい」というスローガンを掲げ、夜勤、立ち仕事、トイレの回数や時間の制限、時間外労働、有害物質への曝露などの管理体制について、労働者、特に生理中の女性労働者には身体的影響があるので、女性労働者に対する「4期間の保護」を確実に実施するよう求めています(編集者注)。

編集者注:中国の「婦女権益保護法」第26条では、女性は月経期、妊娠期、出産期、授乳期の4つの期間に特別な保護を受けると規定されており、これに対応する労働保護基準がある。

2018年初め、深圳のフォックスコンの女性労働者は工場と工会[官製労組]に公開書簡を送り、労働者に対しセクハラの防止と対策のためのポスター掲示、セクハラ防止研修の実施、セクハラ対策相談窓口など、一連のセクハラ対策を講じるよう要求しています。「フォックスコンの女性労働者たちの#MeToo」と呼ばれたこの行動は注目を集め、国内外のメディアや中国の主流メディアや『観察網』 などでも報じられ、労働者の権利と利益の問題が再び世間の注目を集めるようになりました。

消費や娯楽が最優先される情報化時代において、女性労働者が自分の権利を求める声は、情報の奔流にかき消されることがままあります。プラットフォームとして設立した尖椒部落(青唐辛子ブログ)の目標は、「女性労働者の声を拡大する」ことであり、女性労働者が文章を通して自分自身を表現する権利を獲得すると同時に、女性労働者の真の訴えを社会に知らしめることであり、それは長期にわたり周辺化されてきた彼女たち自身の生命の物語でもあるのです。

それはまた、女性の労働者協同組合とのタイアップなど、ある種の搾取のない商業モデルの模索でもありました。たとえば、労働者が製品のあらゆる面の設計と生産に参加し、価格を決定する権利を持ち、真に製品の所有者になることができるかという実験です。本書では萬萬の物語のなかで、女性労働者によるフェアトレードの探求が描かれています。この点においても読者に何らかの思索を提供できるのではないかと期待しています。

現代の生産方式は、生産者と消費者が分離されています。私たちは、あらゆる種類の日用品を安価で購入でき、安価かつ便利なサービスを購入しながら、それらの商品がどこから、そして誰によって生産されているのか、そして誰によって消費者のもとに運ばれてくるのかを考える必要はありません。しかしその一方で、私たち自身も往々にしてサプライチェーンの鎖の一つとしてあくせくと働きながら、存在が見えなくされている状況に置かれています。

私たちは商品を通して、その背後にいる労働者の顔を思い浮かべることができるでしょうか。商品棚やウェブストアの購入カートから商品を選ぶときに、ほんの数秒のあいだ立ち止まり、その生産過程に思いを巡らすことができるでしょうか。私たちは「超搾取(スウェットショップ)商品」の購入を拒否することはできるでしょうか。もっとフェアトレードを理解し支援することはできないでしょうか。

まず知ること、それが第一歩です。もっと関心をもって考えることは、消費者と生産者の距離を縮めることにつながるでしょう。

本書に登場する女性労働者の何人かは、このプロジェクトの参加者でもあります。私は初稿を受け取ったとき複雑な気持ちでした。部分的には彼女たちの物語を熟知していましたが、これらのエピソードがこのような形で語られ、示されると、遠方から再び彼女たちに近づいていくような感覚にとらわれました。いま改めて、貴重な出会いであったと感じています。

インタビューから校了まで、そしてさらに紆余曲折を経て出版に至るまでに5年の歳月が流れました。本書に登場する13人の女性労働者たちがかかわった労働団体、そして彼女たちが過ごした深圳の工業地区も、多くの人々に変化が生じ、さまざまな事件を経験しました。ある女性労働者は結婚して子どもが生まれ、生活環境も大きく変わりました。NGOで活動している人は、再び工場の仕事に戻ろうかどうかと考えています。中国の都市産業政策の重点が製造業からハイテク産業へ移行し、生活費も高騰していることから、深圳を去って他の場所で働き続けることを選択した人もいます。2018年の集団争議事件によって、政府当局は再び労働団体への弾圧と統制を強化し、尖椒部落(青唐辛子ブログ)も2021年に正式に閉鎖を宣言することになりました 。

本書に登場する女性労働者の中には今でも連絡を取り合っている人もいますが、私たちは皆、この時代における砂粒のようなもので、風に流されてばらばらになっています。女性労働者にしろNGOスタッフにしろ、流転や離別はこれまでも常に直面してきた問題でした。それでも、私たちの声が伝わり続け、私たちの行動が何らかの影響力を持ち続けるのであれば、かつて取り組んだ仕事には価値があったと言えるでしょう。

本書が時空を超えた会話のきっかけになれば幸いです。そして、本書に登場する女性労働者たちがどこにいようとも、今これを読んでいる読者の皆さんは、本書の文章と写真を通して彼女たちと出会い、彼女たちの発した言葉のこだまを、さらに遠くまで伝えていくことができるのではないでしょうか。
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