fc2ブログ

《覚醒年代》の幕開け:ゼロコロナ抗議にたちあがる中国の学生・市民・労働者たち

20221128_02.jpg
2022年11月27日夜、上海乌鲁木齐中路で警官隊の前に立ちはだかる2名の大学の教員。ウルムチ火災犠牲者追悼に集まった学生たちを守る。

※赤字の箇所を追加しました(11/28)

11月25日金曜の夜から27日日曜にかけて、ゼロコロナ封鎖の解除を求める中国各地での闘争が燃え上がりました。直接のきっかけはウルムチ火災ですが、叫ばれたスローガンのなかには共産党政権や習近平の退陣、独裁ではなく民主を、という、党大会直前の抗議横断幕の内容がそのまま叫ばれています。フォックスコン鄭州の労働者の闘いも確実に影響してるはず。情報はTwitterが早かったですね。ほぼリアルタイム。これから封鎖解除にむかうのか、報復的弾圧があるのか(もう始まっているけど)余談は許しませんが、継続的にウォッチしたほうがいいとは思っています。

香港出身の友人たちでつくるウェブサイト「無国界社運/BORDERLESS MOVEMENT」(国境なき社会運動)でもさっそく運動の方針に関する短いアイデアが発表されていました。

◎ゼロコロナの全面解除を!感染拡大防止政策は人民と人権に奉仕すべし!独裁ではなく民主主義を!(2022年11月27日)
 https://bit.ly/3OERS67

街頭に登場した人びとの要求そのものは極めて素朴です。「ウルムチ火災の被害者は自分だったかもしれない」という恐怖と悲しみ、そして「解封!」(ロックダウンを解除して!)というものです。フォックスコン鄭州の労働者たちの要求も「約束通りボーナス払え」という、きわめてまっとうなもの。ほんらいはまったく社会事件になるような事ではない。たとえばこちらのレポートにある団地では住民らが封鎖を解除する様子が写真入りで時系列的に紹介されていますが、きわめて穏当です。しかしそれを認めない当局や資本の酷さ、そして団結して要求したことにたいする報復の酷さは、際立っています。「人民戦争」としてぶち上げられたコロナとの闘いが、じつのところ「人民に対する戦争」でしかなかったこということです。「人民警察」が「人民に暴力をふるう警察」のことだったということもわかりました。

少し前にニュースにもなったiPhoneの大半を製造している中国河南省鄭州にあるフォックスコン鄭州の農民工たちもまた、ゼロコロナにもかかわらず感染拡大のまっただなかで資本と官僚の鞭によって賃(奴隷)労働を強制されたと言えなくもありません。彼女たちの多くは生命が大事だとしてコロナの真っただ中、バブル方式で生産が続けられる工場からの大逃走を敢行。その補充として好条件を約束に駆り集められた労働者たちは、突然フォックスコンから「来年3月まで仕事を続けていたら約束したカネを払う。途中でやめたら払わない」という一方的な契約変更の通知を受けたことで、「当初の約束どおりのカネを支払え」とごく当たり前の要求を貫徹するために人民警察と衝突を繰り広げました。その結果、約束通りのカネを受け取り、生命が大事だということですぐにフォックスコンをやめて故郷に戻りましたが、その後故郷で警察の捜査を受けるという弾圧が続いているようです(怒) attac関西のブログに文章が掲載されていますのでご覧ください。

【国際署名】中国iPhone製造工場の農民工の権利保護を求める国際ウェブ署名&Apple Storeスタンディングアピール
http://attackansai.seesaa.net/article/493978963.html
(12月10日の国際人権デーには新宿3丁目のApple Storeでスタンディングアピールをやります。署名とともにご協力ください)

今回の上海をはじめとする全国各地の市民や学生らの抗議行動は、習近平の終身制と外遊での「成功」の直後に発生したこと、長引くコロナ封鎖に警察や地元管理者も管理疲れ、週末でネット監視治安要員も休みだったかとか、もちろんSNSで報じられ入ている以外の中国の圧倒的地域は「沈黙都市」のままですが、さまざまな要因が考えられますが、ウルムチ火災、貴州コロナ隔離バス横転事故、フォックスコン鄭州をはじめとするここ一か月ほどの事件は、多くの中国の人びとが「自分だったかも」と思わせた事件だったと思います。

20221128_05.png
▲「私たちはみんな新疆人、私たちはみんなフォックスコンにいる」  鄭州大学の張り紙

その上海では党の指示を守って上海で厳しいロックダウンを敷いた上海市共産党委員会書記・李強が10月末の党大会で習近平に次ぐナンバー2に抜擢されるなど、おそらく中国国内でも随一の都市住民である上海市民の多くらからは、党の政策全体が不評を買っていたのではないかと思います。

注目すべきは多くの市民、とくに若者(大学生らか)のなかに、党大会開催3日前の10月16日、北京市内の「四通橋」に掲げられたゼロコロナ政策と政権を批判するスローガン「PCR強制検査ではなくメシを、居住エリア封鎖ではなく自由を、デタラメではなく尊厳を、文革ではなく改革を、指導者ではなく投票権を、奴隷ではなく主権者になろう」を叫び、さらには「共産党は退陣せよ」「習近平は退陣せよ」のコールが集団で巻き起こったことでしょう。「四通橋」のスローガンはさらに「ストライキで独裁国賊習近平を罷免せよ」「指導者ではなく普通選挙を」「奴隷ではなく主権者たれ」なども掲げられていました。この抗議スローガンを掲げたとされる彭載舟さんの消息は依然不明ですが、彼の掲げたスローガンと四通橋に上った狼煙は、中国人民のなかに脈々と残っていたのです。

20221021bagong.jpg

このスローガンもいずれ燎原の炎のように登場するとは思っていましたが、まさか偉大な最高指導者の終身制が全会一致で通過した党大会からわずか一か月ほどで、これほどまでに炎が大きく燃え上がるとは思いませんでした。SNSによる誇大イメージはあるにしても、です。

(参考)永続革命の狼煙~中国共産党第20回大会がはじまって(2022/10/21)
http://attackoto.blog9.fc2.com/blog-entry-528.html

もちろんウルムチ火災という悲惨な事件の炎と、犠牲者を弔うロウソクの灯という、かなしい炎の延長、そして李文亮医師や亡くなった香港の若者たちをを追悼する炎の延長、そして89年天安門事件の犠牲者らを追悼するロウソクの炎へと連綿とつながっていることも忘れないでおきたいと思っています。

20221128_03.jpg
(2022/11/27上海・ウルムチ通り)

余談ですが、日本のメディアでは「ストライキで独裁国賊習近平を罷免せよ」のスローガンのうち、取り上げられたのは「習近平を罷免せよ」だけで、「ストライキで」の文字はほとんど報じらませんでした。「ストライキ」のスローガンが重要だとおもうのは、ひとつには社会をつくる力としての労働力が資本主義の世界で止まることは、資本が支配する社会にとってはとても衝撃的な事であり、その時ばかりは本当に社会を作っているのは誰であるのかを支配者も市民も実感できるからであり、そのストライキを通じた社会変革のスローガンだから、ということもあるのですが(エコ社会主義者としては、労働者階級がCO2を排出する生産活動を人為的にストップさせるという、さらにもう一歩進んだアイデアありますが、それはまたいずれ)、もうひとつはこのスローガンは香港2019デモでもずっと掲げられていたものだったからです。もちろんそのための組織の方法や戦術や戦略などもいろんな批判は成り立ちます。しかしそれでもなお、社会変革の手段として「ストライキ」が掲げられることの重大さを、「労働者と農民が主人公」と掲げる憲法を持つ国の支配者たちは忘れていないと思います。

清華大学や北京大学などの超エリート校をはじめ中国各地の大学で集団で或いは一人で抗議や追悼のスタンディングなどが行われました。習近平がペーパー入学(?)して学位をとったとされる清華大学では一人の学生が白紙を持ってスタンディングしてたところ(言いたいことは言えないが、言いたいことはみんな分かるだろう、という抗議の意思がある)、まずは数人が一緒に、そして数百人が応援に駆けつけています。

20221128_07.jpg
▲清華大学紫荊園(大学寮や学食のあるエリア)で白紙を掲げる学生たち(2022年11月27日)

20221128_01.png
▲抗議やスタンディングが確認された中国の大学端傳媒の記事より

SNSで流れる映像では「インターナショナル」が歌われたり、抗日義勇軍行進曲(国歌)が歌われたり、11/27の夜には四川省の成都音楽学院で学生らがスマホのライトを掲げながら(香港2019のときのように!)、なんと陳独秀の『新青年』創刊号に掲載された陳独秀の「敬(つつし)んで青年に告げる」を読み上げています。映像はこちらのtwitterから。

一、自主的であれ、奴隷的であるな
二、進歩的であれ、保守的であるな
三、進取的であれ、隠遁的であるな
四、世界的であれ、鎖国的であるな
五、実利的であれ、虚飾的であるな
六、科学的であれ、空想的であるな

20221128_05.jpg

「敬んで青年に告げる」の全文はもっと長く、上の日本語訳は一つ一つが節の小見出しです。全文は名訳『陳独秀文集1』(長堀祐造ほか編訳、平凡社)で。

まさに《覚醒年代》です。

20221128_08.jpg
(参考)苦難の時代に大河ドラマ「覚醒年代」を観る(陳怡) https://bit.ly/3GVqLBM

そうこうしているうちに、「無国界社運/BORDERLESS MOVEMENT」に新しい文章が掲載されていました。

◎革命的大幕正在拉開!(楚三戶、2022年11月27日)
(革命の大幕が切って落とされた!)
https://bit.ly/3UbZ5vq

《覚醒年代》のはじまりを彷彿とさせる内容です。がんばって訳しますか。

日本でも11月27日には新宿西口で急きょ中国人らによるスタンディングが呼びかけられていました。気鋭の中国ルポライター安田峰俊さんのSNSでも詳しくその様子が報じられています。

あ、もう文春オンラインの記事に。さすが。

◎「習近平は辞めちまえ!」中国の”ゼロコロナ反乱”が日本にも波及…新宿西口で抗議主催者と参加者に直撃(安田 峰俊)
https://bunshun.jp/articles/-/59031

最後に、11月30日19時から新宿南口のこちらの追悼集会にも参加が呼びかけられています。参加を。

20221128_04.jpg

スポンサーサイト



Comment

Leave a Reply


管理者にだけ表示を許可する