ロシア・アーカイヴ(英語)
https://www.icij.org/investigations/russia-archive/

20年間権力の地位にあり、搾取される労働者や自然資源の数も桁数に違うロシア。その腐敗の規模も桁ともにゼレンスキーの比ではないでしょう。
以下、レイバーネットのメーリスに投稿した文章です。開かれたパンドラの箱から、最後の「希望」が飛び出してほしいものです。(い)
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●パンドラ文書(第一信)
Date: 2022/04/01
Subject: [labor-members 60811] パンドラ文書について
こんにちは、会員のIです。
いつも興味深い情報ありがとうございます。言及されたパンドラ文書ですが、タックスヘイブンへの規制の運動に関心をもってきた(つもり)なので、すこし情報提供を。オフショア規制は労働者運動の課題だとも思いますので。
パンドラ文書のゼレンスキー情報はこちら(英語)
https://projects.icij.org/investigations/pandora-papers/power-players/en/player/volodymyr-zelenskyy
この文書(のDeepL翻訳)やその他の報道によると、役者時代の2012年ごろからオフショア経由で資産を管理しており、海外に3件の不動産や金融資産があり、金融資産はこっそりとセルヒー・シェフィール大統領首席補佐官に譲渡されたそうです。
ただ、アルジャジーラの報道によると、ゼレンスキーは「不正はない」と回答しています。
ウクライナのリーダーはオフショア口座を正当化(英語)
https://www.aljazeera.com/news/2021/10/4/pandora-papers-ukraine-leader-seeks-to-justify-offshore-accounts
このへんはパンドラ文書やパラダイス文書やパナマ文書などで常に資産家とのつながりで名前が挙がるプーチンの回答と同じです。
で、このシェフィール首席補佐官、ゼレンスキーが主役を演じた「国民の公僕」のプロデューサーでした。映画や芸能業界ではよくあることなのかもしれません。ちなみにシェフィール首席補佐官、ちょっと検索したら去年の9月に車に10発以上の銃撃を受けて暗殺未遂にあっています。
ウクライナ大統領の首席補佐官、暗殺未遂 車に10発以上の銃弾(2021年9月22日)
https://www.afpbb.com/articles/-/3367466
背景は分かりませんが、オリガルヒ規制の法案可決後に襲撃されたそうなので、ウクライナ土着の新興オリガルヒなのか親ロシアのオリガルヒなのか分かりませんが、オリガルヒとそこにつながる国際資本に恨まれていたことは間違いないと思います。上記アルジャジーラの報道によると、パラダイス文書の調査では報じられた336件のケースのうち、ウクライナのケースは38件、ロシアの19件をはじめ、他の諸国の群を抜いて多くの案件が報告されています。オフショアへの資産移転は、ソ連邦解体後に暴力で国有資産を簒奪したウクライナやロシアのオリガルヒたちの犯罪履歴ともいえるでしょう。
ちなみにパンドラ文書を調査公表した国際調査報道ジャーナリスト連合(ICJJ)は、「ロシア・アーカイヴ」というロシアのオフショアに関する調査報道も公表しています。
ロシア・アーカイヴ(英語)
https://www.icij.org/investigations/russia-archive/
つまり、ゼレンスキーだけでなく、プーチンにつながる資産家たちのオフショア資産もあわせて論じたほうが、「祖国なき労働者階級」(だけど被抑圧民族の分離独立をふくむ自決権は断固擁護するよ)のメーリングリストとしては、より公平ではないかと思います。戦争の前に資産を海外に移したという推測は、あり得るかもしれませんが、全体の論旨としては、プーチンの挑発に乗ってしまったゼレンスキーという論旨と理解しています。
その意味では、挑発したプーチン(をさらに挑発したアメリカ資産階級)の仕掛けた戦争であり、ゼレンスキーでもなく、もちろんプーチンでもない、(レイバーネット&日本国憲法下なので)自立した労働者階級としての反戦運動を、被抑圧民族の自決権と国際連帯、ジェンダーの視点を大切にしながら、一回りも二回りも大きくすることに尽力しないと、と感じています。はい、頑張ります。
それと余計ですが、ステファン・バンデラですが、彼がウクライナナショナリストのシンボルとなっている理由の一つは、ナチに協力したにも関わらず、結局はナチのゆうことを聞かずに(ナチの強制収用所に送られ、戦後ドイツに移住:追加)、スターリンのソ連とヒトラーのナチスの両方への抵抗のシンボルとなったからです。そして30年代後半のスターリンによるウクライナ共産党大弾圧のあと始末としてウクライナ共産党第一書記になったフルシチョフが、後年スターリン批判とウクライナ融和政策をすすめ、ソ連共産党のトップに就任して「平和共存」に舵を切って初めてアメリカを訪問した1959年9月の直後、バンデラはKGBの協力者に毒殺されました(なおこの協力者も後に亡命)。そりゃ人気出るわけです。共産主義者がバンデラのエピソードから得なければならない教訓の一つは、日本をふくむ大民族主義を深く深く反省することだと思っています。
更に余談ですが、フルシチョフの平和共存を「修正主義だ!」と強烈に批判した中国共産党は、その後さらに批判を強め「ソ連社会帝国主義だ!」という批判にまで進み、国際共産主義運動に大混乱をもたらします。被抑圧民族と日本との関係でいえば、尖閣や北方四島の事実上の承認などに関わる問題ですかね。日中国交回復後の74年、鄧小平副首相(当時)は国連での演説で「中国が社会帝国主義になったら、世界人民とともにその政権を打倒せよ!」と叫んだほどでしたが…。すいません、余談でした!
●パンドラ文書(第二信)
ありがとうございます。紹介した文章はプーチン本人というよりも、その取り巻きの隠し資産ですかね。プーチンの支援というよりも、いつ政権に狙われても海外逃亡できるような保険なのかもしれません(恐)
書き忘れましたが、日本の反戦運動の批判の矛先はまず何よりも、これ以上の戦争を止めるための平和的で具体的な外交努力をほとんどやっていない岸田政権に向けられるべきだ、ということです。
国際調査報道ジャーナリスト連合(ICJJ)は「パナマ文書」(2016年)、「パラダイス文書」(2017年)、「パンドラ文書」(2021年)の調査公開をしてきました。
パナマ文書(2016年)
https://www.icij.org/investigations/panama-papers/
パラダイス文書(2017年)
https://www.icij.org/investigations/paradise-papers/
パンドラ文書(2021年)
https://www.icij.org/investigations/pandora-papers/
余談ついでに。ソ連邦崩壊後のオリガルヒの資産簒奪やNATOの東方拡大の問題については、ウクライナに対する侵攻がはじまった直後にデーヴィッド・ハーヴェイが鋭い問題提起をしていましたが、経済面での元ネタとなっているのはロシア左翼知識人、ボリス・カガルリツキーの論考(訳書『迷走する復古ロシア』、現代企画室)です。
カガルリツキーの本の「第3章 危機」の後半「経済モデルとしての破局」の項(137~150頁)が丁度、オリガルヒ(新興ブルジョア)らによる国有資産強奪に言及している箇所です。まあそれはハーヴェイを読めば済むことなのですが、じつはハーヴェイが言及しておらず、さらに今回のロシア・ウクライナの危機で重要だと思われるのが、この本の同じ第3章の前半の項目「新しい国家」(126~137頁)です。旧ソ連邦の各共和国、あるいは共和国内の共和国におけるまったくの滅茶苦茶な遠心分離の実態が描かれており、大変示唆に富む内容でした。
この本はプーチンがエリツィンから権力を引き継ぐまえの1996年に日本で翻訳出版されていますが、カガルリツキーは、ここでこんな予言をしています。
「国家統一を回復する力をもつ者は国民の多数から永続的支持を得ることができる。民主的、連邦制的アプローチにもとづいてことを運ぶのがもっとも望ましいが、もしこのアプローチが機能しないならば、ほかの政治勢力が別の手段でこの課題を解決することになる。」
このカガルリツキーの予言は不吉な方向(他の政治勢力による別の手段)で実現してしまい、今に至っているわけですが、余談の最後に、「ファシスト・帝国主義の手先」「人民の敵」と罵られてスターリンの放った暗殺者に殺害されたユダヤ系ウクライナ出身のマルクス主義者が、暗殺される一年前に書き記した文章を紹介します。
「革命派は女性に対してどう言うのか?『子どもが欲しいか否かを決めるのはあなたである。私は、クレムリンの警察に対して、あなたの堕胎の権利を擁護しよう』。ウクライナ人民に対して革命派はこう言うだろう。『私にとって大事なのは諸君の民族の運命に対する諸君の態度であって、クレムリンの警察の「社会主義的」詭弁ではない。わたしは全力をあげて諸君の独立のための闘争を支援しよう!』と」 ─── トロツキー、1939年7月30日
ややパターナリズムの説教臭さはあるかもしれませんが、知っておいてもいいかなと思い、余談で紹介させてもらいました。
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