
△2013年2月、黒田東彦ADB総裁とティエン・セイン・ミャンマー大統領(ともに当時)
ミャンマー国軍によるクーデターと、それに抗議するミャンマーの人々のニュースが世界を駆け巡ってます。日本にもたくさんのミャンマー人が暮らしており、日本でも抗議行動が連日続けられているようです。民主主義と人権に国境はないわけで、その推移に関心を持っていきたいとおもいます。
地域でやってた自主夜間中学にも、カチン民族の亡命グループが学びに来ていた時期もありました。軍政はもちろんのこと、スーチーさんの国民民主連盟NLDとも緊張した協力関係にあることを教えてもらったりしました。きっと今も国連大学前やヤンゴン、そしてミッチーナ(カチン州都)の街頭で抗議の声を上げているに違いない。
ガラにもない前振りはさておき、今朝2月13日の日経新聞の「日銀ウォッチ」のタイトルは「国際金融揺らすクーデター」。日銀や日本資本が民主化以降の10年のあいだどのようにミャンマー金融システムの構築に関わってきたのかという短いコラム。クーデターで同国の中央銀行総裁が解任され、かつての軍事政権下で総裁を務めた人物が再任命された、という書き出しで始まるのだが、日本金融資本主義の意図がよくわかる記事だったので紹介しときます。全文はこちらで公開されています。
(以下抜粋)
10年前の民主化を機に、高成長を見込んで日本の企業や金融機関が相次ぎ進出したミャンマー。金融制度や市場インフラの整備でも日本の官民が貢献してきた。ミャンマー中銀の基幹システムは国際協力機構(JICA)の協力事業として、NTTデータや大和総研が開発・構築に携わってきた。
実は日銀との関係も深い。これまでにミャンマー中銀の職員を受け入れたり、日銀OBがミャンマー中銀のアドバイザーを務めたりした。
(以上抜粋)
これを以て「民主化に協力してきた」と考えるのはやや早合点でしょう。それ以前の軍政との「信頼関係」なくして、「民主化」直後から国家の中枢中の中枢である中銀システムに食い込むことなどはできない。これは、日本はそれほど軍政から信頼されてきたことの裏返しでしかないと思う。
コラムはこう続けます。
(以下抜粋)
金融協力の枠組みでは「チェンマイ・イニシアチブ」の存在が大きい。外貨準備を多国間で機動的に融通しあい、対外債務の支払いに支障が生じないよう流動性を供給する国際金融の安全網だ。当初は日中韓とインドネシアやフィリピンなど東南アジア諸国連合(ASEAN)5か国で始まった枠組みだが、あとからミャンマーを含む残りのASEAN各国も加わった。
(中略)
ミャンマーがチェンマイ・イニシアチブに正式参加したのは2010年。黒田東彦総裁が当時、アジア開発銀行(ADB)総裁を務めていた時だ。
(以上抜粋)
グローバルサウスやオルタ・グローバリゼーション運動経由の開発金融や債務問題をかじていると、1998年のアジア通貨危機を契機に日本の財務省のイニシアチブで構築されたこの「チェンマイ・イニシアチブ」が、ミャンマーなどの投資受け入れ国のためではなく、投資送り出し国である日本の金融資本主義が金融危機のさなかでも滞りなく貸し付けたカネを回収できる仕組みであることはすぐに分かると思います。
90年代バブルがはじけ国内での投資先を失った日本の金融資本は、80年代のプラザ合意を大きな転機としてグローバル化した産業資本のサプライチェーンを支える一方で、金融資本主義独自のグローバル化によって暴走したことで、アジア通貨危機を引き起こしました。
attacなどグローバルサウスと連帯するグローバルノースの市民運動は、為替や金融によって人々の生活を破壊する国際金融市場の巨大な歯車に、ほんのわずかの砂粒(二段階トービン税)を撒くことで、システム全体に影響を与えることができるだけでなく、その税収をグローバルサウスとの連帯を通じた分配を提唱していました。トービン税の税収の大半はグローバルサウスに分配されます。税収は国際通貨取引税(トービン税)の国際条約に加盟する国々から構成される条約機構が管理します。条約機構は民主的に選ばれた政権の担当者、議会の代表者、市民社会の代表者らによる機構議会による民主的な議論によって運営される。トービン税の構想とはこういうものでした。
このイマジン的構想は実現からはいまだ程遠い状況ですが、チェンマイ・イニシアチブの思想とは全く違ったアプローチだということが分かると思います。
日銀のコラムは最後に、日本金融資本主義の不安を伝えている。
「チェンマイ・イニシアチブはミャンマーにとって国際社会とのつながりを保つ意義がある一方、軍事政権が続けば制度として使われにくくなるのでは」
ミャンマーの対外債務=日本資本への借金の支払いが滞ることへの心配がよく伝わるコラムの紹介でした。
▽ミャンマー中央銀行を訪問する白川方明・前日銀総裁

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