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【訂正】モーリシャスの環境大災害──典型的なエコロジカルデット(環境債務)事件の犯人は日本資本主義システム

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ご存じだと思いますが、7月26日に商船三井の石油タンカーがモーリシャス沖で座礁、8月6日から重油が海洋に流出して、1000トンの重油が海洋に流出し、同国のサンゴやマングローブなど自然環境が破壊した事件。モーリシャス住民や仏政府からの緊急支援で対応しているようですが、すでに多くの自然が破壊され生物が死んでいます。回復には20~30年かかると言われています。

・座礁事故、重油回収続く 1000トン流出、賠償も焦点―モーリシャス沖
https://www.jiji.com/jc/article?k=2020081101001&g=soc
・モーリシャス沖の貨物船座礁事故 商船三井の船との報道も実は船主は別 複雑な海運業界
https://news.yahoo.co.jp/articles/9325eb8b5c3c4be429aaac0b267ebb31706d33a4

今回の事故は日本資本主義に欠かすことのできない化石燃料をグローバルに確保する必要のあったなかで起こったが引き起こした環境大災害のひとつ。そういう意味ではクライメートジャスティス運動やエコ社会主義が声を大にして、日本政府と日本に住む人々が責任をもって解決することを訴えていく必要があると思います。

【訂正:すいません、てっきり石油タンカーの座礁だと勘違いしてました。こちらの日経記事によると「座礁した『WAKASHIO』は鉄鉱石などを運ぶばら積み船で、全長は約300メートル。積載重量は20万3130トンと、ばら積み船としては大型の船。商船三井が長鋪汽船から用船(チャーター)し、中国江蘇省で積み荷を降ろした後、空の状態でブラジルに向かう途中で座礁した。船員は長鋪汽船が手配していた。事故の原因は調査中で商船三井などが今後、現地に社員を派遣して事態の解決を図るという。座礁当時は約4000トンの燃料を積んでおり、大小5つあるタンクの内、少なくとも1つから燃料が流出している。そのタンクから仮に全て流出すれば1180トンの重油が海洋に流れるという。」とのことです。上記の赤字部分を削除して青字部分を付け加えました。典型的な環境債務であり日本資本主義の責任だ、という趣旨は変わりません。改めてモーリシャスの皆さんにお詫びします】

それにしても日本政府の対応がひどい。船主は長鋪(ながしき)汽船、運行会社は商船三井、船籍はパナマなので責任問題をみきわめているのかもしれませんが、そんなことは理由にはならない。

船主の長鋪汽船は「法に基づき誠意持って対応」というが、日本は法的責任以上の責任を負う必要があるだろう。

・モーリシャス座礁の長鋪汽船、賠償は「法に基づき誠意持って対応」
https://jp.reuters.com/article/mauritius-nagashiki-idJPKCN2591FX
・商船三井プレス発表 その1 その2 その3 
・長鋪汽船プレス発表 その1 その2 その3 その4

じつは日本政府は7月25日の座礁事故後の8月5日に3億円の無償援助を締結しています。

・モーリシャス共和国に対する感染症対策及び保健・医療体制整備のための支援(無償資金協力)
https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/press4_008660.html

しかしこれは、コロナの保険医療を対象にしたもので、石油事故のことはまったく書かれていません。急遽案件を前倒しで締結したものだとおもいますので、前から決まっていたことを前倒しにしただけ。こんなことで石油も批判も封じることはできません。

その後、8月10日に無償援助で専門家6人を派遣。少なっ!

・モーリシャス沿岸における油流出事故に対する国際緊急援助隊の派遣
https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/press6_000651.html

「我が国の支援が、同国の環境の回復や、海洋汚染の防止に資することを期待します。」なんて人ごとみたいですが、そもそも「我が国」の資本主義システム維持(原発とまって火力に頼るなど)のための石油ですが引き起こした一大環境事件。自分たちのせいでモーリシャスの自然環境と動物と人々の生活を破壊してゴメンね、くらい言うべきでしょう。

それ以降、外務省ウェブサイトもこれ以降まったく情報をアップデートしていません。関係者はあわただしくしているのかもしれませんが、それにしてもひどい話です。

インド洋のマダガスカルの東に位置し、1968年にイギリスから独立し、人口126万人、常備軍もない国です。面積はほぼ東京と同じですが、GDPは東京の1兆5000億ドルの約100分の1の142億ドルという小さな島国です。(日本のGDPは約5兆ドルで同国の350倍)

・モーリシャス共和国(外務省)
https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/mauritius/data.html

モーリシャスはODA開発援助委員会のカテゴリーではGNIが1万ドル程度の高中所得国に該当するので、あまりODAの対象となっていなかったようです。日本大使館も2017年1月に開設されたばかりで、これから金儲けするぞという矢先の事故だったようです。

・モーリシャス、日本企業の投資に高い期待-外国直接投資誘致が加速するモーリシャスでビジネスミッション開催
https://www.jetro.go.jp/biznews/2018/03/a431b3d163ae13fd.html

去年8月にはモーリシャスを含むインド洋での水産資源管理向上(まあ日本への輸出が目的でしょう)のための無償資金協力を締結しています。

・インド洋アフリカ諸国に対する水産資源管理向上のための支援(無償資金協力に関する書簡の交換)
https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/press4_007729.html

以下の外務省の資料にもあるように、中国包囲網の一環である「『自由で開かれたインド太平洋戦略』の要となり得る位置にあり、外交や水産資源の分野で戦略的に重要な国である」ということから、開発支援が進められようとしていました。

しかし前述のようにすでに「近年モーリシャスは高中所得国に位置づけられるまでに経済成長を遂げたため、我が国は島嶼国であるモーリシャスが抱える環境的脆弱性に特化した支援を中心として同国の国家開発に寄与している。」と外務省は言っていましたが、その環境的脆弱性を一挙に加速させる甚大な環境災害事故をもたらしたことになります。

・2017年11月時点の外務省の対モーリシャス開発援助方針ほかデータ(PDF)
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/files/000332795.pdf
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/files/000367699.pdf#page=482

グローバルサウスや世界的な債務帳消し運動が主張してきた、債務はほんとうは北の先進国の側にあるというエコロジカル・デットの実態をまざまざと見せつけた事件。エネルギー産業を対象にした新税を創設したり、辺野古へ投じている人とカネを全部回したり、自衛隊を解散して環境災害救助隊をつくって対応してもいいくらいだ。

システムチェンジを訴える日本のクライメートジャスティス&エコロジー社会主義者の出番です。

※なお、気候変動における「システムチェンジ」の「システム」とは、「制度」ではなく「体制」を意味するシステムのこと。SDGsやESG投資が体制変革につながる制度の変更かどうか、真剣に考えてください。

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