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「アフリカは儲かりまっせ」--ウォルフォウィッツ世銀総裁、投資プレゼンテーション??

imf-wbDEBT.jpeg9月19~20日に、シンガポールでIMF/世銀総会が開かれる。総会に先だつ15~17日には途上国債務の帳消しを求める南諸国社会運動団体の連合体であるジュビリーサウスや、Blogでも紹介した『世界の貧困をなくすための50の質問』の著者が所属するNGOであるCADTMなどが、シンガポールの対岸のインドネシア・バタン島で対抗フォーラムなどを計画している。

国際民衆フォーラム 対 IMF/世界銀行 (英文呼びかけ
同書の訳者である大倉さんらジュビリー九州やattac首都圏からも参加を予定している。シンガポールは政治的自由が厳しく制限されているところでもあり、厳しい刑罰でも知られる。世銀総会に対する対抗アクションに対しても「むち打ち刑」を含む厳しい構えで対応するそうだ。がんばって・・・。

IMF総会中、過激な抗議はむち打ち刑…シンガポール

そういえば世銀/IMFは東京にも事務所あったよな、なにか情報はあるかな、と思いサイトをのぞいてた。

世界銀行東京事務所

日本語で書かれた総会関連の資料はないが、それなりに資料は充実しているように見える。

この5月には東京で世銀の国際会議が開かれ、総裁のポール・ウォルフォウィッツも来日している。ウォルフォウィッツはロナルド・レーガン政権下で国務次官補(東アジア・太平洋担当)、インドネシア大使などを歴任。 ブッシュジュニア政権下では国防次官(政策担当)としてイラク戦争に突き進んだ人物。2005年3月にブッシュの推薦で世銀総裁に。『50の質問』にも書かれてあったが世銀総裁はアングロサクソンの欧米人が歴任している。アメリカの推薦で就任する。小泉首相も「支持する」と即答している。

さてこのウォルフォウィッツ、5月来日の際に、国際会議だけでなく外国特派員協会でも講演しており、その講演仮訳が世銀東京事務所のサイトでUPされている。

「包括的な世界経済におけるアフリカの役割」

講演の前半は、いったいどこの投資クラブで話しているんだろう、と錯覚に陥りそうな内容だが、世銀の資金が世界の金融市場からかき集められており、世銀自身も「あらゆるデリバディブを活用している」と豪語していることから不思議ではないのかもしれない。

ウォルフォウィッツは「過去25 年間に、1 日1 ドル未満で生活する人の数は世界中で5 億人減りました。このままのペースで減少が続けば、2015 年までにさらに4 億人が貧困から脱することになるでしょう」と世界の貧困問題を楽観的に語ったあとで、貧困削減にとって何が重要かを率直に語る。

「こうした数字を前にすると、貧困削減が単なる希望ではないことがわかります。途上国内外のパートナーシップやビジョン、投資があれば貧困削減の実現は可能なのです。東京をはじめとする都市で活動する投資家、政策担当者、アナリストは重要な役割を担っています。そして、ワガドゥグー(ブルキナファソの首都:引用者)やナイロビなどの投資家、政策立案者、アナリストの役割もまた、同じように重要です。」

そう、貧困削減には、公平な富の分配や多国籍企業への規制、あるいは世界を駆け巡る巨額の投資マネーへの規制などではなく、「東京をはじめとする都市で活動する投資家、政策担当者、アナリスト」などが重要なのだという。もちろん世銀総裁として自分自身も責任を負っている国際的サラ金--途上国債務の問題—には一言も触れずに。

だが、アフリカでは貧困問題が深刻化しているということも隠すことはできない。

「実は、アフリカに限っては貧困者数が逆に増加しているのです。1981 年から2002 年までの間に、貧困に陥った人の数は、1 億6400 万人から3 億300 万人へとほぼ倍増しました。2015 年には、3 億3600 万人に増えると予想されています。」

いうまでもなく世銀、IMF、そして北の国々の金融資本(ウォルフォウィッツのいうところの重要な役割を担っている「投資家」だ)たちがもたらした債務の罠がアフリカ民衆を貧困の底なし沼に投げ込んできた。それを知ってか、深刻化するアフリカの貧困問題を語った直後、すぐに次のようなことを言って「重要な役割」を担う北の債権者たちを安心させる。

「このように困難に直面しているアフリカではありますが、絶望や悲観だけに埋もれているわけではありません。最近ギャラップ社が世界中の5 万人を対象に実施した調査によると、アフリカの人々が世界で最も楽観的であることがわかりました。2006 年は2005年よりよい年になると思うかという質問に、アフリカの人々は57%が「そう思う」と答えました。ヨーロッパの人々はもっと裕福ではありますが、これほど希望に満ちているわけではありません。このことから、アフリカの人々自身は、アフリカに足りないものがあることを認めながらも、同時に機会を見出していることがうかがえます。そして、実際、そのとおりなのです。」

この罪深き楽天家はとぎれることなくアフリカの発展を語る。

「最近ル・モンド紙に掲載されたアフリカのジャーナリスト、ジャン・ダシアム・フィアウウーモ(Jean Dassiam Fiauwoumo)氏による記事を読むと、アフリカには貧困や飢餓や病気以外の側面もあることがわかります。証券取引所や高層ビル、インターネットカフェもあれば、中産階級も増えつつあるのです。アフリカには、世界でも指折りのパフォーマンスを誇る証券取引所(ガーナ証券取引所)があります。この取引所は外国人投資家に最高レベルの利回りをもたらしています。」

みなさん安心してください、貧困にあえぐアフリカでも投資でもうけるチャンスもありますよ!というわけだ。

「不当な評判を広めることでアフリカの問題をこれ以上悪化させるのはやめようではないか」と、Fiauwoumo 氏の発言を引用して、アフリカの「成長」を語り続ける。まるで「不当な評判」がアフリカに貧困をもたらしているかのように。人々の社会を、うわさや憶測や思惑で景気が左右される金融・株式市場とおなじように考えている証拠だ。

散々アフリカの「成長」を語ったあとで、やっと債務問題が語られる。

「(2005年7月)グレンイーグルズでおこなわれたG8 サミットでは、世界最大の先進諸国が2010 年までにアフリカへの援助を年間250 億ドル増やすことで合意しました。これは2005 年の水準の倍以上に当たります。また、債務削減の拡大・促進についても合意が行われました。この合意により実施されることになった多国間債務削減イニシアティブは、世界の最貧困国17 カ国を対象に約370 億ドル相当の債務を削減するものであり、17 の対象国のうち13 カ国がアフリカの国々です。」

『50の質問』を読んだ方なら、G8サミットなどで語られる債務帳消しがまやかしであり、多国間債務削減イニシアティブと呼ばれるものが、債務の鎖を永続的に途上国の課すものであることを知っているだろう。ここでもウォルフォウィッツは「債権者の皆さん安心してください。最貧国が債務返済不履行なんて言わないように『多国間債務削減イニシアティブ』で逃がさないようにしましたから」と債権者向けのプレゼンテーションを上手にこなしている。

講演はまだまだつづく。とくに「アフリカ行動計画」で課題となっている「貿易、交通手段、農業、ガバナンス」について長々と新自由主義グローバリゼーションの立場で語っている。ひとつひとつ批判すれば長くなるだろうし、僕にはそんな知識もないのでこのへんでやめにしておくが、新自由主義グローバリゼーションにもとづくこの計画に対する批判は、シンガポールで行われる世銀/IMF総会に対抗して開かれる対抗フォーラムや、来年1月ケニヤ・ナイロビで行われる世界社会フォーラムでも聞かれるだろう。

戦争と新自由主義グローバリゼーションを人的に体現することになったウォルフォウィッツ世銀総裁のこの講演は、一人でも多くの戦争も貧困もないもうひとつの世界をもとめる仲間たちに批判的に読んでもらいたい。

途上国債務の帳消しを。

参考リンク 財務省国際局(世銀、IMFなどの資料多し)
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