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『香港人の進む道――民主化を実現し、主権を取り戻そう』(1983年)

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今年初めに行われたデモシスト(香港衆志)の大会で、組織の目標を「香港の民主自決」から「香港の民主と進歩」に変更したというニュースがありました。今年下半期の立法会選挙に向けた準備でしょうが、すこし残念ですね。

この「民主自決」の考えは、2014年雨傘運動を経た2016年の立法会選挙で当選したラディカルで若い議員らに共有されたもので、ナショナルなアイデンティティを中核とする「本土派」とは区別された価値観だったように思います。

実はこの「民主自決」の考え、もっと前からありました。

中国とイギリスが香港の主権をどうするかの交渉をはじめて間もない1983年4月、表紙に「香港人の進む道――民主化を実現し、主権を取り戻そう 新苗叢書(1) 1.5ドル」と書かれた小さなパンフレットが発行されました。出版元は新苗出版社。昨年12月に来日した區龍宇さんらが設立した出版社で、86年からは隔月雑誌『新苗』を発行してプロレタリア民主派の主張を紹介してきました。この雑誌は94年からは『先駆』に改称し2005年には停刊になっています。

パンフの本文の執筆期日は1983年2月20日、字数は1万字以上あるのですが、ざっと見出しだけを紹介すると

・主権と民権
・自決の道
・いつ返還されるべきか
・制度改革
・資本主義か社会主義か
・安定繁栄安定と革命的激動

となっており、民主自決が強く打ち出されています。

香港で最初、とは言えないかもしれませんが、かなり早い段階から主張していたと思います。それ以前には「自治」といった主張を掲げるグループもあったようですが、そこには英植民地政府から主権を香港人に取り戻す、という反植民地主義の主張はなく、どちらかといえば英植民地政府の統治の下で、という主張だったようです。

1983年の「新苗」パンフに特徴的なのは、まず主権を英植民地政府から香港人に返還せよ、そして香港人の普通選挙で選ばれた憲法制定議会で基本法や中国への帰属の条件を決める、というものでした。その主張はいまも変わっていません。

ご存知の通り、主権返還交渉は政府間、基本法の起草は中国政府の任命による香港人委員(著名な民主派人士らも含まれる)によって行われただけで、いわゆる憲法制定議会のような民選代表によって行われたわけではありません。その意味でプロレタリア民主派は、そのような非民主的なプロセスによって制定された現行の基本法は破棄して、民選全権の憲法制定議会によって基本法を制定しなおすべきだと主張しています。(現在、基本法の再制定を主張するのは、立場的には正反対の独立派や城邦派だけかな、と思います。民主派も本土派も中国政府も米英日政府もみ~んな「基本法を守れ」で一致してます→違ったらゴメン)

『香港雨傘運動と市民的不服従』(周保松、倉田徹、石井知章、編著、社会評論社)や『香港危機の深層』(倉田徹/倉田明子・編著、東京外大出版会)など、現在の運動や香港の民主化運動に関する書籍がいくつか出ています。いずれもたいへん勉強になり、おススメですが、研究書なので当然と言えば当然ですが、運動内部における議論についてはほとんどページが割かれていません。

しかし、ますます強まる中国政府の圧力を考える上で、香港基本法の問題は避けて通れませんし、基本法制定にいたる民主派の紆余曲折が理解できなければ、本土派による民主派批判(行き過ぎの批判もあるが、根拠もある)も本当の意味で理解できないと思っています。

そういう意味で、香港返還交渉が始まり、社会的にも世論が沸騰するなかで、当初から「民主自決」を主張してきたという歴史は、ほとんど影響力がなかったとはいえ、どこかで紹介しておいてもいいのではないかと思います。マニアな話ですが(汗)

ということで、このパンフレット、1万字以上あるのですぐに翻訳はできませんが、裏表紙の抜粋をざっと訳してみました。

『香港人の進む道――民主化を実現し、主権を取り戻そう』
新苗叢書(1) 1983年4月発行


(裏表紙の抜粋文より)

「香港がいつどのような方法で祖国に復帰するかという問題は、香港人自らに決めさせなければならない。(應該讓香港人自決。)中国は可能な限り香港の民心をかちとり、香港人が自ら望んで祖国に復帰するようにしなければならない。現在、中国が香港主権を回収することが議論されているが、香港人が英国植民地政府から主権を回収ことを第一の目標にしなければならない。」

「中英両国の支配者は香港民衆に自決権があることを認めようとしない。かれらは相互に奪い合うとともに、相互に結託して、香港民衆に背を向けて香港の前途を決める交渉を行っている。しかし香港人民の自決権は民主的原則から言っても根拠がある。」

「マルクスとレーニンの考えにのっとれば、プロレタリアートの社会主義とは、ブルジョア民主主義の一切の進歩的獲得物を継承し、それをさらに徹底して発展させたものであり、一層真実である。民主的自決権はまさに進歩の原則にのっとったものである。」

「我々が言うところの香港人民の自決という主張とは、普通選挙で選ばれた全権の香港人民代表大会を招集して、香港人の意思を公式かつ集中的に表現し、香港の政治的地位およびその他の一切の重要な事柄を決めるということである。」

「われわれは現状維持に賛成しない。香港人はそもそも植民地支配の現状を支持してはならない。香港人は今から継続して様々な方法で主権を取り戻すとともに、各方面での改革をかちとらなければならない。」

「香港の主権をイギリスから中国人民に(まず香港人に)移したあとは、香港の政治、法律、経済、教育など各方面での制度についても当然改革しなければならない。これまでの全ての制度の実施と改革は次の基本原則によって行われてきた。つまりイギリスと大ブルジョアジーに最大の利益を保証するという原則である。だが将来の人民政権はその基本原則を次のように転換させるだろう。つまり大多数の人民の利益を保障、向上させるという原則である。」

(以上)
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