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香港:中国圏における巨大な民主化闘争の爆発を目の前にしている

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運動系のメーリスで、香港の運動について疑問を呈するニュースソースが配信された。以下、それを読んでの感想です。ひさびさに更新する内容がこれだは、ちょっと自分の怠け度合いにがっくりしてます。反省してがんばります。(2019年10月7日)

◎実弾銃撃事件について

10.1実弾銃撃事件ですが、もう少し正確にいうと、複数のデモ隊に襲撃されていた警官を助けようとした小隊長が警告射撃なしに至近距離で照準を襲撃者の頭部に合わせていたので、それを阻止しようとして細いパイプ状の武器を持った18歳の青年が、ピストルを持った小隊長の右腕をパイプで殴ろうとしたが失敗して、逆に胸を撃たれた、という感じです。

この小隊長、左手には警告用でより殺傷能力の低い散弾ライフルを持っていたのですが、それを使うことなく(やや遠くから駆け寄ってきたので警告射撃の時間は充分にあった)、いきなり腰のホルダーからピストルを外して駆け寄ってきています。

この時の機動隊との衝突については、突発的な衝突だったのかどうか分かりませんが、深追いしたデモ隊の側の戦術ミスだと思いますが、だからと言って実弾発砲が完全に正当化されるわけではありません。

ちなみに銃撃された健くんの通う中学校(香港は6年制中学)では、銃撃の翌日に同級生や先輩たちや市民が校門前に集まって警察への抗議と健くんへの連帯の集会を行っています。というのも、前行政長官の梁振英が中国全国協商会議副委員長(参院副議長にあたる)の肩書で、健くんの除籍を求める書簡を学校に送ったからです。ひどい話ですが、それも踏まえて多くの支援が集まりました。つまり、警官への実力行動に対しても、かなりの市民的な支持があるということです。それだけ現場では警官の暴力がひどいわけです。
不滿警方開實彈槍 市民校外靜坐聲援中槍學生(中国語ですが写真も多数あります)
(警察の実弾射撃に抗議する市民らが校門前で支援の座り込み)

◎アメリカやイギリスの戦略拠点?

香港はアメリヤカイギリスの戦略拠点やマネロンネットワークの一つ、とも書かれていますが、それ以上に中国の戦略拠点であり、マネロンの拠点です。中国は67年に真っ赤っかのカラー革命を起こそうとして失敗、その後、80年代に入り、まったく違ったカラーの革命を香港を戦略拠点にして進めてきました。

民主派とよばれる人たち(NED資金で動いている、とされる人たち)の多くが、じつはこのまったく違ったカラー革命の協力者でもありました。はい、みんな中英共同声明やその後の一国二制度にも賛成してきた人です。しかし中英共同声明や一国二制度を定めた香港基本法は、あっとうてき大多数の香港住民になんら諮ることなく、かってに中英政府が取り決めたものです。植民地でしたから、民主的な選挙制度もなく、有権者の代表もいませんでしたから。

その中英政府の共謀は、89年天安門事件を契機にして盛り上がった香港市民の民主化へのうねりを受けて、軌道修正が迫られます。英国政府が中英共同声明から逸脱する民主化を返還前の香港で実施(といっても議会の普通選挙の実施ですが)。中国政府は当然怒ります。約束が違うと。香港の民主派も中国政府の統一戦線対象から外されてしまいます。

そして返還前の95年の選挙(この時だけかなり民主的な制度になった)の結果、いわゆる民主派が大勝しますが、97年7月1日の返還の直前に、中国政府のいうことだけを聞く議員だけを集めた臨時立法評議会を設立し、現有の議会を解散させてしまいます。

しかしいったん民主化や自由を享受した香港の人々は、そのような中国政府の強権的手法に反発します。それが返還以降、ずっと香港市民の底流にある感情です。もちろん中国政府は香港世論の取り込みを模索します。一国二制度という植民地体制を維持したままの社会体制を利用して、大量の投資マネーを香港にながしこむ、というやり方です。香港基本法にかかれてある「将来、普通選挙を実現する」という約束は返還後22年経った今も、まったく実現の兆しは見えません。

香港は中国のなかで唯一、組織的、大衆的に普通選挙運動ができている地域です。それは何か非難されることではありません。そして、雨傘運動から今回の反送中運動の盛り上がりは、その運動の巨大な爆発であり、それは、もし「一つの中国」という枠組みを受け入れるのであれば、その中国の中で起こった台湾における民主化の爆発(90年代)に続く、第二の巨大な民主化運動だといえます。運動の帰趨は不明ですが、それを支持するのは進歩派としては当然のことだと思います。この点については、香港の友人の區龍宇さんが最近、マレーシア社会党のインタビュー(中国語英語)に答えたものがあり、現在翻訳中なので、また紹介したいと思います。

◎そのネタ古くありません?――― CIAとNEDの資金

CIAやNEDについては、雨傘運動のときと全く代わり映えのしない論調が、いまでも流れてるんですね。もうすこし進歩してほしいとおもいます。その時に紹介した論考を二本、紹介しておきます。サイトにも掲載してもらったものです(感謝)。

香港:重惨党を笑う(2014年10月16日)
香港 : 「動物農場」?豚と人の見わけがつかない(2014年10月18日)

とは少し面白かったのは、1996年(返還前年)からこれまでの23年のあいだに200万ドルが香港民主派に流れた?という情報。

ちょっとちょっと、年間にしたらわずか10万ドル弱ですよ。スパイ一人分の人件費にも満たない。桁が違うんじゃないですか?まあ確かに、そんだけしか資金が流れてないなら、デモ隊の一部の武装や防具の貧相さ(細いパイプ、金づち、スパナ、盾は水泳用のビーチボードや浮輪など)も納得できなくもないですが…。

上記にかいたとおり、中国政府は香港を改革開放政策の戦略拠点にするということで、返還後も多くの「外国勢力」が残存することを認めています。たとえば最高裁判所には、複数の外国籍裁判官がいますし、香港警察にも数百名の外国籍の警官がいます。行政、ビジネス界、すべてにおいて「外国勢力」がいるわけで、そのようなシステムは中国政府の公認のもとで維持されてきました。しかし何といっても香港の人にとっての最大の「外部勢力」は一日150人という枠で中国国内から移住してくる人たちでしょう。そして中国の政府、企業から香港に流れ込む資金は、アメリカやイギリスの何十倍もの額でしょう。

それにしても、雨傘運動ではこのCIAやNEDネタが結構中国語でも出回っていましたが(ジョシュアウォンが海外で訓練を受けてるとまで!)、あまりにアホらしいからか、効果がなかったから、それとも飽きたからか、今回の運動ではほとんど出ませんね。というかそんな「裏話し」をするまでもなく、ジョシュアが米国国会で証言しちゃってるから、そんな「陰謀論」必要ないんでしょうね。いまだにこのネタを出してくる人、ちょっと情報古すぎる。アメリカ議会の「香港人権民主主義法案」のほうを批判してほしいです。いうまでもなくこの運動に参加している香港の左翼は批判してます。

外國勢力的配對哲學:區龍宇(明報2019年9月12日)

あとCIA/NEDから資金が流れたとか関係があるとかで名前のあがっているアクティビストは今回の運動の中心人物ではありませんしね。

◎市民との乱闘?

それと、言われている「市民との乱闘」や「中国メディアの記者が縛り上げられる」ですが、中国メディアの記者というのは「環球時報」の記者の方で、8月13日に空港でデモ隊の顔写真を撮っていて警察ではないかと疑われて、荷物に「I LOVE警察」のTシャツを隠し持っていたことが発覚し、手を縛られて、さいごは救急車で運ばれたという事件ですね。その前日、デモ隊の救急スタッフが警察に右目を散弾銃で撃たれるという事件があり、「右目を返せ!空港アクション」がすぐに呼びかけられた時に起こった事件です。何度もいいますけど、すでに7月時点で、デモ参加者の顔写真をアップで撮る不審な行為に対しては毅然とした態度でデモ隊側は臨んでいます。そんなおりにこっそりと顔写真撮って、問い詰められたら「旅行者だ」とかいってごまかそうとしたのですが、そうはならなかった。まあこの記者は帰国後「英雄」扱いされたので、まあなんですが。

あと市民との乱闘?ですが、昨日の長沙湾でのデモでデモ隊に囲まれて血だらけで運ばれたタクシーの運転手のオヤジさんのことでしょうか?そのまえにデモ隊のど真ん中に突っ込んでアクセルをふかして何人かをはねたオヤジさんですよね。その後、車を止められてひどく殴られましたが、そうでもしないとさらに犠牲者が増えてましたよね。警察に引き渡せばいいのに?御冗談を。

昨日の旺角のデモでデモ隊に殴られて口元から血を流してた女性の方のことでしょうか?この女性は、これまでも警察がんばれ集会で発言するなどで知られている芸能人のセリーヌ・マーさんですが、執拗にデモ隊の顔写真を道路の真ん中で撮ろうとして止められたにもかかわらず、撮影していた方ですよね。デモ参加者の顔写真の撮影は早くから警察や職場や学校に通報する嫌がらせということで、かなり早い段階でデモ参加者からは警告が発せられています。

昨日の旺角のデモでデモ隊に囲まれて殴られて血だらけになってた長髪のオヤジさんのことでしょうか?棒状のものを持って「かばんには刃物もはいってるぞ」と恫喝してたこのオヤジさんを、どうすれば止められたのでしょうか?

それとも一昨日、マックでデモ隊の若者に説教していたオヤジさんが、その後に囲まれて殴られた件でしょうか? 刃渡り30センチの肉解体用刃物を振り回して、自分は免許持ってるから刃物を持ってても捕まることはないと豪語してたオヤジさんですよね。警察呼んでも来てくれないので仕方ないでしょう。

それとも9月22日に元朗で血を流して倒れ込んでいたオヤジさんのことでしょうか? 運動支持者と口論になって、持っていたビール瓶を振り回しながら運動支持者を追い回した後に、逆に囲まれてボコられた。仕方ないですよね。

それとも9月15日に北角でデモ隊に殴られて気絶した男性のことでしょうか? デモ帰りの参加者を駅で襲撃していた北角ヤクザやその取り巻きが、仕返しされて気絶したやつですよね。市民なのか?

それとも9月15日に湾仔の路肩でデモ隊に殴られて血を流して座り込んでいた女性のことでしょうか。機動隊が交通や歩道を封鎖したことで家に帰れないとデモ隊にヤジを飛ばしてデモ隊のポスターなどを引きはがしていた女性ですよね。たしかに可哀想ですけど。

それとも7月21日の元朗でデモ隊の襲撃で危篤になったオヤジさんのことでしょうか?地元ヤクザを中心に1000人規模の自警団を結成して、デモ隊のやつらをコテンパンにしてやると武器を持って気勢をあげていたオヤジさんですよね。この日はデモ帰りの参加者を白シャツ自警団が武器を持って襲撃して大事件になりました。警察も襲撃した自警団に対してはまったく手を出さず、今に至るも起訴されたのは2人だけという、ヤクザには甘々の対応です。

とにもかくにも、香港のニュースを、アップルデイリーのようなデモ隊に偏った新聞ではなく、もうすこし中立なニュースを読むだけでも、ぜんぜん違う世界観が広がるんですが、なかなか日本語では判断しづらいかなともおもいます。英語ニュースもそうですが、アメリカやイギリスだけでなく中国政府の立場を色濃く反映したソースもあふれています。この運動の歴史的意義をとらえたうえで、ソースの内容を判断するしかないと思います。

まあそこまで肩に力を入れなくても、ふるまいよしこさんの提供するニュースが、なぜ香港市民が過激な行動を含むデモを応援するのかという気持ちを反映しているかも。

香港の警官はなぜ18歳の高校生を撃ったのか「発砲事件」の真相(ふるまいよしこ:現代ビジネス)
ふるまいよしこさんのtwitter

ふるまいさん、twitterや無料ニュースも面白いですが、有料ニュースは情報は盛りだくさんで興味深いです。

(追記)
今回の運動、台湾に続く「一つの中国」における第二の巨大かつ大衆的な民主化闘争の爆発、と書きましたが、もちろん香港独立派や台湾独立派のみなさんは、そうは思ってないわけですが、客観的にはそのような意味もある、ということは無視できません。独立派の皆さんはどうも中国民主化を恐れています。民主化したら、もっと香港、台湾が飲み込まれる、と。民族主義か民主主義か国際主義か、とるスタンスで考えも変わってきます。「敵」と決めつけるのではなく、さらなる議論が必要ではないですか。
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2019/10/07 (Mon) 15:07 | 古川烈 #GWMyNl/. | URL | Edit

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