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香港:革命的情勢は訪れるか(區龍宇)

【7月21日、香港の新界地区の市街地である元朗で行われた反送中のデモに対して、地元の暴力団が組織した白シャツ自警団1000人が襲いかかった。警察はそれを止めるどころか自警団と一緒になってデモ隊を鎮圧。SNSの時代であり、その状況が瞬時に拡散され、さらなる怒りを買った。翌週7月27日、暴力に屈しない元朗デモが呼びかけられた。以下の文章はその前日に書かれたもので、香港独立媒体などの社会運動ウェブメディアに掲載された。それ以降、8月11日現在まで、香港ではデモや警察との衝突が続いており、警察は催涙弾やゴム弾でしかデモ隊を解散させることができなくなっている。8月11日には各地で行われたデモへの鎮圧で、デモ隊の救急スタッフが散弾銃を右目に受けて失明、地下鉄駅の構内では催涙弾が発射され、至近距離からのゴム弾も発射、ヘルメットとマスクをつけた黒装束の一団(警察の変装)が突如デモ隊に襲い掛かり、非武装の通行人や子どもにまで無差別に襲いかかる姿がSNSなどで拡散されている。翌12日には救護スタッフの失明に対して看護師らが抗議(写真)、国際空港ロビーでも抗議集会が開かれ、KHCTU所属の建築労組が空港でストを打つなど、抗議の声は広がっている。一層の注目と連帯が必要となっている。(Z)】

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原文はこちら https://www.inmediahk.net/node/1066041

[ ]は訳注

革命的情勢は訪れるか
2019年7月26日

區龍宇


反送中運動は、西環と中環が撤回を断固拒否してから今日までに何度かハードルを越え、徐々に革命的情勢に近づいている。それは不幸なのかそれとも望むべきことなのか。

◎ 革命的情勢とは何か

6月9日に100万人の市民による街頭デモは、反送中運動が深い大衆的基礎に根差していることを示した。多数の群衆が政治化し、行動を通じて直接抗議に参加している。これはいわゆる革命情勢が出現する前提である。高度に工業化された社会における革命的情勢の最も重要な特徴は、普遍的な武力の使用ではない。われわれは絶対に陳勝呉広の乱あるいは辛亥革命や井崗山[毛沢東がゲリラ戦を展開した場所で革命の聖地]のような古いタイプの革命に誤って導かれてはならない。革命的情勢は最初から政権転覆を目指すものとも限らない。そのスタートラインは初歩的な目標であっても構わない。革命的情勢と呼ぶには少なくとも以下の条件がある。

(1)政府のある政策に対して、多数の群衆が直接行動を起こし、しかも警察に対抗する過激な行動にも支持をし始める。
(2)抵抗運動に対する政府の弾圧によって、政府の正当性が日々失われていき、人々は個別の政策に対する反対から政府そのものへの反対および体制変革の要求へと向かう。
(3)政府内部に分岐が生じ、その一部が反対派に同情しはじめる。
(4)「支配者が従来の形式で支配することができなくなり、人民もこの政府に支配され続けることに我慢できなくなり」、両陣営が対峙する。

1986年のフィリピンの人民革命はこのようであった。

情勢が(3)に発展したときに、支配集団はまず譲歩してから足場を固めて反撃に出ることで、社会変革は中断され元の状況にもどることもある。2011年のアラブの春におけるエジプトはこうして夭折し、軍の支配が復活した。

反送中運動は誕生から現在までに、二つのグループによって構成されている。黄色いリボン[2014年のオキュパイセントラルを支持する民主派だが、広い意味では民主派支持の大衆全体]と急進派青年である。後者は行動の前衛を担っており、前者はそれを後ろから支えている。両者の傾向は一致しており、ともに運動のピークへと向かうか、そうでなければ退潮するかである。6月以来、その傾向は一致しているが、その理由は何よりもまず、中聯弁[中国中央政府駐香港連絡代表事務所]と林鄭月娥[キャリーラム]・香港行政長官にある。さまざまな事象から、西環[中聯弁の所在地]が法案撤回を断固拒否するという強硬姿勢を示しながら、林鄭行政長官の権限を乗り越えて、直接に幾ばかの香港政府官僚を指揮していることがうかがえる。黄色いリボンの民主派大衆は、それに陰謀めいたものがあろうとなかろうと、西環が中環[香港政府の所在地]の上から中国送還条例の制定を進めて、客観的にも香港人の自治権を亡きものにしようとしていることに抵抗しないわけにはいかないと考えている。中聯弁が意図的に香港人を怒らせて情勢を混乱させようとしているのかどうかはわからないが、客観的にみて、中聯弁は自らの頑なな厚顔無恥によって、反送中運動を急進化させつづけており、その機に乗じて権限を拡大する口実をさらに作り出している。対立は激化している。6月以来、反送中運動も高潮へ向かっている。前述の四つの革命的情勢の特徴のうち、前二者はすでに出現しており、第三点についてもその兆しが見えつつある(多くの政府の高級官僚の抗議の声、香港商業総会[経営者団体]による独立調査機関設置の要求など)。

◎ いくつかのハードルを越えた

6・9の100万人デモ後、林鄭は法案審議を継続することを宣言した。そのとき、中高年以上の市民はこの闘争は敗北すると考えた。しかし彼らは、このとき黄色いリボンの若手活動家たちが行動の一層のレベルアップを決意したことに気が付いていなかった。だが6・12の街頭行動で先陣を切った数百の急進派青年たちに、市民の支持は集まるだろうかという懸念があった[雨傘運動で占拠した金鐘や中環一帯を再度占拠しようとし催涙弾で排除されるシーンが全世界に伝わった]。だがその後の6・16デモには予想を超えて200万人が参加し、林鄭政府の横っ面を容赦なくひっぱたくとともに、運動は最初のハードルを越えた。黄色いリボンの民衆が立法会[香港議会]への突入という低レベルの実力闘争に対してデモで支持を表明するというように、理解を示し始めたのである。燃える6月は、大衆の意識がかつての絶対平和主義と断絶したことを明らかにした。これまでの香港人の「平和的、理性的、非暴力」という考えからすると、この転換は大きな警告となった。

林鄭行政長官は[6・15に]法案審議の「棚上げ」を表明したが、7・1のデモには55万人が参加したし、青年達はその日の夜に立法会を一時占拠した。同じく意外だったのは、この「権力奪取」に似た、そしてすべての国家では反乱罪として起訴されるような事件(台湾ひまわり運動の議会占拠がそうならなかったのは当時の立法院[議会]議長と総統のあいだの権力闘争があったから)が、多くの市民からのシンパシーを獲得したことであった。このとき運動は、正当性の危機という二つ目のハードルを越えた。林鄭行政長官は法案審議の棚上げで、十分に人々は納得するだろうと考えていた。だがすでに市民の認識は彼女の思惑をはるかに超えていた。法案を撤回せずに、審議を棚上げしたままでは、あんたの後任者がまた同じことをしないという保証がどこにある、というわけである。この疑問の背後には、林鄭政府に対する徹底した不信があり、人々は林鄭行政長官が一国二制度という約束を反故にしてきたし、それを葬り去ろうとしていると考えている。そこから悪いのは法案だけでなく、林鄭行政長官自身も悪いのであり、それが率いる政府そのものが問題の所在だと考えている。大衆は彼女の辞任だけでなく、「二つ[行政長官と議会]の普通選挙」も要求している。これは制度圏外に向けた変革になっている。

もし林鄭がもう少し思慮深ければ、原罪が自らにあるにもかかわらず、強硬的、報復的な対応を取った場合には反発を招くだけであることは理解できたはずである。7・14の沙田大衝突の後も民意は警察に批判的であったことがそれを証明している[中国との境にある新界地区の中心地で初めて行われたデモに11万5000人が参加、デモ終了後に残った参加者を機動隊がショッピングモールに閉じ込めたうえに店内に突入して衝突し、40人以上が逮捕された]。それ以降も林鄭行政長官は民衆から敵視され続け、7月21日の上環と元朗での事件が発生した。[香港島側で行われた45万人デモの解散地点から一部の急進派青年らが中聯弁のある西環までデモを行い、中聯弁で抗議の落書きや中国の国章にペンキをかけた。夜中になり機動隊の排除がはじまり、上環まで後退したデモ隊に対して催涙弾や模擬弾が使用された。新界地区の元朗でもデモが行われたが、地元の有力者や暴力団を背景にした白シャツに身を包んだ1000名の自警団組織がデモ帰りの参加者を襲撃し多くの負傷者が出た。]

しかし市民は恐れることなく、元朗襲撃事件への反撃デモを準備している。警察はデモ申請を拒否したので、明日どのような事態になるのか、予測は難しい[7・27元朗デモは警察のデモ申請却下にもかかわらず約29万人が集まり自発的デモが敢行された。デモ終了後も解散しない参加者らを警察は催涙弾や鎮圧部隊を導入してしか解散させることはできなかった]。

総じて言えば、運動は三つ目のハードルを越えようとしている。つまり普通の市民でさえも暴力的恫喝を恐れることなく、正義にもとる政府への抵抗を続けている。もしこの段階で政府がさらに譲歩を拒否すれば、前衛的青年も黄色いリボンも要求を断念することはあり得ない。そうすると「支配者が従来の形式で支配することができなくなり、人民もこの政府に支配され続けることに我慢できなくなり」、両陣営が対峙する状況が登場する。つまり運動は四つ目のハードルを越えて、反送中運動が反政府運動、権力の変革を求める革命的情勢になる。しかし第三と第四のハードルを完全に乗り越えるには、巨大な代償を支払う準備が必要であり、それを受け入れることのできる民衆がどれほどいるのかは、いまだ未知数である。

◎ 革命はすばらしいことだが、どのような革命を求めるのか

黄色いリボンの一部には、元朗デモが予期せぬ衝突を招くのではないかと心配する意見もある。心配は必要だが、だからといって行動を放棄してはならない。元朗デモの正当性は、暴力組織の支配に屈することなく、元朗地域の安全を確保することであり、元朗地区における多元的な主張(黄色いリボン派か中国派かにかかわらず)を保障することにある。しかしウェブ上には、暴力組織への報復といった過激な主張も見られる。さらにひどいのは攻撃の対象を地元住民へ向けている主張である。もちろん連登[LIHKGというウェブ掲示板で反送中運動に関する様々な意見が投稿されている]にはすぐに反論が掲載された。「今回だけは『各自それぞれのやり方で山頂を目指す』ことはできない」という文章では、「7・27に村民を襲撃するというやつは死んでしまえ。村を包囲して焼き討ちしようなどと言うなかれ。…今回の件は『各自それぞれのやり方で山頂を目指す』というわけにはいかない。頭髪一本でも全身に影響があり、すべてに関連することになるからだ。何度でも考えてほしい。いかなる暴力/襲撃も、7・21で窮地に陥った政府の立場を救済することに働くのだから」。[各自それぞれのやり方で山頂を目指す、とは方針は違えども目的を同じくする場合には批判せず、それぞれのやり方で目的を達成しようという、2014年の雨傘運動の失敗を総括して今回の運動全体に共有化された方針]

真の民主派は、この決定的な時にこそ、冒険主義を無批判に称賛するのではなく、立ちあがって健全な勢力を支持すべきである。統制はさらなる過激行為を生み出すだけであり逆効果である。デモ隊は必要な時には自衛すべきだが、自ら進んで攻撃すべきではないし、自衛の目的が達成されたら実力の行使をすぐに停止すべきである。もし武装闘争派が自らの主張を堅持した場合、真の民主派はその行動から撤退してても、一線を越えてはならない。現場で袂を分かつことになったとしても、やみくもな武装闘争につき従うべきではない。

ウェブ上では、臨時立法会や新政府の準備についての議論も交わされている。確かに、二つの普通選挙を実現するためには、最終的には民衆自身による行動にかかってくる。だが現在の黄色いリボンの力だけでそれは十分だろうか。頭からつま先まで武装した敵を前に、黄色いリボンの市民たちはまだばらばらである。そのような状態で革命ができるとでも? 革命政権は、「イナゴを駆逐する[嫌中レイシストの]」政権なのか、それとも7・7デモのように中国の人民/旅行客からの支持を受けようとする政権なのか。結局のところ香港革命は、中国国内の民主的勢力とつながる必要があるのかどうか。もしこれらの問題でコンセンサスがなければ、いかにして香港人民による新政権を樹立することができるのか。7・1の立法会突入では、突入した後にその後の方針を議論していた。革命政権樹立が、そのようなやり方で良いとでも?

◎ 力ではなく知恵を

公約を守らない政権に対して人民は革命権を有する。だが香港という「弾丸の地」(狭い地域)においては、武力ではなく知恵に頼らなければならない。さまざまな兆候からいえることは、中国共産党のハイレベルの指導者のなかに、意図的に情勢をつくりだして運動を隘路に導こうとする様子がうかがえる。7・1立法会突入で警備を撤退させる戦術を取り、7・21ではデモ隊を誘導して中聯弁に向かわせ、しかも中聯弁前のすべての警官が忽然と姿を消し、デモ参加者がスプレーで落書きすることを容易にする状況が生まれたりしている。真の民主派は支配者の陰謀があるからといって闘争を放棄してはならない。だが闘争は大いなる寛容と大いなる勇気が必要なのであり、匹夫の勇[血気にはやる向こう見ずな勇気]であってはならない。そうでないとすべての香港人が巻き添えを食うことになるからだ。

知恵に頼るということは、まず次の問いへの答えが必要になる。いかにして弾丸の地が北京の巨龍と渡り合うことができるのか。これまでの運動は条件反射的なものであった。迫りくる兵を押しとどめ、流れ込む水には土嚢を積み上げる、という風にひとつひとつの戦役で対応してきた。だが戦略的思考はつぎのような答えを提示する。抵抗にも全局的な力の比較を考えた対策が必要である。香港という弾丸の地においてはまず戦略を考える必要がある。中国国内に情勢の変数が現れるまでは、できる限り「決戦」は避けるということである。抵抗は必要であるが、簡単に決戦を語ってはならない。梁啓智[著名なコラムニスト]も最近の文章で、バルド三国がどのようにして強国に挟まれながら維持してきたかについて論じている。香港はほとんど中共の手の中にある。なお一層の知恵と勇気の両方を必要とする。それによって未来が開けるのだ。

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