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一個都不能少

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▲2019年7月1日の55万人デモより

香港の立法会への突入の報道、東京新聞、どうしちゃったの?という感じです。

・香港、暴力行為に市民賛否 平和的デモと一線、運動離れ懸念(東京新聞2019年7月3日朝刊)
https://www.tokyo-np.co.jp/article/world/list/201907/CK2019070302000151.html

現場で取材をしていたはずなのに、当事者に話し聞いてない? 

昨日の朝夕刊、今朝の朝刊ともに、「3時間無法状態」とか報じてます。僕みたいな素人が現場に行っても、その場にいる青年が声をかけてくれ、いろいろと教えてくれます。

彼ら、彼女らから直接話を聞けば、もうすこし違った報道ができたのではないかと思うんですけど。現場の記者は丁寧に聞いてくれて、記事にもしようとしたけど、編集段階でアウトになったということもよくありますが、それにしても・・・。

まあ東京新聞の良心といいますか、上記の記事は今朝の国際面の記事ですが、最初にコメントが紹介されている李卓人さんはずっと労働組合の工盟の書記長をやって立法議員になり、民主派の中心人物の一人だった活動家で、今回の立法会突入についても、一定の理解を示していることでしょうか。

それに比べて、昨日の報道はひどいものでした。リンク先を探すのもめんどくさいくらい。

林鄭月娥・香港行政長官は未明の記者会見で「暴力」を20回も用いて事件を徹底追及すると宣言。しかし強化ガラスや政治スローガン(主流メディアは「落書き」といいますが)が書かれた壁の修復は可能ですが、送還条例をふくむ一連の人身の自由に関する法律が改悪されてしまったら、修復は可能でしょうか?議会で多数派を取れば可能?香港の選挙制度は、日本以上に非民主的なシステムで、日本とおなじように権力に媚びるカネ持ちの意向が反映されるようになっており、一番のカネ持ちであり権力を持っている中国政府の意向が一番反映されるルールになっています。(詳しくは『香港雨傘運動』(區龍宇、柘植書房新社)の解説参照)

ですから55万人のデモや数千人の立法会包囲・突入・占拠・撤退部隊は、直接選挙の実施を訴えました。手段は異なりますが、誰一人傷つけずに主張を掲げました。

さらに言えば、すでに3人の青年が自ら命を絶って抗議しています。林鄭のいう「暴力」には彼女たちを自殺へと追い込むことになった暴力は含まれていません。

自殺したひとり目は、梁さんという35歳の青年労働者。6/12の103万人デモとその後の運動の盛り上がり受けて、6/15に行政長官が「法案審議延期」を表明したのですが、それに対して「延期ではなく撤回を!」の声が高まりました。そしてその日の夕方に政府ビルや立法会や裁判所にほど近い金鐘の高級ショッピングモールのビルの上から「反送中 No Extradition To China」(中国への送還にNo)と書かれた横断幕を掲げました。そして夜にそのビルから転落してなくなりました。横断幕には「送還条例案を全面撤回せよ 我々は暴徒ではない 学生や負傷者を釈放せよ 林鄭は辞めろ、Help Hong Kong」と書かれていました。翌16日には200万+1人がデモに参加しました。

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▲梁さんの亡くなった現場にはいまも沢山の花がたむけられていた(2019年6月30日撮影)

もうひとりは21歳の教育大学の盧さんという学生で、6月29日の午後、九龍郊外の粉嶺嘉福邨の高層団地から飛び降りました。団地の24階の階段の踊り場の壁には、彼女が書いたと思われる「反送中」という大きな文字と、香港市民へ向けた遺書が書かれていました。

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「致香港人:雖然抗爭時間久了,但絕對不能忘記,我們一直以來的理念,一定要堅持下去,強烈要求全面撤回條例,收回暴動論,釋放學生示威者。林鄭下台,嚴懲警方。本人願可以小命成功換取二百萬人的心願,請你們堅持下去!」。
(香港人へ:抵抗は続いていますが、条例の全面撤回、暴動規定の撤回、学生やデモ参加者の釈放といったわたしたちの当初からの理念を絶対に忘れず、頑張り続けてください。林鄭は辞めろ、警察を厳重処分せよ。わたしはこの小さな命を以て200万人の願いの成就に代えたいとおもいます。どうぞ最後までがんばってください!)

立法会に包囲・突入・占拠・撤退した若者たちは、金鐘の占拠スペースや立法会正面玄関に、梁さんと盧さんを追悼するための献花空間をつくっていました。

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▲香港政府本庁舎の壁につくられた梁さんと盧さんを追悼する献花スペース(2017年7月1日撮影)

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▲立法会正門前に設置された献花台(2019年7月1日撮影)

そしてもう一人は29歳の鄔さんという女性です。僕たちが金鐘の献花スペースで献花していたときにボランティアで案内をしてくれた青年から「じつは昨日もうひとり亡くなった」と聞きおどろきました。亡くなった女性は6/12と6/16のデモにも参加していましたが、「7月1日のデモには行ない」とfacebookに書き込み、中環(セントラル)にある国際金融ビルから飛び降りて亡くなりました。彼女の最後の書き込みが報道されています。

「香港,加油。我希望可以看到你們的勝利。七一我去不了,其實真的絕望透了。所有的事情也讓我覺得沒有明天…累了,不想再為明天努力…我是會被社會淘汰的花枝,漂流在河上,而不是在樹上盛開的繁花…。」
(香港、がんばれ。私たちの勝利を見たかった。7月1日のデモには行ない。ほんとすごい絶望してる。すべてのことについて明日がないと感じられる……疲れた。もう明日のことに努力したくもない……私は木の上で満開に咲いている花としてではなく、社会から取り除かれて川面に捨てられ流れていく草花のよう…。)

香港55万人デモでも「一個都不能少」(だれ一人として欠けてはならない)という横断幕を持った隊列もありました。命を無駄にしないでほしいという強い思いが込められたメッセージだと思います。

そして、この「だれ一人」には、日本でももう少しまともな報道に期待したいと思っている私たちも含まれているとおもいます。

一個都不能少!香港加油!

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Comment

デモ隊の皆さんは 張芸謀の映画のタイトルを意識しているのでしょうか

 一個都不能少の読み下しを知りたくて検索したら、この言葉が映画のタイトルに使われていたことを知りました。
 デモ隊の皆さんは(1)誰かが欠けてしまったらこの行動の価値が毀されてしまう(2)彼らを連れ戻せたら(3)全員で前進しようというお気持ちなのでしょうね。
 

2019/07/04 (Thu) 12:29 | L #LkZag.iM | URL | Edit

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