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ずば抜けて面白いヤニス・ヴァルファキス『黒い匣』の黒い話

すこし時間が取れるようになったので、書いておきます。

もう先週のことになるが、電車に乗って座ったら、隣の人がカバンから本を取り出して読みはじめた。

ちらっとみると、見覚えのある割り付け。「余剰とは何だろう?」という文言も見えた。あれ?もしかして、バルファキスの『父が娘に語る経済の話』じゃない? うん、そうだ。

なになに28ページ?まだ読みはじめたばかりか。「経済の本なのに異様に面白い」という宣伝に騙されて、けっこう売れてんだなぁ、とか思ったのですが、次の駅についても、その次の駅についても、なかなかページをめくらない。

そんなにゆっくり読んでるの?とおもって、ふと横を見たら、

寝てるやん!ZZZ…(=_=)

そうなんです。じつはそんなに面白くもない。

表紙のそでには、

読み終えた瞬間
世界が
180度

変わって見える――。
必読の書


とデカデカと書いてあるのですが、ぜんぜん変わって見えませんでした。
チョムスキーやジジェクのお褒めの言葉が帯にあるのもうさん臭い。

それに比べて、おなじくヤニス・ヴァルファキスが書いた、ギリシャ危機後に財務大臣としてトロイカとの厳しい交渉を経験した暴露本?『黒い匣』(くろいはこ)は、まだ全17章のうち3章目に突入したばかりですが、ずばぬけて面白いのです。

せっかく読むならこっちでしょ。

◎『黒い匣 : 密室の権力者たちが狂わせる世界の運命』
元財相バルファキスが語る「ギリシャの春」鎮圧の深層

https://www.akashi.co.jp/book/b453574.html
(出版社公式サイト)

kuroihako.jpg

なにがずば抜けて面白いかというと、前にも書いたように、ギリシャ左派が主張してきた債務帳消の前提となる債務監査やユーロ離脱のスタンスについて、なんとバルファキスは後ろ向きというか、はっきりと反対しており、動揺するチプラスを説得したということが明らかにされているからです。

それだけではありません。政権獲得前の2014年9月、急進化する大衆の意向を受けてチプラスが行ったシリザの経済綱領的講演、「テッサロニキ・プログラム」について、バルファキスははっきりと「嫌悪感と憤り」を表明しているのです。

いやー、ずば抜けておもしろい!著者や編訳者のみなさんの意図とはそれこそ180度ちがいますけどね!

このバルファキスの主張に対して、不当債務帳消委員会の共同代表でギリシャ国会に設置された債務監査委員会の委員長を務めたエリック・トゥーサンもはっきりと、バルファキスは当初から債務監査に反対だったと述べていますし、バルファキスのスタンスが、シリザの屈服を準備した一つの理由だとも述べています。エリック・トゥーサンによる『黒い匣』批判(英語)はこちらからリンクをたどっていけます。

◎バルファキス、2冊~『父が娘に語る経済の話』、『黒い匣』
http://attackoto.blog9.fc2.com/blog-entry-456.html

エリックの批判もずば抜けて面白いはず。こちらの方も翻訳してほしいですね。

ちなみに、上記エリックの連載にもたびたび登場し、2015年1月の選挙でシリザの国会議員になり、債務監査にも積極的に支援してきたラパビツァス教授は『ギリシャデフォルト宣言』で、債務帳消、ユーロ離脱を射程にいれて左派は準備すべきだと主張していました。

◎ギリシャデフォルト宣言
(その1)http://attackoto.blog9.fc2.com/blog-entry-297.html
(その2)http://attackoto.blog9.fc2.com/blog-entry-298.html

CADTMのサイトをみたら、ラパビツァス教授はエリックらとともに、新しい国際主義のマニフェストを発表しています。目次をみると金融、債務、雇用、エコ社会主義、フェミニズムなどがありますね。

ReCommonsEurope: Manifesto for a New Popular Internationalism in Europe
http://www.cadtm.org/ReCommonsEurope-Manifesto-for-a-New-Popular-Internationalism-in-Europe
26 May by Eric Toussaint , Esther Vivas , Catherine Samary , Costas Lapavitsas , Stathis Kouvelakis , Tijana Okic , Nathan Legrand , Alexis Cukier , Jeanne Chevalier , Yayo Herrero

Chapter 1 - First steps of a popular government
Chapter 2 - Banks
Chapter 3 - Debt
Chapter 4 - Work, employment and social rights
Chapter 5 - Eco-socialism and energy transition
Chapter 6 - Feminism
Chapter 7 - Health, Education and Housing
Chapter 8 - International relations
Chapter 9 - Social struggles, political confrontations and constituent processes

こっちも、ずば抜けて面白そう。
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