
結論から言うと、はい、悪者です。
『世界の半分が餓えるのはなぜ? ジグレール教授がわが子に語る飢餓の真実』などの著書のあるジャン・ジグレール氏による続編?とでもいいった内容です。
表紙の孫娘?のイラストが、ダボス会議で気候変動を進めるエスタブリッシュメントらを前に堂々たるスピーチを行ったスウェーデンのグレタ・トゥンベルクさんに似ていたので、ぱらぱらと目次をめくってみたら、attac的にはど真ん中の内容だったので、買って読んでいます。
出版社の公式サイト
http://books.cccmh.co.jp/list/detail/2307/
(目次)
第1章 資本主義って何?
第2章 資本主義の誕生
第3章 フランス革命について
第4章 オリガーキー[一握りの支配者]について
第5章 グローバル化について
第6章 不平等、格差について
第7章 隠された真実――発展途上国は先進国への債務返済に追われている
第8章 表に出ない資本主義の裏の顔
第9章 行き過ぎた資本主義を崩壊させるのはユートピア?
第1章「資本主義って何?」のなかで、ジャグレール氏は孫娘にこう言います。
「私の立場は資本主義とは対立している。資本主義と闘っているのだよ。」
第2章「資本主義の誕生」では、資本主義が歴史的に果たしてきた役割だけでなく、マルクスによる資本主義分析も詳しく紹介しています。
第3章「フランス革命について」では、フランス革命において私有財産に手をつけなかったロベスピエールを批判したバブーフの最後の演説を「私が知っている反資本主義の文章のなかでもっとも正論で、先見の明があるものの一つ」として紹介しています。
第4章「」オリーガーキーについて」では、1990年代の二つの大事件(ひとつはソ連崩壊、ふたつは技術革新)によって企業の多国籍化と独占化が飛躍的に拡大し、さらに金融資本が支配的となった2000年代前半の状況を、国連「食糧に対する権利」の初代特別報告者(00~08年)として見聞きした多国籍資本の支配の実態を告発しています。
第5章「グローバル化について」では、消費社会や広告経済について述べつつ、これらの「豊かな社会」の裏側には、世界の4分の3がこの豊かさを享受できておらず、環境破壊、低賃金、不平等、精神の不安定化などの弊害があることいくつもの具体例を出して説明しています。
第6章「不平等・格差について」では、世界トップ85人がの資産が貧しい35億人の資産と同じなど、いびつな不平等の構造にふれるとともに、それら金持がタックスヘイブンなどを利用して支払うべき税金を払っていないことを解説。
第7章「隠された真実――発展途上国は先進国への債務返済に追われている」では、債務帳消し運動では常識である、資金の流れは「途上国」→「先進国」のほうが多いことにふれ「発展途上国を支配するのにもっとも有効的な方法は、債務漬けにすること」としてコンゴ、ハイチ、ペルー、マラウィなどの例を紹介。マラウィの例はハゲタカファンド。
第8章「表に出ない資本主義の裏の顔」では、資本主義の公正なルールとされる自由貿易やその理論的根拠となっている自由主義を批判し、また自身もそのメンバーである(だった?)社会主義インターナショナル(つまり第二インターナショナル)の大会議長を務めた当時のドイツ首相のシュレーダーの新自由主義を批判しつつ、それを「自己疎外」という、やや苦しい言い訳で説明しています…。
第9章「行き過ぎた資本主義を崩壊させるのはユートビア?」では、「ユートピア」についてこう孫娘に語っています。
「ユートピアは歴史を変える力のある素晴らしいものだ。」
またマルクスの手紙の一節を紹介しています。
「『革命家には草が生える音を聞く能力がなければならない』とね。信じていい、現に草が生えている!」
そしてビアカンペシーナやグリンピースやアムネスティとともに、「投機目的の取引を抑制しようとしている運動」としてattacにも言及しています。
総じて、この不平等で不正義なグローバル資本主義の代表20人が日本にやってくる前に、みんなでこの『資本主義って悪者なの?』を読んでみることくらいは、けっしてユートピアではないとおもいました。
●attacオーストリアのAttac Sommerakademie 2017 (夏季大学)
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