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【翻訳】 国家機密!習総書記はマルクスをご理解されてらっしゃらない

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世界最大のマルクス主義政党であり政権党でもある中国共産党のマルクス主義を批判した文章。香港の「無国界社運Borderless movement」からの翻訳です。官僚は階級ではないと思いますが、それ以外は面白い分析です。原文はこちら

国家機密!習総書記はマルクスをご理解されてらっしゃらない
林家楽


この間、中国共産党はマルクス生誕200年を大げさに記念し、習近平も長時間の講演(原注1)を行い「中国共産党員はいぜんとしてマルクスを学習し、マルクス主義を学習して実践し、そこから科学的知見と理論の力を不断に汲み取らなければならない」と述べ、さらには自ら「共産党宣言」の中央政治局の全体学習会を主催した(原注2)。

多くの人間がこれには身構えた。「サウスチャイナ・モーニングポスト」(香港英字紙)は二本の英文記事を掲載した。ひとつは党のトップレベルにおいてマルクス主義を称揚しているのに、左翼青年らが逮捕されているのかという疑問を報じたものだ(原注3、4)。もうひとつは、中国共産党は経済的には資本主義を掲げてはいるが、本質はレーニン主義を奉じる「邪悪なマルクス主義」だという内容である(原注5)。

だが中国共産党は一貫してマルクス・レーニン主義の政党だと称しているが、その最高指導層から各レベルの官僚、専門家や宣伝部門まで、実際に真にマルクス主義を理解している人間はほとんどいないだろう。中国共産党のトップ機関紙「人民日報」が2018年6月4日に掲載した文章(原注6)がその好例だろう。

20190218marx02.jpg(以下、人民日報記事の訳)核心を擁護することが中華民族全体の利益を守ることである(2018年6月4日 人民日報)  
マルクス主義政党にとって、核心(中心的指導者)は極めて重要である。中国共産党は世界最大の政権党であり、8900万余の党員を擁し、450万余の党細胞を有しており、その核心を擁護することは党と人民が事業を発展させることに関連する。習近平同志は全党が擁護し、人民が敬愛しており、党の核心的指導者、軍隊の統率者、人民の指導者として愧(は)じるところがない。新しい時代において、我々は習近平同志の党中央という核心、全党の核心的地位を自覚的に擁護し、核心を擁護することこそ中華民族全体の利益を擁護することであると深く認識しなければならない。マルクス主義の政党理論によれば、核心を擁護することは党の団結と統一を維持する基礎であり、党は核心があってはじめて思想的に高度に統一され、政治的に高度に団結し、行動において高度に一致するのである。核心を擁護する前提は核心に忠誠を誓うことであり、核心を擁護する目的は核心を防衛することである。マルクス主義政党は核心を擁護してこそ、党の団結と統一を保持でき、党の指導を強力にするのである。核心の擁護は中国共産党の優れた伝統であり……

(以上、人民日報記事の訳)



マルクスは民族対立に反対したが、「人民日報」では中華民族の利益と復興を大いに語っている。だが誰が民族の支配階級であるかについての明言は避けており、まるでヒトラーのナチスばりの言論である。マルクスは帝政反対の1848年革命を支持したが、「人民日報」は習近平への「中核」的権力の賦与を求めており、ルイ・ボナパルトのような独裁者をもはるかに凌駕している。

「共産主義者はさらに、祖国を、国民性を廃止しようとしている、と非難されている。労働者は祖国をもたない。労働者がもたないものを労働者からとりあげることはできない。プロレタリアートは、まず政治的支配を奪いとり、国民(の指導)的階級にみずからを高め、みずから国民として組織しなければならないのだから、ブルジョアの意味では決してないが、やはりそれ自身国民的である。諸民族の国民的な分離と対立とは、ブルジョアジーが発展するにつれて、商業の自由と世界市場が発展し、工業的生産とそれに照応する生産関係が一様化するにつれて、すでにしだいに消滅しつつある。」――「共産党宣言」の国民に関する記述より

しかしこの中核的人物の「思想」が「21世紀のマルクス主義」を代表しているというが(原注7)、かれの文化水準からして、マルクスの書物を理解しているとは信じがたい。ゆえに、彼の太鼓持ちもそれほど苦労してそれを学ぶ必要もない。しかし中国共産党はマルクス主義を広く宣伝しているので、太鼓持ちたちによる指導者称揚だけではなく(原注8)、別の目的もあるに違いない。

それは西側思想の浸透に対抗するためであり、若い世代が自由と民主主義に追従することを阻止することが目的だという意見もある(原注9)。しかしマルクス主義それ自体が西側思想であり、マルクス本人も自由と民主主義を同時代の誰よりも急進的に主張していたのである。もし若い世代が「プロイセンの最新の検閲訓令にたいする見解」を読めば、中国のソーシャルネットワークにおける書き込みの削除や禁書、映画の検閲などをすぐに思い浮かべるだろうし、さらに政権への嫌悪感を増幅させるだろう。もし労働者が剰余価値理論を理解すれば、ストライキはさらに断固たるものになり、闘志がみなぎるだろう。フェミニストらはエンゲルスの「家族、私有制、国家の起源」を引用することもできるだろう。マルクスは革命を通じて自由と民主主義を実現すると主張していたが、これこそ中国共産党にとって致命的なことはいうまでもない。

つまり、中国共産党は表面的には大々的にマルクスを記念してはいるが、本気で青年たちにマルクス主義を学び取ることを奨励するような馬鹿なことはしない。実際、学校で使われる関連教材もすべてずたずたに裂かれて「無害」になったマルクス主義の教本しかない。それに狗尾続貂[くびぞくちょう:有能な者に劣った者が付き従う]の中共指導者らの「理論」や「思想」が付け加えられる。政治教科の教員の講義も無味乾燥なことから、中学を卒業した後にはほとんどがマルクス主義を敬遠することになる。原著を理解したごくわずかのものが、マルクス主義を志して実践に移せば、だいたいは国家の暴力装置の弾圧の対象になってしまう。この間[2018年初頭]、広東省のマルクス主義読書会の8人の青年がそのいい例である。かれらは実践の道にすら至っておらず、たんに教育宣伝に携わっただけなのに。

では、中共は(マルクスを歪曲した)「邪悪なレーニン主義」を奉じているのだろうか。しかしレーニン時代のボリシェビキ党は、実際にはかなり民主的で、これまでと現在の中国共産党とはまったく相反するともいえる。レーニンは、労働者の権利の向上に努め、独裁を打倒、帝国主義戦争に反対し、労働者政権を樹立することに奮闘したが、中国共産党の現在の目標はこれらから全くかけ離れたものである。ロシアで内戦が始まってからは、レーニンは確かに反革命を弾圧する一連の措置を実施したが、それは極めて極度の歴史的条件下におけるものであり、労働者権力を維持するためのやむを得ない措置だった。今日の中国共産党政権は労働者の政権ではないし、外敵の侵入や階級的内戦といった状況も存在しない。もし中国共産党の高圧的な政策をレーニン主義だというのなら、これまでの歴史において自らの支配を擁護するために手段を選ばなかった暴君、秦の始皇帝から朱元璋にいたるまですべてレーニン主義者だと言えるのではないか。

しかし、歴史においてマルクス主義を掲げた暴君も多くいたことも確かである。最も有名なのはスターリンである。当時は彼も「中心的指導者」であり、マルクス主義を「代表」する人物であり、彼を擁護することはソ連邦全体の利益を擁護することであるとも言われていた。だが今日の中国と同じく、スターリン支配下のソ連の真の支配者は、労働者ではなく官僚階級であった(今日、多くの中国官僚の後継者たちが大資本家でもある)。スターリンの清作は、富農からの収奪にしろ、「一国社会主義」の建設にしろ、すべてこの支配階級(と彼自身)の利益を守るものであった。

今日の中国共産党およびその代表らの支配階級は多くの危機に直面している。国際的にはライバルに包囲されており、財政は日々厳しい状況に陥りつつある。経済成長の勢いも乏しく、支配グループの中では権力闘争が絶えない。とすればスターリンの方法も選択肢の一つといえる。たとえば、非直系グループの資本家らの資産を没収して財政危機の緩和を図るというものだ。呉小暉や王健林(※訳注)などがそのケースといえる。

(※訳注:呉小暉は安邦保険の会長で18年5月に詐欺罪で懲役18年と資産没収の判決を受ける。王健林は大連万達グループ会長で長者番付トップの大富豪、保有資産1300億元の売却を政府から迫られた。)

スターリン時代の「大粛清」になぞらえた腐敗撲滅運動を通じて内部の粛清をめざす。「一帯一路」や「上海協力機構」などもかつての社会主義陣営と西側勢力による縄張り的な感じもしないではない。しかし支配者だけがスターリニズムに影響されると考えるのは間違いである。スターリン時代のソ連邦が強大だった根本的な理由は、労働者と農民に依拠しつつ、それに対する過酷な搾取によることが大きかった。ゆえにもし中国共産党がその路線を進むことになれば、労働者民衆の未来は暗いものになるだろう。現状でも多くの予兆がみられる。退職年齢の延長(原注10)、週休二日制の有名無実化(原注11)、不払い残業の常態化(原注12)など、あと少しで政府は「中華民族の偉大な復興の実現のための一日X時間の義務労働制」などとぶち上げかねない。

つまりは、中国共産党はマルクス主義を騙(かた)りつつ、スターリンの政策を実行しようとしているのかもしれない。

(以下、原注はすべて漢/英語)

原注1 習近平:マルクス生誕200年大会での演説(2018-05-04)
http://www.xinhuanet.com/politics/leaders/2018-05/04/c_1122783997.htm

原注2 習近平:マルクス主義の真理の力を深く感じ取り把握しよう(2018-04-24)
http://www.xinhuanet.com/2018-04/24/c_1122733802.htm

原注3 Why Beijing isn’t Marxist enough for China’s radical millennials(24 May, 2018)
https://www.scmp.com/news/china/policies-politics/article/2147487/why-beijing-isnt-marxist-enough-chinas-radical

原注4 リンク切れ
https://www.letscorp.net/archives/128317

原注5 How ‘Communist’ China has embraced capitalism but remains Leninist at heart(15 November, 2017)
http://www.scmp.com/comment/insight-opinion/article/2119839/how-communist-china-has-embraced-capitalism-remains-leninist

原注6 中心的指導者を擁護することが中華民族全体の利益を守ることである(2018年06月04日)
http://opinion.people.com.cn/n1/2018/0604/c1003-30032201.html

原注7 習近平の新時代の中国の特色ある社会主義思想は21世紀のマルクス主義である(2018-06-11)
http://www.ccdi.gov.cn/lswh/lilun/201805/t20180523_172429.html

原注8 【図説中国】今年は特に太鼓持ちが多い
https://chinadigitaltimes.net/chinese/2017/06/%E3%80%90%E5%9B%BE%E8%AF%B4%E5%A4%A9%E6%9C%9D%E3%80%91%E9%A2%82%E5%9C%A3%E5%B9%B4%E5%B9%B4%E6%9C%89-%E4%BB%8A%E5%B9%B4%E7%89%B9%E5%88%AB%E5%A4%9A/

原注9 中国の大学で社会主義価値観を強調 西側思想の浸透に対抗(2015年2月10日)
https://cn.nytimes.com/china/20150210/c10chinacollege/

原注10 ニュース!退職年齢の延長の最新情報 四つのグループに影響(2018-01-15)
http://m.ce.cn/rd/201801/15/t20180115_27729450.shtml

原注11 週6日労働が蔓延 週休二日「有名無実」(2017-08-03 18:12)
http://www.sohu.com/a/161980423_787645

原注12 自発的な残業には残業代は出ない?意外な模範解答(2017-12-15)
http://www.infzm.com/content/131646
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