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粉飾会計のデリバディブに組成されるダイベストメント

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1月14日から始まっていた日経新聞一面の連載「地銀波乱」が終了しました。面白かったのでちょっと紹介。

金融危機における地銀や信金問題で想起するのは、リーマン危機の際にスペインの貯蓄銀行カハなどの信用問題ですが、日本の場合は地銀や信金などにリスクが隠れ続けているようです。

地銀問題は、日銀の異次元緩和とマイナス金利のなかで、グローバルに展開するメガバンクとは対照的に、収益確保がより厳しくなった地銀などの金融機関の問題ともいえます。

2018年4月のattac首都圏の総会議案にはこんな一文がある。少し長いが引用します。

「中央銀行からあふれ出るマネーによって、国内銀行の貸出金は2年間に比べて4%増の485億円となったが、銀行が日銀に預けているおカネが約1・5倍になっていることに比べると、信用創造という銀行にだけ認められた社会的役割としての融資業務は微増と言わざるを得ない。しかも増加した貸し出し資金の多くが国内の不動産および海外支店に流れている。
 マイナス金利によって銀行の収益は圧迫されており、さらなる利益追求を迫られている。マイナス金利は銀行をして、投機マネーの一層のグローバル化、そして預金者からのさらなる利益収奪という反社会的役割をさらに後押しすることになったと言える。その傾向は世界的なものである。08年末に119兆ドルだった世界の債権(国債など)の時価総額は17年末には169兆ドル、1.4倍に膨らんだ。世界の国内総生産の6割に当たる。サブプライム危機を招いた張本人であるグリーンスパン元FRB議長は「債権バブルだ」と他人事のように語っている。」

ところで、日経の連載の論調は、

「地銀が張りめぐらす店舗網は全国で約1万。大手銀行の4倍だ。行員は1.8倍。にもかかわらず預金量は大手の8割にすぎない。人口減で縮む国内市場に多くの銀行がひしめく構造はもはや持続性に欠ける。」

「政府は1990年代後半の金融危機を潤沢な公的資金と思い切った不良債権処理で濃くk福下。だが、地銀には大手銀行のような厳しい経営改革を求めなかった。そのツケが重くなっている。」

とあるように、今後の危機に備えた世論誘導ですが、「現場で何が起きているのか、これから何が起きるのかを描く」(1/14付)ので、「ほぉー」と感心する事実も知ることができます。

その一つが、連載三回目(1/16)の「会計『装飾』のからくり」で紹介されているメガバンクによるダイベストメント(投資撤退)リスクを地銀に押し付け、地銀は地銀でそれを会計の「装飾」に利用しているという記事。

気候変動における社会運動の要求の一つといわれる「ダイベストメント」が地銀の会計の「装飾」につかわれている、という“System Change, Not Climate Change!”を掲げるオルタグローバリゼーション運動にとっては興味深い内容です。

記事によると、「リパッケージローン」という金融派生商品(デリバディブ)が地銀で密かに広がっているようです。

「表面的には一定の利回りを手にできる金融商品。その中身は特定の企業や事業の破たんに備えたデリバディブなのだが、地銀はそこに融資する形をとる。複雑な金融商品が姿を変え、会計上は(地銀の)融資が増える構造だ。『マイナス金利で何をやっても苦しい状況。決算の見栄えが良くなると頭取が喜ぶんだよ』。運用担当者は内幕をこう明かした。急増している投資信託もからくりは似ている。」

「地銀が持つ投信残高は2018年に11兆円を突破。この4年で3倍に膨れ、大手銀行を大きく上回る。通常の株式と比べて私募投信は解約が制限される例が多い。売りたいときにすぐ売れない。リスクは格段に高い。」

日銀の18年10月に金融システムリポートで警鐘を鳴らしていることも記事には書かれていますが、その責任のいったんが自分たちにもあることに言及しているのでしょうか。

リスクはあっても地銀は「リパッケージローン」を買いたがります。

「マイナス金利下で融資や金融商品の利回りは低下を続け、(地銀)経営の手詰まり感が強まるばかり。そんな地銀の苦境を見透かすように、売り手が群がっている。」

誰がそんなリスクの高いデリバディブを売るのか。そう、ダイベストメント(石炭からの投資撤退)の対象となるリスクを避けたいメガバンクなんです。

「昨夏、あるメガ銀行が組成した融資500億円を複数の地銀に売り出そうと打診した。融資先には伝えない『サイレント譲渡』と呼ばれる貸出債権のバラ売りだ。打診と前後して、この融資先は海外の投資家が環境保護の観点で懸念ありとして株式の保有をやめた『ダイベストメント』の対象となり、話題を集めた。ある地銀の担当者は『(ダイベストメントの対象となるという)リスクを落としたいメガ銀行の意図を感じた』と複雑な表情だった。」

もちろんダイベストメントそのものが悪いわけではありません。リスクや「債務」をごちゃまぜにして、「債権」に組成してばらまくという、サブプライムローンと同じ思考を断ち切れないこのシステムそのものが問題です。

そもそも「ダイベストメント」に対してネガティブな報道が目立つ日経新聞ですから、この連載も気を付けて見なければなりません。

悪魔は細部に宿るといいますが、リスクも細部に宿っているようです。しかしメガバンクと地銀信金などを分断して、地銀などの経営ぶりを叩くというスタンスはおなしなものです。

金融は経済の血液であり、金融システムは人間の血管です。リーマンショックをはじめいま世界の金融システムが直面する危機的状況は、個々の毛細血管の異常ではなく、中央銀行という心臓部や血液をつくる骨髄という、このシステムの中枢部の深刻な症状の反映です。

個々の毛細血管の異常は、中枢部の危機のシグナルに過ぎません。そしてキャピタリズムという名の医師は、モルヒネと輸血という展望のない延命措置にすがるしかないというのが、現状のようです。

System Change, Not Climate Change !




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