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Money Changes Everything:ゴーンの意見陳述を読んで

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▲2016年リオ五輪で聖火ランナーを務めたゴーン

けさラジオをつけたら基礎英語という番組でシンディ・ローパーの「Money Changes Everything」を流していました。ちょうど勾留理由開示におけるゴーンの陳述書を読んだばかりで、タイミングがいいな、と思ったりしました。

・Money Changes Everything/Cyndi Lauper和訳
http://yougaku-wayaku-salon.com/2016/11/01/money-changes-everything-cyndi-lauper/

ゴーンを捕まえるなら、安倍や加計や佐川も捕まえろと思うのですが、それはさておき、ゴーンは勾留理由開示の法廷で、スワップ取引で日産に損失を与えたという逮捕容疑の一つに反論しました。

あらかじめ言っておきますが、リーマンで想定外の損失が出て、生活ために、一時的に損失を日産にまわした、ということですが、99年の大量リストラの功績をかわれて最高経営責任者となり巨額の報酬を得て、それを為替取引で米ドルに換えてきたが(たぶんそれでさらにもうけてきた)、リーマンで想定以上の円高になって損失、さらに担保だった持ち株(日産株?)もリーマンで暴落してて、しかたなく一時的に日産に損失(契約)を肩代わりしてもらった、ということですが、99年大リストラでもそうですが、リーマンの時には派遣切りしましたよね?労働者には生活はないのですか?自分たちだけ助かればいいのですか?それがブルジョアの自己責任なんですか?

しかもリーマンショックの原因のサブプライムは自動車ローンなどにも組み込まれていたでしょう。日産ももうけたでしょう。

ハイリスクはハイリターンと表裏一体でしょう。労働者以上に資本家はリスクを取らないといけないでしょう。にもかかわらず、損失が出たら会社に肩代わりしてもらう?労働者にはそんな抜け道はありません。有無を言わさずリストラと派遣切りです。

ほんとうに怒りに堪えません。

そしてそんなブルジョアの無責任な自己責任を煽るかのように「世界位で一番企業が活動しやすい国にする」などと放言してやまない政治家に、怒り心頭です。

ゴーンは、フランスで富裕税が導入されたらタックスヘイブンのオランダに居住地を変更しています。その後、マクロンによる富裕税廃止でどうしたのか知りませんが、安倍はそのタックスヘイブンのオランダを訪問して日欧経済連携協定や東京五輪を宣伝しています。

ほんとうに怒りに堪えません。

さて、怒り心頭ですが、ゴーンの為替スワップに関する陳述は、attac的には理解しておいたほうがいい内容なので、やや長いですが、その箇所を全文引用します。


「私は約20年前日産に入って日本に赴任した際、米ドルでの報酬の支払いを要望しましたが、それはできないと言われ、報酬は日本円で支払うという雇用契約を結ばされました。その時からずっと私は、米ドルに対する円の変動に懸念を抱いてきました。私自身は米ドル建ての生活を基本としております。私の子供たちは米国に住んでおりますし、私自身、米ドルとの固定為替レート制をとるレバノンと強い結び付きを持っています。そこで私は、自分の家族を養うために、ドル建てでの収入が変動しないようにしたいと考えていました。」

「そこで私は、日産に入ってしばらくした2002年以降、為替スワップ契約を締結していました。現在私に掛けられている容疑では、二つの為替スワップ契約が問題となっています。一つは06年に締結したもので、当時日産の株価は約1500円で、円・ドルの為替レートは約118円でした。もう一つは07年に締結したもので、当時日産の株価は約1400円で、円・ドルの為替レートは約114円でした。」

「ところが、08年から09年にかけての金融危機により、日産の株価は08年10月に400円、09年2月に250円にまで急落し(ピーク時に比べ80%超の下落)、円・ドルの為替レートは80円以下にまでドルが下がりました。これは誰も想像しなかった最悪の事態でした。銀行業界全体の仕組みが機能しなくなり、私が為替スワップ契約を締結していた銀行は、契約上必要となる金額の担保を直ちに差し入れるように要求してきましたが、私自身ではその銀行の要求に応えることができませんでした。」

「それで、私は二つの厳しい選択を迫られたのです。(1)日産を退任して、退職慰労金を受領して、これを銀行に担保として差し入れるということです。しかし、私には日産への道義的な責任があり、この重大な局面で退任することはできませんでした。船長は、嵐の最中に船から逃げ出すようなことはできないのです。(2)私が他の知人などから担保を用意するまでの間、日産に金銭的な損失を負わせない限りにおいて、一時的に担保を提供してもらうように要請することです。」

「結局、私は第2の選択肢を選びました。そしてしばらくして、上記の二つの為替スワップ契約の主体を再び私に戻しましたが、この間、日産に一切損害を与えておりません。」

以上、ゴーンの陳述における為替スワップに関する箇所です。

全文はこちら 
https://www.jiji.com/jc/article?k=2019010801175&g=soc

「為替スワップ」とはCTT部会の学習会でのテキスト『身近に感じる国際金融』(有斐閣ストゥディア)の18Pにも「2通貨間の金利と直先スプレッドとの乖離を利用して裁定利益を狙う金利裁定取引…」とあります。

たんに2国間通貨を交換するだけなら、損も得もなくそのときのレートで交換すればいいのですが、しかし一般的に変動相場制のなかで固定相場とおなじようなリターンを求めることはできず、どこかにリスクが潜みます。リターンの裏側にはリスクがあり、そのリスクをカバーするために、取引を仲介する投資銀行は担保を求めます。

ゴーンの場合は、日本円でもらった報酬を米ドルと交換するための金融取引で大きな損失が出たが、損失をカバーするための担保に入れていた株式も暴落して、さらに追加で担保を入れるという要求に応えることができず一時的に日産に取引の損失を付け替えて、その後、清算した、ということです。

辞めて退職金で担保入れるのは「船長は、嵐の最中に船から逃げ出すようなことはできない」といってますが、ゴーンは他にも資産を持っているはずです。

もちろんリスクを日産に付け替えたと言っても、「実際には損失は発生していない」ということなので、それをお縄にするかどうかは、

検察関係者が小出しにしている情報でしょうが、今日の日経報道では自分の親族名義の定期預金20億円を一時、取引銀行の新生銀行に供出していたようですが、日産への付け替えやその後の資金繰りのめどが立ったことから20億円の担保は外れたようです。

つまり、自分の財産を守るために船を危険にさらしたとんでもない船長です。しかもそれは取締役会、つまり日産経営陣全体が合意していたものだということです。ゴーンはこれら腐敗した経営陣の中でもずば抜けて腐敗していたというだけであり、他の経営陣はそのずば抜けた腐敗のもとで年収数億もの高額報酬をせしめてきたのです。グローバルに展開する日産とルノーの醜い指導権争いが引き起こした内紛ですが、特捜は決して世直しのために逮捕したわけではないでしょう。

もう少ししたら、為替スワップの詳しい内容が明るみに出るかもしれません。もちろん取引自体は「合法」なものでしょう。しかし、投機マネーやタックスヘイブンに象徴される、この「合法」「違法ではない」は、もうたくさんです。"Money Changes Everything"の世界はもうたくさんです。
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