
9月から、東京五輪のボランティア募集が始まります。同じ区内に競技会場が多数ある私の職場でも、積極的に応募するよう告知がありました。ところが、自分の年休等で参加するうえに、無報酬だそうです。さらに交通費や宿泊費は自己負担。応募条件は、10日以上参加できること。
仕事を休むには、ボランティア休暇(5日)と夏季休暇(5日)あるいは有給休暇を使用します。公的な勤務軽減等はありませんとのこと。
「だれが、夏休みをつぶしてまで参加するか!?」「熱中症になりに行くようなものだ。」と考える人ばかりでないのが、怖いところです。五輪のためなら、おもてなしのためなら無償でもと考える人も少なくありません。
11万人必要とされる2020年東京五輪ボランティアを批判した本が刊行されました。『ブラックボランティア』本間龍著(角川新書)。著者は、大手広告代理店博報堂に勤務し、退職後、広告業界の実態からみた原発批判や、改憲国民投票法批判を書かれている方です。
東京五輪は7月24日から8月9日に開催されます。ボランティア11万人は、猛暑の中で、ただ働き。その一方で、オリンピック貴族と呼ばれるJOCや組織委、電通など運営陣は厚遇であり、冷房が効いた部屋で中継を見て、炎天下の行列に並ぶこともない。五輪貴族が無償ボランティアを搾取する構造を暴いています。
まあ、私は五輪ボランティアに参加するつもりはありません。とタカをくくっていたたら、組織委員会は、健康に不安がある高齢者は最初から相手にしていない、と本書は指摘していました。
五輪組織委がターゲットにしているのは、学生だそうです。「感動詐欺」で学生を動員するため、すでに大学との提携をしているとのこと。大学側でも、ボランティアに参加したら単位とするとの動きがあります。また、中高校生にも拡大することが検討されているそうです。
五輪は税金が投入されていますが、すでに非営利の公的な行事ではありません。巨大な商業イベント、究極の「営利活動の場」です。
ボランティアに1日1万円、10日分支払っても総額110億円。交通費や宿泊費を加えても推定4000億円以上のスポンサー収入で充分まかなえるはず。有償化すべきと著者は訴えています。
本書を読んでの感想は、五輪批判の運動は、ターゲットを大学生や高校生にすることが必要だということ。
ボランティアは1年前から研修があるので、大学生の動員の中心は2,3年生でしょう。2年後の大学2年生は、現在の高校3年生。きっと体育会系学生が動員されるのでしょう。また、通訳ボランティアも無償なので、外語大学の先生からも、通訳や翻訳業を否定しているとの批判があるそうです。
「ボランティア」とは英語で「志願兵」という意味であり、志願ではあっても「タダ」「無償」という意味はありません。
「一生に一度」「感動を分かち合う」「世界の人々とのふれあい」との言葉で、商業イベントのために搾取されることを、学生に対して宣伝していくことが大きな鍵だろうと感じました。

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