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「自由だから非正規」は誰の本音なのか

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さすが日本資本家新聞。今日の一面トップの大見出しは「『自由だから非正規』4割増」。

8/7に発表された総務省の労働力調査の結果だそうだ。

資本家新聞なので、資本家の意見を代表していると考えると、言葉を付け足しておいた方がいいだろう。

「クビきり『自由だから非正規』を雇っている」と。

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さて、資本家新聞の記事に戻ろう。

非正規職に就いた主な理由として「都合のよい時間に働きたいから」と答えた人の割合が29.9%の592万人となり、5年前よりも44%も増えた、というのがいいたいことらしい。

「正規の仕事がないから」と答えた人は13.1%、259万人で、「家計の補助」や「家事・育児・介護などの都合」などを抑えて、「自己都合」による非正規選択がトップだというのだ。

一面トップ記事としてはやや長いこの記事は、日経電子の版でも全文がみられる。よほど誘導したいのだろう。

資本家新聞の誘導の意図は明らかだが、離職の際の「自己都合」で解雇されるケースと同じように、自己都合などではないことは、記事を読めば明らかだ。

つまり1)少なくともこの5年間で、正規職をあきらめさせる攻撃を続けてきたから、2)正規職はますます自分の時間が自由に取れなくなっているから、ということが言える。より詳細に分析し、現場の声をくみ上げれば、さらに「自己都合」という名の強制であることがハッキリとするだろう。

1)については、「この5年で24%減ったとはいえ『正規の職員・従業員の仕事がないから』非正規で働く人も259万人いた」という記述を見れば十分だろう。

どのように正規職をあきらめさせてきたのか。ひとつには入口を絞ること。ふたつにはいったんは正規で入れて散々こき使って辞めさせる、というものだ。後者については、記事でも紹介されている酷い正規職の労働環境からうかがい知れる。

「リンガーハットはパート店長を20年に現在の約5倍の150人にする。店長には時給を25~50%増やし、月に3万5千円の手当も付ける。正社員店長は通常2~4店舗を担当するがパートは原則1店舗。就労時間も短く、転勤もない。」

つまり正社員店長は、就労時間も長く、転勤がある。これでは長く勤められないだろう。自然と「自己都合」の非正規が増える。

「勤務時間を自由にできるのも非正規の魅力だ。スーパーのいなげやは平日しか働けない人も積極的に採用。『働く人の都合に合わせて人手確保につなげたい』と成瀬直人社長は話す。」

つまり正社員は土日はもちろん、平日も休日出勤やサービス残業がある、ということだ。自然と「自己都合」の非正規が増える。

正規雇用の労働者が「都合のよい時間に働きたい」条件に合わない=長時間労働や有休未消化などから、「自己都合」で非正規職を選んでいるのではないか。

「働き方改革」関連法案の国会通過後すぐに、正規職の就業時間をフラットにする案が雇用側から提案されているという。しかし絶対的な過密労働を解消するための正規雇用の拡大を抑制したままでの「働き方改革」は、「自己都合」のサービス・風呂敷残業の蔓延に拍車をかけるだけである。

いま読んでいる『怠ける権利!』(小谷敏、高文研、2018年7月)によると、ラファルグもラッセルもケインズも、一日3~4時間程度の労働で世界中の人々の生活需要のための生産は充分足りる、と語っていたという。

長時間過密労働による大量生産大量浪費システムが地球規模の環境危機を引き起こしている今こそ、彼らの思想はさらに注目されるべきだろう。

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資本家新聞は最後の方でもまた例の本音を吐露している。

「しかし非正規は安全網がまだ脆弱だ。08年のリーマン・ショックで景気が急激に悪化すると、製造業の期間工らの雇い止めが相次いだ。」

忍び寄るアベノバブルの破綻の足音を前に、雇う側の安全網としての非正規雇用をさらに拡大すること、そのためには「同一労働同一賃金の徹底で正規・非正規の格差をなくしつつ、人材の流動化を進めていくことが地道な解決策だ」という金融バブルの受益者のコメントを最後に紹介して記事は締めくくられている。

冒頭に述べた「クビきり『自由だから非正規』を雇っている」という戯れ言も、あながち的外れではないようだ。

ちなみにお隣中国では、正社員でもカネさえ払えば解雇は事実上自由という、日本をしのぐ資本家天国に数億の労働者が呻吟している。これが世界の雇用状況に巨大な競争圧力となっていることも指摘しておきたい。

労働者の血で描かれた国境を労働者の国際連帯で洗い流そう。

(以下、日経新聞の記事)

「自由だから非正規」4割増 
労働力調査 賃金・待遇も改善
日経新聞2018/8/8朝刊
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO33911590X00C18A8MM8000/

 働く時間の自由度を求めて非正規雇用を選ぶ人が増えている。総務省によると、4~6月時点で「都合のよい時間に働きたいから」非正規で働く人は592万人で、5年前から44%増えた。人手不足を受け、賃金が上昇したり厚生年金に加入できたりと待遇改善が進んだことが大きい。企業は働き方改革を急ぐが、非正規・正規ともに多様な働き方の実現にはなお課題が残る。

◎多様な働き方なお課題

 総務省が7日発表した4~6月の労働力調査(詳細集計)によると、パートや派遣社員といった非正規雇用は前年同期より4%多い2095万人だった。

 非正規で働く主な理由は「家計の補助・学費等を得たいから」「家事・育児・介護等と両立しやすいから」などを抑え、「自分の都合のよい時間に働きたいから」が最も多く全体の約3割を占めた。ただ、この5年で24%減ったとはいえ「正規の職員・従業員の仕事がないから」非正規で働く人も259万人いた。

 非正規雇用が増えている理由のひとつは人手不足を背景にした待遇の改善だ。企業は、正社員よりも転職が活発な非正規の賃金を引き上げてきた。6月の毎月勤労統計調査によると、パートタイム労働者の時給は1.8%増で、正社員ら一般労働者の所定内給与は0.9%増にとどまった。

 非正規の賃金上昇ペースが正社員を上回り、その差は縮小している。厚生労働省の賃金構造基本統計調査によると、2017年の非正規の賃金は正社員の66%で5年前より4ポイントも上昇した。

 リンガーハットはパート店長を20年に現在の約5倍の150人にする。店長には時給を25~50%増やし、月に3万5千円の手当も付ける。正社員店長は通常2~4店舗を担当するがパートは原則1店舗。就労時間も短く、転勤もない。

 また、少数だが人工知能(AI)の開発など専門スキルを持ち、月収数百万円という非正規もでてきている。

 勤務時間を自由にできるのも非正規の魅力だ。スーパーのいなげやは平日しか働けない人も積極的に採用。「働く人の都合に合わせて人手確保につなげたい」と成瀬直人社長は話す。

 「派遣でもやりがいがあり時給もよい仕事が増えた。定時に帰れて家庭と仕事を両立できる今のほうが、正社員の安定よりも魅力的」。広告会社の管理職だった女性(40)は昨年、ウェブコンサルティングをする派遣社員に転じた。

 非正規の弱点だった将来の保障も充実しつつある。パートタイムの非正規も16年10月、従業員501人以上の企業のうち、労働時間が週20時間以上、月収が8万8000円(年収約106万円)以上などの要件を満たす人を厚生年金保険に加入させるよう、適用の対象が広げられた。

 厚生労働省によると18年3月時点のパート労働者の加入者数は38万2841人と、想定の25万人を大幅に上回った。保険料は労使折半。日本総合研究所の山田久主席研究員は「企業は保険料負担より労働力確保を優先している」とみる。

 しかし非正規は安全網がまだ脆弱だ。08年のリーマン・ショックで景気が急激に悪化すると、製造業の期間工らの雇い止めが相次いだ。人材投資も正社員に偏りがちだ。

 一方、正社員も、時間でなく成果をもとに賃金を決める脱時間給制度(高度プロフェッショナル制度)などが自由な働き方の一つとして期待されるが、まだこれからだ。

 みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミストは「同一労働同一賃金の徹底で正規・非正規の格差をなくしつつ、人材の流動化を進めていくことが地道な解決策だ」と指摘する。
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