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「進んで奴隷になれ」と叫ぶギリシャ中銀総裁

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▲処刑されるスパルタコス反乱軍


先日の金融cafeのあとの金融barでは、ギリシャの不当債務のビデオをみました。

ギリシャの不当債務を調査していたギリシャ国会の特別委員会がつくったもので、15分ほどで短く分りやすいのですが、欧文字幕しかないので日本語字幕もつけましょう、ということに。完成した暁には、さきに日本語翻訳がおわっていた「ギリシャ不当債務監査(暫定)報告書」とあわせて学習会などができたらいいですね、とも。

この日の金融cafeであつかった『不当債務』(フランソワ・シェネ著、作品社)の日本語版解説(芳賀健一さん)の個所のレジメをきってくる予定だったのですが、前半の日本の財政赤字と政府債務の累積の箇所しかできず、後半のギリシャの債務危機と「棒引き」の現実性の個所はできませんでした。参加されたみなさんには、あとでその個所のレジメとおまけファイルを送りたいと思います。

芳賀さんの日本語版解説のなかで、上記のギリシャ国会の報告書の話が出てこないなぁと思っていたのですが、ありました。227pの注10の一番最後の「さらにギリシャ議会に設置された委員会の暫定報告書(Truth Committee on Public Debt(2015),p.35)も参照されたい」がそうです。こりゃ見逃すわ…。とまれしっかりと参照されているようでよかったです。

さて、とうのギリシャ債務ですが、このかん日経新聞ではトロイカによるギリシャ支援からの「卒業」に関する記事が何度か掲載されていましたので、適当に端折って紹介しておきましょう。

◎ギリシャ追加融資承認 ユーロ圏8800億円 国債市場復帰にらむ(2018/3/28日経)
欧州安定メカニズム(ESM)が27日にギリシャに67億ユーロ(約8800億円)の追加融資枠を設けることを承認。ギリシャは大半を債務返済の原資に充てる。8月に期限を迎える現行の第3次金融支援からの「卒業」もにらみ、国債市場復帰のために必要な下で資金の積み増しに回す。今回の追加融資枠は15年夏に合意した3年間で最大860億ユーロを支援するという第3次金融支援の一環。まず57億ユーロの融資を今月28日に実行、のこり10億ユーロは5月以降に融資する。ギリシャが約束していた改革案を実行に移したことで追加支援。今回の67億ユーロが実施されると第3次支援の実行額は459億ユーロに達する。(第3次支援の枠は860億ユーロ)

◎金融支援「8月卒業」へ協議 ギリシャ、ユーロ圏と開始(2018/5/25日経)
24日にユーロ圏財務相会合でギリシャの「卒業」にむけた準備作業を本格化させる。8月期限の第3次支援の後は、自力再建に軸足を移す。支援終了後も債務返済を確実にするための枠組みを6月の同会合で合意したい考え。チプラス首相も「完全な脱却」を掲げ、ユーロ圏も第4次支援は避けたい考え。新たな国民負担を伴う支援を実施すれば、1年後の欧州議会選挙で「反EU」を掲げるポピュリズム勢力に追い風を与えかねない。過去の卒業国には年二回の定期的な政策監視だったが、ギリシャには年4回程度の案を検討中。主要格付け会社によるギリシャ国債の格付けは投資不適格級(ジャンク債)のまま。ギリシャの債務軽減策をめぐる協議も難航が予想される。債務残高は17年末でGDPの179%の3174億ユーロ(約41兆円)で、IMFは持続不可能とみており、ユーロ圏も17年6月に第3次支援が無事に完了すれば債務軽減に応じると約束していた。


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さて、昨日(6月5日)にもギリシャ中銀総裁のヤニス・ストゥルナラス氏へのインタビューが掲載されていました。おもにはイタリアやスペインの政情不安から南欧関連の債券が不安定化するのでは、という懸念からのインタビューですが(もちろんそれはそれでattac的には重要です。しかもスペインの場合は、少数与党の社会労働党にpodemosがどう対応するのかなど興味はあるのですが)、もちろんギリシャ情勢それ自体も扱っています。ヤニス氏の紹介では「経済学者出身で政府にも手厳しい」とあったので、ちょっとは期待したのですが、ぜんぜんダメでした。最後の個所を紹介します。うしろにコメントを付けました。

(以下、インタビューの最後の箇所)

――ギリシャは自力で起債できるのでしょうか。
「ギリシャ経済は好転したが、なお債務は多く、国債の格付けは投資適格を下回る。ギリシャ政府は(返済原資の)現金バッファーを積み立てることを決めたが、これに加えて欧州安定メカニズム(ESM)に(緊急時のための)予防的融資枠を求めるのが望ましい」
「ギリシャ政府はユーロ圏に残留するための努力を惜しんでいない。国家、そして政権の存続のため、方針を転換した。これは評価してもいいだろう。」

――信認回復したと言いきっていいのでしょうか。
「何ともいえない。徴税機能は高まったし財政収支はプラスに転じた。銀行を整理・増資し、規制緩和に踏み込んだ。だがエネルギー市場の自由化や公的部門の改革などが必要となろう。民営化もすすめるべきだ。」
「自ら構造改革を断行するんだという気概を持つのが大切だ。ギリシャでは多くの政治家が構造改革はEUなどから押し付けられたものだと論じている。自らの意志がないと再び無責任な放漫財政という古い因習にとらわれてしまう。」

(以上、インタビューの最後の箇所)

ヤニス氏はIMFやEUからギリシャへの支援(融資)は、庶民の生活を救済するためではなく、債務危機を引き起こした張本人(独仏銀行→債務は政府に付け替えられ公的債務になっている)らへの返済金に充てるために使う。そして住民投票でトロイカ案OXI(NO)が多数を占めたにもかかわらず、その翌日に(実は投票前から)トロイカ案受け入れをチプラス・シリザ政権は発表したが、「これは評価してもいい」としているのである。

「民営化」発言はもうそのままIMFの構造改革というネオリベの見解だ。「自ら構造改革を断行するんだという気概をもつ」とか「自らの意志」というのもひどい話で、たしか以前トロイカを批判するドキュメント映像「奴隷のように生きるのはやめる」というのをattacの事務所で観たが、IMFの債務や資本主義システムは現代の奴隷制度だという内容だったかな。

ヤニス氏のこの発言は、自ら進んで奴隷になることを勧めている。自発的に奴隷になれば奴隷ではないとでも言うように。さらにひどいのは、こちら(https://www.bankofgreece.gr/Pages/en/Bank/Organization/governingbodies/stournaras.aspx)の紹介によるとヤニス氏は80年代中ごろからギリシャ金融政策の中心で活躍し、ギリシャのユーロ加盟にも尽力し、公的債務管理庁のボードメンバーでもあったようですが、たしかこの公的債務管理庁はゴールドマンサックスからの天下りが長官を務めて、ギリシャ財政赤字の粉飾とそれを利用した投機に手を染めていた。

当時のヤニス氏の役職と責任については不明だが、すくなくとも「無責任な放漫財政」のシステムの中心にいた一人であることは間違いなく、そのような人間が「自ら構造改革を断行するんだという気概を持つのが大事」などということを、信じられるだろうか?かつての行いを悔いて、放漫財政で潤った富裕層から収奪するのならまだ話はわかるが、けっしてそうではないし、ネオリベ構造改革によって収奪した富を、危機をつくりだした張本人たちに差し出すのだから、まったく説得力がない。

不当な債務は帳消しにすべきだ。
奴隷のように生きるのはやめよう。
世界中のスパルタコスたちはまた反乱する。

◎ドキュメンタリー「奴隷のように生きるのはやめる!」


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