
向かって右列奥が新浪剛史サントリー社長
昨日の運営委員会でも紹介しましたが、アベノミクスの3%賃上げについて、経済財政諮問会議の民間委員の新浪剛史社長(サントリー)の考えを紹介しました。
「賃上げ幅の目安は安倍晋三首相が求めた3%だが、定義はまちまちだ。新浪剛史社長は研修費などを含めて3%賃上げを目指す。」(日経新聞2018/3/5朝刊)
あほか。
研修費はそもそも企業が労働者の生産性をあげてより搾取するための投資であり、なんでそれを「賃上げ」に含める。かりに研修費を含めるのであれば、それは賃上げではなく明々白々な賃下げです。いままで企業が負担していた物を労働者に負担させる計算になるのですから。
これに続くBNPパリバ証券の河野龍太郎氏のコメントもひどい。「実質賃金が低迷している最大の要因は生産性の伸び悩み」
生産性とは、まるっといえば、労働者が生産する付加価値のことですが、労働者の生計や世代継続に必要な費用を差し引いたものです。つまり賃金を下げれば生産性はあがる計算になる。「生産性をあげて付加価値をふやせばパイがふえて賃金も上がる」というのはまやかしで、賃金があがっても、それ以上に企業が搾取したり、生計費がかかってしまったら実質的には賃金は下がっていることになります。また企業の利益の根源は、自然と労働からの搾取ですから、生産性が上がり企業の利益が上がるということは、搾取が強まっていること。
実際に、3/2日経朝刊(5面)では資本金10億円以上の大企業の労働分配率は2012年末(安倍政権発足)の51%弱から2017年末の43.9%に下がり続けています(15年の一年間だけは挙がった→選挙対策)。
極めつけは、「裁量労働制拡大 先送り」「生産性向上 遠のく」という同3/2日経朝刊(5面)の記事です。ヒドイというよりもホントのことです。裁量労働制という資本の裁量で賃金を払わないというタダ働きをさせることができる法律が先送りになったので、生産性向上という名の労働者からのいっそうの収奪が遠のいた、ということなのですから。
日本資本家新聞は、このかんの裁量労働制をめぐるデータ問題を追及する野党に対して、「本質の議論をすべき」と批判しています。
同じ3/2の社説では次のように述べています。
「国会での裁量労働制の論議が不適切な調査データの問題にばかりとらわれているのは、おかしなことだ。時代の変化に合わせた労働法制のあり方をどう考えるか、という本質的な議論にこそ力を入れるべきではないか。」
その通りだと思います。裁量労働という超搾取のシステムの本質的な議論にこそ力を入れるべきです。そのためには正確なデータと現場労働者や過労死被害者遺族の声(殺された人は発言できません!)が最大限重視されるべきではないか。
資本家新聞は正直です。社説は続けてこう言っています。
「時間をかけて働くほど賃金が増える現在の制度には、働き手自身の生産性向上への意識が高まりにくいという問題がある。戦後、長く続いてきた仕組みだが、国際的にみて低い日本のホワイトカラーの生産性を上げるには制度の見直しが不可欠だ。」
そう、これからは「残業しても賃金はあがらない」という仕組みの生産性向上に取り組むので、労働者はそれを覚悟しなさいよ、と諭しているのです。
社説は続けます。
「社会のこうした変化(AI導入など)に備える改革が、裁量労働拡大であり、成果をもとに賃金を払う『脱時間給』制度の創設である。」
本質的なはなしをすると、ここで言われている「成果」とは、タダ働きで利益を生み出すという成果をもとに賃金を支払う、ということ。
そして資本家新聞の社説は最後に、我慢しきれずに正直に吼えています。
「そもそも裁量労働制は、働く時間の短縮を目的とした制度ではない。」
はい、そうです、「生産性向上」という一層の搾取が目的です。
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以下、参照文書
◎サントリー、3%賃上げへ 新浪社長「減税措置生かし社員に還元したい」(産経2017.12.21)
◎裁量労働拡大をいつまで先送りするのか(日経2018/3/2社説)
◎経済財政諮問会議(内閣府)
2018年会議・資料一覧
2017年会議・資料一覧
2020年東京オリンピック・パラリンピック前後の経済運営について(諮問会議民間議員2018/2/20)
経済財政諮問会議議員名簿
議長 安倍 晋三 内閣総理大臣
議員 麻生 太郎 副総理 兼 財務大臣
同 菅 義偉 内閣官房長官
同 茂木 敏充 内閣府特命担当大臣(経済財政政策)
兼 経済再生担当大臣
同 野田 聖子 総務大臣
同 世耕 弘成 経済産業大臣
同 黒田 東彦 日本銀行総裁
同 伊藤 元重 学習院大学国際社会科学部教授
同 榊原 定征 東レ株式会社 相談役
同 高橋 進 日本総合研究所理事長
同 新浪 剛史 サントリーホールディングス株式会社 代表取締役社長
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