
『THE BIG ISSUE』は、仕事で通りがかるところで買うことが多いのだが、通りすがりに売っているときにも買うことがある。
タレントや著名人の大きな顔写真の印象が強い表紙だが、最新号(320号・2017年10月1日号)は大きなお月さまのイラストに「WELCOME夜間中学」と書かれた表紙。(こちらの公式サイトから夜間中学特集の目次や概要が読めます)
もちろんソッコーで買った。ページをめくると、夜間中学増設運動でよく拝見する先輩方の笑顔が、教室に通う生徒さんと一緒に写っている。ここ数年、夜間中学の増設に大きな動きが見られ始めたこともあるだろう、たいへん魅力的だ。この動きには前川喜平・元文科省事務次官らの尽力もあったようだ。
偶然だろうか、ボランティアで通っている自主夜中には、少し前から新しい生徒さんが来はじめ、今日は今日で仕事で忙しくてしばらく離れていた生徒さんが久しぶりにやってきて、すこし忙しかった。『THE BIG ISSUE』の表紙と同じような中秋の名月に照らされる帰り道、「がんばってるなー、がんばらんとなー」と思いながら帰ってきたのだった。
で、すこしたまった雑誌や新聞を整理していると、前号の『THE BIG ISSUE』319号(2017年9月15日号)に目がとまった。『THE BIG ISSUE』を買っていつもまっさきに読むのは「浜矩子の新ストリート・エコノミクス」なのだが、なぜかその号は読まずにいたので、何気なくページを開いてみた。
すると第47回目の浜矩子さんの連載は「150年前に解明されていたこと」というタイトル。書き出しは「1867年、かの『資本論』の第一巻が刊行された。」からはじまっているではないか。
これまで浜矩子さんのこの連載には失礼な感想を書いてきたが、今回は「浜矩子先生」というにふさわしい素晴らしい内容だったので、ぜひとも皆さんと共有したいと思う。
浜矩子先生はこう綴っています。
「資本論は、資本主義的な生産体制に関する理論研究と実証分析の書だ。当時における工場労働の実態を、生々しく描出している。その意味で、一つのドキュメンタリー・ドラマを構成しているといってもいい。」
「そこには、資本が労働を生産手段として使う中で、いかにして収益を絞りだしていくかというメカニズムについて、あますところなく看破しようとする情熱と気概がみなぎっている。」
ここからが、さらにすばらしい。
「ごく最近、資本論第一巻第12章を精読した。そして驚くべきことを発見した。そこには、労働生産性への言及がある。前々回の本欄で、生産性の上昇は賃上げにつながるのか、労働コストの削減につながるのか、という問題を考えた。この問題に対するマルクス先生の答えは明快だ。」
浜矩子先生はマルクスが資本論で「生産性の上昇は賃金の上昇をもたらさない」、「資本は向上した生産性でさらに多くの生産物を生み出すことを求めるだけ」、「(資本は生産性上昇による)新たな収益をすべて自分のものにしてしまう」と述べたとわかりやすく説明する。
そして最後にこう提言する。
「150年前に見抜かれたこの力学を、今、我々は再認識する必要がある。今こそ、特に労組の幹部のみなさんが、資本論第一巻第12章を熟読すべき時だろう。この章は結構、読みやすいし。」
浜矩子先生ブラボー!マルクス先生ブラボー!ついでにエンゲルス先生ブラボー!
本棚の『資本論』を開いてみると、第一巻12章は「分業とマニュファクチュア」。別の資本論・再入門学習会で学んだばかりの個所だった。浜矩子先生やマルクス先生には申し訳ないが、まだ原典を読んだことがない。この機会に精読してみよう。
『THE BIG ISSUE』はバックナンバーもあわせて街頭で販売しています。
ぜひ購入して全文を読んでみてください。
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じつは自主夜中では「せんせい(先生)」と呼ばれることが多い。
ひらがな表記なのは、なんとなく漢字よりもひらがなのほうが、ぴったりくるからだ。つたない日本語でいわれているせいもあるだろうがい、自主夜中特有の、教える方も教えられる方も、ともに学びあうということもあるからだろう。
「せんせい」とよばれるたびに、「○○さんでいいですよ」と言ってはいるのだが、日本語学習者にはすこし発音しにくい名前のようで、すぐに「せんせい」に戻ってしまう。
社会の不正や学究に対する浜矩子先生の非常に真摯な態度にくらべらた、とてもじゃないが「せんせい」などと呼ばれる筋合いではますますない。国会やその周辺にはおかしな「先生」が沢山いるし、めっそうもない。やっぱり「○○さん」と呼んでもらうよう徹底しよう。
「せんせい」と呼ばれていいのは、プロレタリアだけだし。
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