どろぼうがっこう--日経新聞コラム「消費税問答を採点する」

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40年以上にもわたって子どもたちに読み継がれてきた絵本に『どろぼうがっこう』(かこさとし作、偕成社)がある。校長のくまさかとらえもん先生と、ちょっと間抜けなどろぼう見習いの学生たちの物語だ。「ぬきあし さしあし しのびあし どろぼうがっこうの えんそくだ それっ!」というセリフを声をあげてリズミカルに読んだ記憶はいまだ鮮明だ。数年前に、続編『どろぼうがっこう ぜんいんだつごく』、『どろぼうがっこう だいうんどうかい』も発売されており、その人気の根強さに驚かされる。

さて、日本(資本家)経済新聞のマーケット総合のページには、「大機小機」というコラムがあり、たまに鋭い内容が掲載されるのだが、9月20日は「消費税問題を採点する」と題して、消費増税に関する教師と学生の架空の授業の様子が描かれてる。

この授業の会話をよめば、昨日紹介した『不当な債務』の芳賀健一さんの解説を解くまでもなく、僕たちが考えていることと正反対の、つまり日本(資本家)経済新聞の主張が極めて分かりやすく述べられていることがわかる。

そしてこの内容は、かこさとしさんの描くちょっとお人よしのくまさか先生と生徒たちのほのぼのとした授業風景とは異なる、まさに労働者から搾取して成り立っている資本主義の「どろぼうがっこう」の授業風景そのものである。

以下、引用する。

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消費税問答を採点する(コラム「大機小機」)
日本経済新聞2017年9月20日朝刊、19面

教師:消費税率の引き上げについての考えを順番に述べなさい。

学生A:むしろ税率を下げるべきです。家計所得が増え、経済が活性化して財政再建にもプラスです。自民党の若手議員がそう主張しています。

教師:税率を下げれば財政赤字が減るといううまいはなしはないね。君は「ただ[無料]の昼飯はない」という経済の大原則を理解していない。成績はD(落第)だ。

学生B:10%への引き上げは中止し、もっと経済状態が良くなるのを待つべきです。民進党代表選に立候補した枝野幸男氏がそう主張していました。

教師:日本は今、戦後2番目に長い景気拡大局面にある。最新データを踏まえていないので成績はCだ。

学生C:消費税を10%に引き上げ、増収分はすべて社会保障や奨学金などの充実に使うべきです。増税が生活にプラスだということが分かれば、国民も理解するはず。民進党の前原誠司氏がそう言っていました。

教師:増収分を全て使ってしまったら財政は全く改善しないから、何のために消費税を上げるのか分からなくなってしまうね。増税から逃げない姿勢は評価するが、君は日本の財政の深刻さを十分理解していないようだね。成績はBだ。

学生D:予定通り2019年10月に10%に上げ、増収分はできるだけ財政再建に充てるべきです。再び増税を先送りすれば、財政不安は増大し、将来そのツケが自分たちに回ってくるのでは、と不安になります。先日のインタビューでも安倍晋三首相は予定通りの内容で消費税率を引き上げると言っていました。

教師:その通りだ。安倍首相が考えを変えなければ、首相も君も成績はAだ。

学生たち:では、どんな答えならAプラスをもらえるのですか。

教師:これから先の財政を展望すると、消費税率を10%に引き上げても厳しい状況には変わりがないんだ。社会保障を中心に歳出を削減するとともに、少なくとも消費税率を15%へとさらに引き上げる必要がある。そう答えれば成績はAプラスだね。

学生たち:でも、そういう主張をするような政党はありませんよ。

教師:そうだね。それこそが財政再建を進める上での最大の問題なんだよ。

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以上、引用。

どうだろうか。

学生Aに対して「ただの昼飯はない」という経済の大原則をふりかざすどろぼう教師は、学生Bに対して「日本は今、戦後2番目の景気拡大局面」と説教を垂れながら、もうひとつの経済の大原則である「景気拡大のピークでは金融政策は引き締める」ということにはまったく触れようとしない。まさに「ただの昼飯」(異次元緩和)を食い散らかしているどろぼう(資本家)の先生にふさわしい授業内容だ。

森友学園や加計学園疑惑など、まさに「税金どろぼう学校」といっていいほどの問題の国会での追及こそが必要だが、もちろんこのどろぼう先生やどろぼう新聞はそんなことにはまったく触れようとはしない。

それは置くとしても、消費税について『不当な債務』の解説で芳賀健一さんはこう述べている。

「1990年度の所得税、法人税、消費税はそれぞれ26.0兆円、18.4兆円、4.6兆円であったが、2015年度は17.6兆円、11.7兆円、17.1兆円へと変化し、逆進性の高い消費税が直接税の減少をカバーする構図を鮮明にしている。」(213頁)

芳賀さんの主張は昨日も紹介したように、財政再建は必要であり、それは消費増税ではなく、所得税の累進性を80年代並みに戻すことで実現すべきだと説く。まだ見たこともないもうひとつの世界を目指すグローバルな社会運動の学校ではA評価をもらえるだろう。

さらに、こんな授業風景も聞こえてきそうだ。

学生たち:ではどんな答えならAプラスをもらえるんですか。

教師:2010年にattacフランスがまとめた「金融取引税:よくある質問とそれに対する回答」では以下のように述べ、金融機関に負担させるために金融取引税(為替取引税)を主張している。こう答えれば成績はAプラスだね。

「新しい財源が緊急に必要なのです。国家は新たな財源調達手段を緊急に必要としています。財政赤字を削減し、景気浮揚と社会保障のための財源を調達する必要があります。……各国・大陸・世界レベルで富の再分配に着手し、その負担を金融部門に担わせる必要があります。金融が引き起こした危機のせいで増大した失業や雇用不安というツケを市民が支払うなんて、そもそも受け入れ難いことです。財政再建の負担が市民に回されることはなおさらです。」


金融取引税:よくある質問とそれに対する回答(attaction)

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しかし、収奪者が収奪される社会を目指す、真の義賊の学校では、教師は次のように教えるだろう。

「民主主義者の提議を極度にまでおしすすめ、それを私的所有にたいする直接の攻撃にかえなければならない。たとえば、小ブルジョアが鉄道や工場を買いあげることを提議したら、労働者は、これらの鉄道や工場を反動派の財産として国家の手であっさりと、また無償で没収すべきことを要求しなければならない。民主主義者が比例税を提議したら、労働者は累進税を要求する。民主主義者みずから穏健な累進税を提議したら、労働者は大資本を破滅させるほど急激に高くなる率の税を主張する。民主主義者が国債の整理を要求したら、労働者は国家の破産を要求する。このように、労働者の要求はどこでも民主主義者の譲歩と方策の程度に応じてさだめられなければならないのである。」―――マルクス、エンゲルス「1850年 3月の中央委員会の呼びかけ」より
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