為時未晩 ~ 香港映画 「十年」



新宿K’s cinemaで公開中の「十年」を観た。「浮瓜(エキストラ)」、「冬蝉」、「方言」、「自焚者(焼身自殺)」、「本地蛋(地元の卵)」の五つの短編をまとめたオムニバス。雨傘運動から10年が経過した未来の香港を描いている。
・「十年」 公式サイト http://www.tenyears-movie.com/

2015年11月の香港公開当初は、中国政府の意向を忖度した映画館が相次ぎわずか1館のみで上映。口コミで評判が広がり、2016年4月には香港のアカデミー賞といわれる香港電影金像賞で最優秀作品賞を受賞した。もちろん中国国内では上映もされていないし、その報道すら検閲対象になっているという。

それぞれの作品の内容はぜひ本編を見てもらいたいが、それぞれの作品の感想を少し。

浮瓜(エキストラ)
香港市民の反対の根強い「国家安全法」の法制化をもくろむ中国政府と香港政府の政治家が、香港の「黒社会」をつかってテロ事件を画策するという話。やや突拍子もないフィクションと思えるかもしれないが、中国政府と香港の「黒社会」との関係は公然の秘密であり、国家安全法の法制化も常に問題になっている。テロ実行犯の下層労働者階級や移民系住民が、十分な社会福祉を欠いた自由放任の「一国二制度」下で強制される境遇が語られるシーンに注目してほしい。中国語タイトルの「浮瓜」は、海難事故に遭った肉親をさがす際に瓜を海に投げてその浮き沈みで肉親の生死を占う中国の伝統的な方法から、現在の浮き沈みする香港をイメージしたそうだ。

冬蝉
僕にはやや難解な設定だが、資本主義大国中国から怒涛のように押し寄せる巨大マネーが香港の街並みを変えていくのは、現在進行形の話。そこで失われていくのは庶民の日常である。その現状を近未来的に描いた作品。

方言
ややコミカルな作品に仕上がっているが、こちらも「浮瓜」とおなじく労働者階級を描いた作品だ。北京語(「普通話」)と広東語の違いがわかれば、描かれている皮肉もよりわかりやすい。あさ学校に通学する時には広東語で父親と話していた子どもが、下校の時には北京語で父親に話しかける。

自焚者(焼身自殺)
雨傘運動からの10年後が直線的に描かれている作品。ハンストは雨傘運動の終盤でのエピソードを彷彿とさせる。描かれているのは「香港独立派」の活動家であるが、「独立派」のなかでも、「武闘派」との違い(「憎しみではなく希望を」)が描かれていることに注目。文革・天安門事件の目撃者、という老人は中国本土出身者という設定だろうか。だとすれば中国における民主化運動にもわずかながらに触れられているという点で高く評価できる。雨傘運動の金鐘オキュパイが終わった翌日に学聯が香港市民に向けて発した声明「暗闇の中で光明を探し尋ねる」(2014/12/12)を思い出した。

本地蛋(地元の卵)
言葉狩りの「紅少兵」など、すこし突拍子もないが、子どもたちや青年、つまり未来への希望は失われていない、という監督のメッセージが伝わるようなラストだった。最後に希望のつながるこの作品を持ってきたのは、映画「十年」全体のモチーフである「為時未晩」(まだ手遅れではない)の所以だろう。

もっと深い感想や解説はあるだろうが、それは専門家に任せておいて、ここでは現在進行形の香港の状況を紹介しておこう。

一つは訳したままになっていた今年の7月1日の香港返還20年の民主化デモにさいして民主自決派議員らによって発せられた共同声明だ。そしてもうひとつ、昨年9月の立法会選挙で当選した民主自決派やラディカル民主派の議員ら4人が、議員宣誓での不備を理由に香港政府から資格はく奪を提訴され、香港高裁がそれを認める判決をだしたことで失職が確定。議員会館からの退出期限の7月28日午後5時を前に、退出した4人の議員らについてはまた日を改めて紹介したい(議員資格はく奪についての中国語の記事と写真はこちら。)

7・1共同声明
団結して前に進み、民主の路を継続しよう


今年の7月1日は主権移譲から20年の節目にあたり、新政府[林鄭月娥行政長官]の閣僚らが就任する。それはまさに、現在と未来へのチャレンジを準備するために香港民主化運動が再スタートを切る刻(とき)である。

北京政府による暦年の香港統治の強硬策は、基本法解釈によって香港の法治を破壊し、「全人代8・31」意見によって香港の民主的発展を扼殺し、「基本法」を紙くずに代えてしまい、「一国二制度」「香港人による香港統治」の実現を妨げた。林鄭月娥はまもなく行政長官に就任するが、新しい政府という粉飾をして「実務派」「団結」というイメージを打ち出すことで、梁振英[前行政長官]の影をぬぐい去ろうと考えている。しかし絶え間なく続く政治弾圧(これまでにない政治運動参加者に対する大量起訴、議員資格の停止を求める提訴、治安法「23条」の立法化)という現実を覆い隠すことはできない。

旧来の制度のままでは、香港社会は自由と権利が徐々に失われ、政治・資本家・地方ボス・暴力団の癒着は解決できず、財閥・親中政党・北京政府に傾斜した権力関係を変革することができないだろう。これまで長年にわたって社会運動が実現を目指してきた皆年金制度と労働時間規制の制定および退職金相殺制度の即時廃止、あるいは巨大開発プロジェクトに対する反対、公営住宅の居住権、都市整備の民主化など、今後もひきつづき政治制度改革の実現に取り組み続けるとともに、真の普通選挙、立法会の改革を実現し、権力を人民の手に取り戻す所存である。

厳しい現実があるが、それは民主化運動を停止することなく、堅持し続けなければならいということである。今後は、民主化運動は各イシューに深く分け入り、真の普通選挙という要求を堅持し、北京政府による基本法解釈を通じた香港への干渉に反対しつつ、土地正義[巨大開発による立ち退き反対運動]、労働者の権利、LGBTの権利、環境保護、都市開発における民主化などの運動にも積極的にかかわっていき、民主化運動の視野と力を拡大する。

今後の道がどれほど困難で、度重なる弾圧が待ち構えようとも、民主化運動はこれまでの蓄積を堅持し続けなければならない。7月1日から、われわれは社会の多数の人々と一緒に、今後の大衆運動のチャンスを見逃すことなく、香港の民主化を進めていく。

2017年6月28日

社会民主連線
人民力量
八郷朱凱廸 Chu Hoi Dick
小麗民主教室
香港衆志 Demosistō
工党 LabourParty HK
街坊工友服務處
香港本土 HK First
邵家臻

tenyears.jpg
スポンサーサイト

Comment

Leave a Reply


管理者にだけ表示を許可する