ギリシャ、債務、銀行の国有化

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Googleのウェブ翻訳機能がいまいちスムーズにいかなかったので、しばらくCADTMなど欧米言語圏のサイトを見ていなかったが、最近それが改善されたようだ。

ひさびさにCADTM(債務帳消委員会)のウェブサイトを見てみた。

というのも、今日(4月11日)の日経新聞に、ギリシャ債務に関する英フィナンシャル・タイムズの社説の要約が掲載されていたからだ。ギリシャ支援プログラムという名の借金取り立て案に関して、ギリシャ政府とトロイカとの合意がまとまったことを報じている。

もう一年近くギリシャ債務については情報収集をしてこなかったが、依然として「合意の中核は、ギリシャが追加支援を得るために直ちに所得税と年金の改革に踏み切ることだ」として、ギリシャ民衆を苦しめるプログラムをおしつけているようだ。ギリシャ、ごめん!

一方で、借金取り立てがそれほどスムーズにも行っていない様子もうかがえる。というのもFT紙の社説が、「償還期限の延長と利払いの繰り延べだけに終始すれば、ギリシャの負債は縮小に転じるまで数十年間、膨らみ続きかねない」と警告を発しているからだ。

社説によると、トロイカがおしつける緊縮策が、つねに債務返済のリスクとなっている様子がうかがえる。

そして、債権者のユーロ諸国に対して、

「ユーロ圏諸国の政府はギリシャの債務軽減について、自国の有権者に受け入れさせることができる方法を見いださなければならない。」

と提言している。

もちろん、これはなにもFT紙が急にギリシャ民衆に優しくなったからではない。イギリスはギリシャに対してそれほど債権を持っていないからであり、また支援プログラムのたびごとにギリシャとの間での合意がまとまらないことで、国際金融市場が動揺するからだ。

FT紙の意図ははっきりしている。今回の支援プログラムの合意に対するFT社説の次のコメントをみればわかる。

「先週、支援プログラムの監視団との間で合意がまとまったことは安心材料だ。合意の中核は、ギリシャが追加支援を得るために直ちに所得税と年金の改革に踏み切ることだ。これでギリシャは60億ユーロ以上の債務が返済期限を迎える7月までに追加の金融支援を受ける道が開けるはずだ。課税基盤を広げて年金費用の持続可能性を高めるギリシャ政府の施策は、それ自体が中期的に価値がある。」

つまり、各国政府は自国民に対してギリシャ債務軽減という「国民負担」を納得させ、ギリシャ政府に対しては増税、年金カットを約束させ、滞りなく債務返済を行わせるような合意、つまりは容赦なく債務を取り立てることができるようにせよ、ということだ。だが各国の「国民負担」によって救われるのはギリシャ民衆ではなく、イギリス金融資本をふくむ各国金融資本でしかない。

イギリスは、フランスやドイツに比べて、それほどギリシャにカネを貸し付けていなかったので、少しくらいの「国民負担」であれば、自国民を納得させられるというのも、あるだろう。

つまり、ギリシャ危機によって損をしたくない金融資本が、これまではギリシャから搾り取ってきたが、もう搾り取れなくなってきそうなので、自国民からも搾り取ることで、「債務返済の持続可能性」を担保しようという魂胆だ。

ひどい話だ。

ギリシャ危機の真っただ中で、民衆の怒りが押し上げたシリザ政権の国会議長よって設置された「公的債務に関する真実委員会」が2015年6月に発表したレポートでも、つぎのように述べられ、民間銀行の債務が公的債務として民衆に押し付けられたことを物語っている。

「ギリシャはIMF、ECB、EU委員会によって組織され、前もって計画された一つの攻撃の犠牲者となってきた、そして今もそうだ、と考えている。この暴力的で不法かつ正統性のない、道義を欠いた特命は、私的債務を公的部門に移し替えることをもっぱらの狙いとしていた。」

公的債務に関する真実委員会のレポートでは、このような「暴力的で不法かつ正統性のない、道義を欠いた特命」によってつくられた債務は返済義務がない、と結論付けている。

まったくその通りだ。

もちろんFT紙はこの結論を無視しながら、債務軽減を提言する。

債務取り立ての持続可能性のための債務の一部帳消?

あまりにも都合がよすぎる無いだろうか。

借りたものは返せ?

銀行が金儲けのために貸したカネ、つまり銀行はビジネスに失敗したのであり、それを「国民負担」で銀行に返す方が不当ではないか。

国際金融資本の振り込め詐欺的カラクリはCADTMなどの調査によって次々に明らかにされている。CADTMのサイトには、ごく最近でも、ギリシャ債務と金融資本の問題を考察する論文が掲載されている。英語、仏語、スペイン語だが。

◎Greece: The PSI and the process of bank recapitalization (2012-2016)
民間セクターと銀行の資本再編成(2012-2016)
http://www.cadtm.org/Greece-The-PSI-and-the-process-of

◎Some home truths about banks, pensions and Greek debt
銀行、年金、ギリシャ債務に関するいくつかの腹立たしい真実
http://www.cadtm.org/Some-home-truths-about-banks
(2016年11月に行われた債務監査委員会の会合でのコメント)

◎Banks are responsible for the crisis in Greece(エリック・トゥーサン)
ギリシャ危機に対する銀行の責任
http://www.cadtm.org/Banks-are-responsible-for-the

◎Four reasons why Greece should not have paid the IMF
ギリシャがIMFに返済してはならない四つの理由
http://www.cadtm.org/Four-reasons-why-Greece-should-not
(CADTM)

シリザ政権は屈服したが、ギリシャ債務の不当性についての債務監査は、運動として継続しているようだ。

とくに重要だおともうのは、「ギリシャがIMFに返済してはならない四つの理由」というCADTMインターナショナルの文章の最後に述べられていることだ。

そこでは、債務監査によって非人道的で不当で不正な債務が明らかになったことを受けて、CADTMは債務返済の一方的な中断および中止を提言するとともに、それとあわせて資本移動を厳しく制限するための銀行セクターの社会化、つまり国有化を提言している。

当然だ。それなくして効果的な債務帳消政策をとることはできない。本来は、支援プログラムという借金取り立てプログラムに合意する前に、ギリシャ政府は民間銀行の国有化をしておくべきだったのだ。そうしなければ、トロイカとの交渉の切り札さえも切れないからだ。あわせてユーロからの離脱もオプションとして持っていることで、交渉力はより強化されたはずだ。

しかし当時のシリザ政府は、そのどちらもあらかじめ放棄していた。戦う前から手の内をすべて敵に見せていたのだ。国有化=極左・社会主義派、ととられることを恐れたのか。しかし債務帳消のための銀行の国有化は、社会主義でも何でもない。

むしろ資本主義のほうが、絶え間ない金融危機のなかで、金融機関の国有化に踏み込まざるを得なかったのは、歴史を見ても明らかだろう。しかし権力が資本家政府に握られたままであることから、その国有化は単にツケだけが国有=民衆に押し付けられてきたのではないか。

つまり、不当債務の帳消、銀行国有化、そして国家権力の掌握、というのは国際金融危機を経た現在の社会運動にとって、欠くことのできない具体的なオルタナティブ政策のオプションだ、ということだろう。

日本の場合も同じだ。日銀の金融緩和によって一番恩恵を得たのは、原発事故で死にかけたメガバンクだろうし、いまもまた東芝の巨額債務の処理にそれは効果を発揮し続けている。

日本でも日銀の国債引き受けで膨れ上がる借金の不当性を監査すべきだろう。
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