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AIIBのABC(その1)

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2月5日に横浜で開催した「ADBのABC アジア開発銀行のタテマエとホンネ」のなかで、中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)について八百長レポートしました。三回に分けて掲載します。連載が終わるまではブログの名前も「債務と貧困を考えるジュビリー江東」にしておきます。理由は当日参加した人だけの特定秘密。本企画は全日2月4日のベローさん講演会です(こちら

AIIBのABC

2016年2月5日(日)@横浜
債務と貧困を考えるジュビリー江東

1.AIIBとは何か?
2.AIIBとADB
3.AIIBと民衆

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1.AIIBとは何か?


◎AIIBとは

アジアインフラ投資銀行(Asian Infrastructure Investment Bank、亜細亜基礎施設投資銀行)の略。アジアから欧州への陸と海のシルクロードを中心にインフラ設備への投資をおこなう国際開発金融機関。中国政府が2013年に10月に提唱しました。2015年12月25日設立、翌1月25日に設立総会。一周年を迎えています

本部は中国・北京にあり、発足時点で、加盟国・地域は57カ国(アジア34カ国、欧州18カ国、太平洋2カ国、アフリカ2カ国、南米1カ国)です。設立時の授権資本は1000億ドル。うち中国の出資割合は29.87%でトップです。出資上位国は中国(29.78%)、インド(8.36%)、ロシア(6.53%)、ドイツ(4.48%)、フランス(3.37%)、ブラジル(3.18%)、英(3.05%)です。

この出資額(資本金)ですが、1000億ドルの資本金のうち、アジアの加盟国で75%、それ以外の地域が25%を割り振られ、それぞれの領域でのGDPに応じた割合が割り振られます(それぞれ若干の未分配の割り当てがある)。

議決権ですが、IMFや世銀、ADBなど他の国際開発金融機関とおなじように、「一ドル一票」つまり、出資額に比例します(このほか基礎議決権や、AIIBの場合にはさらにADBにはない創設メンバー議決権があり、単純に出資額に正比例するわけではない)。中国の議決権は26.06%でトップです。

◎AIIBのミッションとは

その名の示すとおり、アジアのインフラ建設の資金需要に対応した国際金融機関です。中国政府が2013年から提唱し始めた一帯一路(陸のシルクロードの経済帯と海のシルクロード)という中国の国家成長戦略とも対応しています。

一帯一路とは、中国の西安から新疆ウィグル自治区を経て、中央アジアから欧州に続く経済ベルト(一帯)と、上海から香港、南中国海を経て、インド洋、アフリカ東岸から北上し、ペルシャ湾を抜けて、ギリシャから欧州へと続く海路のことです。それは国内の過剰資本対策とエネルギーの高度の外部依存に対応した長期政策でもあります。

現在、AIIBの重点領域は、エネルギーと電力、交通と通信、農村および農業インフラ、上下水道、環境保護、都市開発および物流に関するインフラ整備です。発足から一年間で9件7カ国17億ドル余の融資を決定しています。

◎事業の中身

日本の報道では、ADBの10分の一程度しかないとか、実務を担う人材が不足しているなど、ネガティブな報道しかありませんが、まだ発足一年やそこらの赤ん坊が、いきなり50歳のADBと同じ規模の事業ができるわけがありません。

後で述べますが、AIIBはADBや世銀などの業務に精通した国際開発金融のベテランがトップに就任し、ADBやWBなどとの協調融資を通じて、経営規模を拡大していくことになります。

AIIBの初年度の事業ですが、分野別にみると、

・道路:パキスタン1億㌦、タジキスタン2750万ドル
・スラム再開発:インドネシア2億㌦
・水力発電:パキスタン3億㌦
・天然ガス火力発電:ミャンマー2000万ドル
・天然ガスパイプライン:アゼルバイジャン6億㌦
 [以上協調融資]
・電線:バングラディシュ1.6億㌦
・港湾施設:オマーン2.6億㌦
・鉄道:オマーン3600万ドル

以上、総額17億3000万ドル(承認ベース)になります。

◎AIIB初代総裁:金立群

設立の総会で総裁に選出された金立群氏は、中国財務省で80年代から国際金融畑で経験を積んできたベテランです。これまで中国政府の世銀、ADB担当などを歴任し、88~93年に世銀副執行理事、03~08年にはADB副総裁。その後、08~13年に中国投資公司(政府系ファンド)監理長、13~14年に中国国際金融公司(中国建設銀行とモルガンスタンレーの合弁会社の投資会社)会長。14年からAIIB創設準備の中心として活動、初代の総裁に選出された。

副総裁には、Joachim von Amsberg(独)、Luky Eko Wuryanto(インドネシア)、D. J. Pandian(インド)、Danny Alexander(英)、Kyttack Hong(韓国:休職中)が選出されています。それぞれ国際開発金融やグローバル金融市場のベテランをそろえています。

◎資本の輸出

AIIBやADBなど国際開発金融機関の役割とは何なのでしょうか。AIIBは、一帯一路のところでも述べましたが、対象地域のインフラ整備を通じて中国国内の過剰資本の投資先を準備する金融ツールです。

金融の国際化を分析した古典であるレーニンの『帝国主義』の「第四章 資本の輸出」から、すこし関係する個所を紹介しましょう。

「自由競争が完全に支配していた古い資本主義にとっては、商品の輸出が典型であった。だが、独占が支配している最新の資本主義にとっては、資本の輸出が典型となった。」

独占によって「資本の過剰」が生じるが、「資本主義が資本主義としてとどまるかぎり、資本の過剰は、その国の大衆の生活水準をひきあげることには用いられないで――というのは、そうすれば資本家の利潤を引き下げることになるであろうから――国外へ、(過少資本、低賃金、低地価の)後進諸国へ資本を輸出することによって利潤をひきあげることに用いられるだろう。」

つまり、国内の過剰資本による利潤低下を補うための資本の運動ということです。

もうひとつ、融資の裏側の債務についても、レーニンはこう述べています。

「金融資本は独占の時代をつくりだした。ところが、独占はいたるところで独占の原理をともなう。すなわち、公開市場での競争にかわって、有利な取引契約を結ぶための『縁故関係』の利用があらわれる。もっとも普通なことは、借款の条件として、借款額の一部分を、債権国の生産物、とくに軍需品、船舶等々の購入のために支出することがさだめられる……こうして資本の輸出は商品の輸出を促進させるのである。」

(つづく)
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