
トランプの為替批判で、米資本家政府との協調で支配構造を安定させてきた日本の資本家政府が対応に迫られている。
07年リーマンショックという世界恐慌によってグローバル資本主義が雪崩を打って崩壊しないように、G20というグローバル資本主義の国際協調路線(金融緩和と貿易拡大)が一定の役割を果たしてきたかのように見える。
だが、「時代は変わる」。(ボブ・ディラン)
日本の自動車大資本や為替政策への攻撃(口撃)が止まない。資本家政府は10日の訪米をまえに、3日には安倍首相とトヨタの豊田会長が予定されている。支配者間の争いは、被抑圧者にとっては反撃のチャンスだが、そこには落とし穴もある。時間がないので、簡単に考えをまとめる。
1、考えの基本は「万国の労働者、団結せよ」だ。
2、トランプは「アメリカの労働者に尊厳を取り戻す」といって、海外からの輸入(つまりアメリカへの失業の輸出)、そしてそれを促進させてきたドル高基調を攻撃している。
3、資本主義は労働者からの搾取で成り立っている。つまりトランプは、これまでは海外の労働者(アメリカへの移民を含む)を搾取してきたが、これからはアメリカの労働者を搾取します、と言っているにすぎない。その意味で、けんり(非正規問題を含む)と生活賃金の要求をかかげる労働組合運動は重要。
4、しかしアメリカ資本主義が超過利潤を増大させられる可能性は低い(戦争は例外)ことから、価値を生み出す源泉である労働と自然環境からのより一層の搾取とならざるを得ない。その意味で反資本主義の気候変動の取り組みは重要。
5、メキシコとの壁によって、イリーガル移民は増加し、イリーガルな雇用による劣悪な労働環境が、移民、そしてアメリカ人労働者に襲いかかる。資本にとっては利潤拡大の好機。その意味で移民の権利の抵抗運動は重要。
6、トランプの日本の自動車大資本への攻撃は、日本の資本家政府がこれまでの貿易交渉のなかで農業や伝統産業を犠牲にしてトヨタをはじめ大資本の代弁者となってきたことの裏返し。その意味で一貫して自由貿易協定に反対してきた農民・消費者運動は重要。
7、日本の自動車産業は膨大な「裾野産業」(下請け)によって成り立つビジネスモデル。利潤はトリクルダウンではなく、ボトムアップ。為替変動や消費税増税での下請けいじめ、そして何よりも下請けの過酷な労働条件が利潤の源泉。
8、トランプによるトヨタ批判は日本全体への批判であるというオールジャパンの扇動に騙されてはいけない。
9、安倍は日米首脳会議の「おみやげ」として、日本の公的年金をアメリカのインフラ事業に投資する案を検討している。年金資金をマネーゲームに使うな(インフラ投資といってもPPPなど民営化手法=株式会社がインフラ事業を行うだろう)。
10、「アメリカの属国」「売国政権」というもっともらしい批判に騙されてはいけない。
11、日本がアメリカの属国だから「おみやげ」を持参するのではない。トヨタなど大企業とアベノミクスの第一の矢(金融緩和政策)を救済することのために年金基金(その原資は税金、企業、労働者の三者からというが、税金も企業の資金もすべて労働者からの搾取)をつかおうとしている。つまり日本は資本家の属国なのだ。
12、日本の資本家政府は「安全保障と経済はべつもの」というが、日米安保の第二条には「締約国は、その国際経済政策におけるくい違いを除くことに努め、また、両国の間の経済的協力を促進する。」とある通り、それは両国ひいては世界経済の自由主義経済の要である。
13、日米安保にみられる通り、日本の資本家政権は、日本の労働者、そして沖縄の人々の命を犠牲にして、その支配の基盤をなんとか持ちこたえさせようとしている。
14、経団連副会長は、先日からスタートした春闘論議のなかで日経新聞のインタビューに対して「日本の最大の競争力は良好な労使関係」という。騙されるな。「日本の資本家の最大の競争力は従順な賃奴隷がいること」ということ。
15、日銀は金融緩和政策を批判されたが、短期的には頭を悩ませるかもしれないが、中長期的には、これを緩和解除の好機と考えているかもしれない。3日の安倍・トヨタ会談はそのことについても意見交換があるかもしれない。
16、リーマンショック以降、時代は変わった。支配者を取り巻く環境が変わったからだ。時代は変わる。しかし重要なのはどのように変わるのか、そしてどのように変えるのか、だ。
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