香港:民主自決派の議員の就任宣誓を認めず



ここ数日、日経新聞朝刊は一面で「習近平の支配」という連載を掲載しています。今日は4回目「闘争再び」というタイトルで香港の話。9月の議会選挙で当選した香港本土派(独立派)を大きく取り上げています。

香港では議員や行政長官、高級官僚などが新たに選出された場合に就任の宣誓を行うことが決められており、10月12日、議員の就任宣誓式が行われましたが、70人の議員のうち、5人の議員の宣誓に不備があったということで認められませんでした。

そのうちの二人が本土派政党「青年新政」の新人議員の游蕙禎と梁頌恆。日経新聞の記事では游蕙禎が就任宣誓の際に「HONG KONG IS NOT CHINA」というバナーを広げた写真が掲載されています。

そして「2012年に習近平が最高指導者になると、香港を中国にのみ込む姿勢を急速に強めた。強権は反発を招き立法会選挙で『本土派』の得票率は約2割に達した。」と紹介しています。

さらに国際面(6面)では、「中国からの自立訴えた2議員 香港政府、資格はく奪を画策」という見出しで、こう報じています。

日経新聞の記事はこちら。
香港政府、「本土派」2議員の資格剥奪を画策 (日経2016/10/19 21:41)

「発端は12日の立法会開会式。各議員は就任にあたり基本法の順守を宣誓する必要があるが、本土派の新政党、青年新政から初当選した游蕙禎、梁頌恆の2氏は『香港は中国ではない』と書いた幕を掲げ中国を蔑称とされる『シナ』と呼んだ。議会事務局は宣誓は無効と判断し、その後の審議への参加を拒んだ。親中派出身の梁君彦・立法会議長は18日昼、游氏ら5氏の宣誓が無効だったと裁定を下すとともに、19日に再宣誓を認めることで幕引きを図った。」「19日の本会議では過半数の親中派議員が『中華民族を侮辱した発言を謝罪するまで再宣誓は認められない』として一斉に退席したため流会となった。」

さて、この日経新聞の記事で書かれていない大切なことがあります。いうまでもなく「民主自決派」の存在です。日本多くの主流メディアはどうしても「中国VS本土派」というデフォルメされた香港政局を描きたいようです。その理由ははっきりしませんが、すくなくとも民主自決派の存在を無視した報道はかなり「痛い」ものだと言わざるを得ません。

日経新聞の記事はこう書いています。

「『本土派』の得票率は約2割に達した。」

しかし9月の選挙で、いわゆる「本土派」が獲得した22%の得票率のうち、15%が民主自決派のものであり、香港独立を主張する(=中国からの移民の排斥を訴える)本土派の得票率は7%にすぎません。

報道するなら民主自決派のほうを報道すべきでしょう。

「今回、議席をはく奪されそうなのが本土派の2議員なので、そちらを報道した」という反論もできそうですが、それも間違いです。

上記の記事で挙げられている宣誓を無効とされた5名の議員のうち、2名は19日の本会議で再宣誓しています。一人は親中派政党「民建聯」の黄定光議員ですが、宣誓の際に「香港」という文字を読み飛ばしてしまい無効とされたアホ議員。もう一人は民主派の議員ですが職能別選挙区(建築・測量・都市計画)で初めて非親中派として当選した姚松炎。彼は強大開発に反対する立場から民主自決派の議員とも連携していますが、大学の研究者であるとともに建築技師でもあり、香港社会ではアッパークラス。

この二人の宣誓が終わった後に、本土独立派の青年新政の游蕙禎と梁頌恆の二人の再宣誓が予定されていましたが、親中派議員らはこのタイミングで大挙して議場を去り、定数に満たないということで流会になりました。日経新聞の報道はここまで。

しかしもう一人、最後に再宣誓することになっていた議員がいます。

民主自決派として初当選した劉小麗議員です。

20161012xiaoli.jpg

彼女は12日に行われた最初の宣誓の際、宣誓が必須とされている「中華人民共和国香港特別行政区基本法を擁護し、中華人民共和国香港特別行政区に忠誠をつくし、職責を全うし、法令を遵守し、清廉潔白に香港特別行政区に奉仕します」という箇所を一文字6秒かけて読みました。彼女曰く「この分断された文字列は意味を持たない」として、香港の自決権を侵害する基本法の擁護を拒否する姿勢を示しました。また民主派議員らは香港特別行政区や中華人民共和国に対してではなく、有権者に対して責任を負うのが筋だとも主張しています。そのとおり。

これに対して議会事務局は、宣誓の内容変更および宣誓に対する不敬を理由にして、彼女を含む6名の議員の宣誓無効を議長(親中派議員)に進言し、議長は5名の議員の無効を認めるとともに、再度19日にこの5人の議員らを含めて再宣誓させるよう指示しました。

ちなみに民主自決派の政党「衆志」(デモシスト)の羅冠聡議員は「中華人民共和国?」というニュアンスで宣誓したことで議会事務局から異議が出されましたが、議長はその宣誓を有効と認めました。

話を日経新聞の記事に戻しますが、つまり再宣誓を認められなかった議員は、独立派の青年新政の2人だけでなく、民主自決派の劉小麗議員もいたということです。

彼女は自身のfacebookのなかで、中華人民共和国香港特別区に対する忠誠を誓う決まり文句としての宣誓の直前の発言を記しています。

「わたくし、劉小麗は、誠心誠意、香港市民に約束します。私は街頭から議会に入り、雨傘運動の命運自主の精神にのっとり、香港人とともに歩み、議会内外をつないで全体主義に対抗することを誓います。私たちは誠意かつ磊落のなかで生活し、冷淡犬儒を打破し、暗黒のなかで希望を探し求め、ともに民主自決の道を切り開かなければなりません。そびえる障壁を押し倒そう!自主自決!」

 + + + + +

来年3月に改選を控える梁振英・行政長官は、当面のところ本土独立派に攻撃対象を絞っているようで、昨日、再宣誓をさせようとした議長の決定に対して、議長にそのような権限はないとして裁判所に再宣誓の差し止めを求める訴えを起こしました。それは行政権の立法権に対する露骨な介入ですが、そもそも香港議会は英国の植民地議会をほぼそのまま引き継いでいるという問題もあります。

梁行政長官は、中国政府の支持を受けるために、今後もさまざまな嫌がらせを行うようです。再宣誓ができなかったので議員ではない、という不当な批判を行っていますが、宣誓を認めなかったのは立法会事務局であり、再宣誓式を流会にさせたのは親中派議員たちです。権力者は自分たちに都合のいいように法律をもてあそびます。日本でも同じように首相が司法を使って沖縄の地方自治を絞め殺しています。

東アジアの民主自決派に注目と連帯を!

スポンサーサイト

Comment

Leave a Reply


管理者にだけ表示を許可する