香港立法会選挙に関する日本の報道ぶりなど

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香港選挙(定数70)は民主自決派が4人当選し、労働者民主派もかろうじて1議席を獲得。

反共反中国(中国は共産主義じゃないのにね)の本土派(本当の本土派は民主自決派なのにね)も著名人は落選しましたが新たに3人が当選するなど、波乱含みの展開となりました。

『香港雨傘運動』の著者の區龍宇さんもさっそく選挙分析をウェブメディアに発表しています。

求変--初論2016立法会選挙結果(2016/9/5)

翻訳はおいおいします。

さて、9月6日付の朝刊の香港選挙に関する日本での報道ぶりですが、ぼくは東京新聞と日経新聞しか読んでいないので、他紙はよくわかりませんが、この2紙の報道は、ちょっとどうかなーと。

共通しているのは「民主派が3分の1を確保」、「世代交代」、「本土派の台頭」でしょう。たしかにそうです。しかし、ちょっと適当すぎる。

当選したこともあるのでしょう、二紙とも、新しい世代の代表として雨傘運動を牽引した学聯出身の羅冠聡さんの写真がつかわれています。それ自体は大変素晴らしい。同じく雨傘運動を牽引した学民思潮の主要メンバーといっしょに、香港衆志(デモシスト)という政治団体を立ち上げて選挙に臨みました。

東京新聞は、「解説」として加藤直人記者のコメントを記しています。

「今後は、民主派でも独立の選択肢を排除しない勢力や、香港を本土とみなし中国の考えには従わないとする急進派など、対中強硬姿勢の若者が民主化運動を主導することになる。他方で、民主派議員は何人ものベテランが落選した。世代交代の動きに、若い本土派は「香港の未来は私たちが担う」と意気込む。だが、大陸側からは、中国と香港の緊張の高まりを懸念する声が出る。勝利した民主派勢力も、中国との対決姿勢のみでは武力弾圧の危険水域まで摩擦が高まる恐れがある。民主化の経験と知恵を積み重ねてきたベテラン民主派との連携を深めることが、香港の真の民主化には重要になろう。」(記事の全文はこちら

ベテラン/既成民主派政党(汎民主派)の「経験と知恵」? その限界が有権者に見透かされたからこそ、今回の選挙結果になったのでは? さらに言えば「香港基本法」という中国政府が香港にいつでも介入できる枠組みに固執し続けてきた既成の民主派政党の限界が、雨傘運動をつうじてはっきりとしたということではないでしょうか。

なのに???

もちろん「ベテラン民主派」との連携は重要ですが、(民意に)歩み寄るべきはベテラン民主派のほうでしょう?

 + + + + +

つづいて日経新聞の報道ぶり。

日経のほうも写真は香港衆志の羅冠聡さんと元学民思潮の周庭さんの満面の笑顔の写真。周さんはちょっと前に紹介したSEALDs本の対談にも出てきます。おなじく学民思潮のメンバーでSEALDs本の対談でもすごい発言を連発していた黄之鋒さんは、日経新聞の写真では顔が隠れています。残念。

とうことで、こちらも見出しで「香港の民主派、世代交代」。

新しい世代の代表として羅冠聡さんが紹介されています。そしてその対比でしょう、「穏健派のベテラン議員」として李卓人議員を次のように紹介しています。

「1997年の中国返還前から活動してきた民主派の現職議員は次々落選した。天安門事件の犠牲者追悼集会を香港で長年主催してきた李卓人議員(59歳)は『市民は変化を求めている』と敗戦の弁を述べた。」

うーん、これもちょっとずれている。

まず李卓人さんは知る人ぞ知る、香港最初の労働者政党、工党(労働党)の議員。工党は2011年に結成されましたが、李さんは80年代からキリスト教工業委員会という労働者支援組織で活動、その後、独立系(非中国、非台湾)のナショナルセンターHKCTUの結成(90年)に参加し、書記長などを歴任。95年の補選で立法会初当選し、返還後も当選してきました。

つまり區さんのカテゴライズでいえば労働者民主派です。

で、彼の選挙区は新界西でしたが、同じ選挙区でトップ当選したのは自決派の新人、朱凱迪さん、39歳。李さんの得票は3万、かたや朱さんは8万4000票。これはすべての直接選挙区でのトップ得票数です。

比較するなら彼と比較べきではないか?

朱凱迪さんは、2006年ごろから都市計画の過度な商業化に反対する運動、「本土行動」を立ち上げ、2007年にはスターフェリーの皇后埠頭の保存を訴えて埠頭をオキュパイしたことで有名になりました。その後、市民記者として08年の洞爺湖サミット反対運動の取材をしようとして入国拒否されました。2011年には中国とつなぐ高速鉄道建設で立ち退きを迫られた菜園村の立ち退き反対運動の中心的活動家の一人となりました。菜園村の事件は「鉄怒沿線――三谷」というドキュメント映画となり、日本でも上映されたので知っている方も多いと思います。

当選した議員を紹介するイベントで、多くの議員が支持者から花束を贈られましたが、彼は菜園村から来た高齢の女性から、竹で編んだ籠に山盛りになった野菜をプレゼントされています。

こちらにその時の報道の写真があります。
http://goo.gl/zTbJ8s

ちなみにこの「鉄怒沿線――三谷」という映画、9/13に素人の乱12号店で上映があります
http://nolimit.tokyonantoka.xyz/raging-land-3-three-valleys/

また今年に入り郊外の公園に大量の産廃が違法に廃棄されているにもかかわらずそれを野放しにしていた香港政府に抗議して、その産廃を担当部局の入口に持って行き、責任ある対応を迫ったりしています。

つまり朱さんは一貫して、香港資本主義の開発優先の支配体制と対決してきた社会運動のアクティビストの民主自決派として、今回堂々と最高得票数を獲得しました。

彼は投票前の候補者討論会で、同じ選挙区から立候補していた開発優先の地域ボス候補者に対して、政官財癒着の開発主義者の犠牲になったすべての庶民を代表して選挙戦を戦うことを宣言しています。

これは開発優先の香港資本主義社会の裏の暴力装置である「黒社会」とも闘うことを意味しており、当選直後の記者会見でも、今後身の安全が脅かされるだろうが負けないと宣言しています。

また最新のウェブメディアの記事では、反共反中国のいわゆる本土派は「やるかやられるか」という絶望を背景にした闘争スタイルだが、自分はあくまで希望を背景とした運動を目指す、かれらは「民族自決」だが自分は「民主自決」だと述べています。

この朱さんの民主自決派が、同じ選挙区から立候補していたベテランの労働者民主派の李さんを大きく上回る得票数を獲得した理由については、これから翻訳を予定している區さんの論評にも若干触れられています。

ちなみに香港立法会は35の直接選挙選挙区と35の職能別選挙区にわかれています。職能別選挙区では、法律家、エンジニア、金融業などの分野でそれぞれ定数1ですが、労働組合だけは定数が3です。しかし投票単位は労働組合となるので、労使協調路線の親中派労働組合が数では上回るので、今回も候補者は3人だけで、すべて親中派(うち一つはHKCTUにも当初から加盟している労組ですが労使協調)で占められています。

雨傘運動や民主派は、この職能別選挙区の廃止を求めています。

一方、労働者民主派で(一般的には既成の民主派政党に区分されている)、街坊工友服務処を代表して立候補した梁耀忠さんは、定数5の職能別選挙区の区議会選挙区から立候補(区議に被選挙権がある)して当選しています。区議会選挙区は、どの職能別選挙区の選挙権のない住民すべてに選挙権があるので、事実上の直接選挙枠と言えます。
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