労働者の自覚(陳独秀)v.s.アベノミクスの「同一労働同一賃金」

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待ちに待った『陳独秀文集』の第一巻が刊行されました!全三巻の予定で、第一巻は1919年の五四運動などを含む時期の陳独秀の初期思想や文化言語論集。

・『陳独秀文集 1 』(平凡社東洋文庫)
http://www.heibonsha.co.jp/book/b226829.html

目次とパラパラとめくると、1920年に陳独秀が上海海運倉庫業連合会という、今の日本でいえば全港湾労働組合のようなところで行った演説「労働者の自覚」も収録されています。帝国主義の侵略に締め上げられながらも発展しつつあった中国の労働運動の方向性をわかりやすく論じたものです。

陳独秀は、皇帝、官僚、総統、書生などではなく、「労働する人こそが最も有用で最も貴重なんです」と労働者に語りかけ、「労働者の自覚は、二つの段階に分けられます。第一の自覚は待遇の改善を要求することです。第二段階の自覚は管理権を要求すること」、つまり「労働する人自身が国家や資本家の地位に立つよう要求し、労働する人自身が立ち上がって政治・軍事・産業を管理するよう求めること」を提起しています。

そして最後に、次のように述べて、第一段階の自覚(待遇改善)と第二段階の自覚(政治的権力の奪取と経済的管理の掌握)はともに不可分のものであることを述べています。

「私はお願いしたい。わが国で労働する人に理解していただきたいのは、労働する人の自覚には間違いなく第二段階の境地があり、たとえ当面それが実現できなくとも、そのことを考えるのは何ら差し支えない、ということ。また同時にお願いしたい。労働運動がやっと芽吹いたその時には、第一段階では満足できないから積極的には運動しないというのでは駄目だ、ということも理解するよう望みます。」

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昨日、厚労省の最低賃金審議会では、2016年度の最低賃金を、時給で20円上げるかどうかなどの議論をはじめたそうです。そのなかで塩崎恭久厚労大臣は「最低賃金を含めた賃金引き上げを通じ、消費を喚起する」と意欲を示した(日経2016/6/15)といいます。

「賃上げで景気回復を」とか「賃上げで内需拡大を」という、資本家政府ならではの意欲です。

さて、どこかで言おう言おうと思っていたのですが、安倍首相の「同一労働同一賃金」も同じ性格を持っているのではないか、いやそれ以上に悪辣な意図を持っているのではないかと思うのです。

安倍首相がは、消費税増税の延期を発表した6月1日の記者会見で「同一労働同一賃金を実現する」と述べました。

・安倍首相記者会見(6月1日)
http://www.kantei.go.jp/jp/97_abe/statement/2016/0601kaiken.html

安倍首相は「同一労働同一賃金を実現する」というすぐあとにこう続けています。

「『非正規』という言葉を日本国内から一掃する、その決意で全体の所得の底上げを図り、内需をしっかりと拡大していきます。」

「非正規労働」を一掃するのではなく、「非正規という言葉」を一掃する、といっているのです。しかし同一労働であれば同一契約であるべきではないでしょうか。つまり賃金ではなく賃金を含めた契約を同じにすべきだということです。

資本主義社会は、労働力以外に資本を持たない労働者は、労働力という商品を資本家に販売するかわりに賃金を受け取るという販売契約=雇用契約によって成立しています。契約=権利であり、労働者の権利は決して賃金額だけに制限されるものではないというのが、すくなくともいまの日本の資本主義社会の社会通念です。

つまり賃金だけを同じにすればいい、というのは資本主義の過酷な搾取が全般化した19世紀的な発想ではないか、と。

しかも安倍首相は「『非正規』という言葉を日本国内から一掃する」というのです。非正規であっても賃金が同じならば「非正規」と呼ぶのはよそう、ということに聞こえませんか。ここに、日本の資本家がいちばんやりたがっている解雇規制を突破する回路が透けて見えませんか。

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あまりに賃金の低い日雇いの仕事を「ケタ落ち」と言いました。現在の中央最低賃金審議会は、20円ではなく、200円、いやそれ以上の賃上げをしなければ、ギリギリの生活賃金を実現することもできません。いまの状態では「ケタ落ち最賃審議会」と言われても仕方ありません。

レイバーネットを見ると、時給を1500円にというキャンペーンががんばっています。

・いますぐ1000円!非正規労働者の声を聞け~「中央最低賃金審議会」行動
http://www.labornetjp.org/news/2016/0614shasin

アベノミクスのデタラメに対抗する「労働者の自覚」が社会的に問われるところです。

「私はお願いしたい。わが国で労働する人に理解していただきたいのは、労働する人の自覚には間違いなく第二段階の境地があり、たとえ当面それが実現できなくとも、そのことを考えるのは何ら差し支えない、ということ。また同時にお願いしたい。労働運動がやっと芽吹いたその時には、第一段階では満足できないから積極的には運動しないというのでは駄目だ、ということも理解するよう望みます。」 ――― 陳独秀
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日本のすべての都道府県の最低賃金をプラスして頭数で割り算して日本の最低賃金として世界で12位とすることにはなんの意味もないとおもいます。沖縄の最低賃金が日本の最低賃金なのです。沖縄の人が東京の大学に息子を入学させるとしたら大変な経済負担となりますから、そこで差があること自体不当なことなのです。沖縄の最低賃金を日本の最低賃金として、世界で何番目か恐らく30番目とか40番目となり日本の支配層の寝汚い実態が露呈するとおもいます。それを明らかにする作業は大変重要なことだと思います。

2016/11/02 (Wed) 04:58 | 田島義夫 #lndO56c. | URL | Edit

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