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パナマ文書(5) それは倫理の問題なのか

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◎ パナマ文書の衝撃

パナマ文書が大きな波紋を投げかけています。租税回避の問題は、たとえばスターバックスが英国で3年間で2000億円の売り上げがあるのに一銭も納税しなかったとか、アップルが海外で19兆円の売り上げがあるのに米国ではごくわずかしか納税しなかったとか、あるいはオリンパスが損失をタックスヘイブンに飛ばしていたとか、これまでも問題になってきました。パナマ文書が明らかにした富裕層の租税回避の実態は、氷山の一角にすぎません。

日本でも新聞や週刊誌で取り上げられています。

週刊現代に掲載された政治経済研究所の合田寛理事のコメントによれば、「タックスヘイブンにある金融資産は少なくとも7兆6000億ドル(813兆円)。徴税を逃れている金額は1900億ドル(約20兆円)。多国籍企業の課税逃れによる税収ロスを足せば最大で50兆円ほど。その一割が日本の税収ロスとすると日本政府が徴収できていない税収は5兆円。消費税2%引き上げ税収と同じ額。」

「日本国内で1億円以上の金融資産を持つ資産家は100万人。そのうち10万人が国外に資産保有しているが14年度の国外財産調書(5000万円以上の海外資産保有者に義務付け)は8184件しか提出されていない。9割以上が海外の資産隠しをしている。」

という実態があることが明らかにされています。

東京新聞もパナマ文書問題ではがんばっています。5月9日付のオックスファム公開書簡の全文を掲載しています。書簡にはピケティら355人が署名しています。

「タックスヘイブンの存在は世界全体の富や福祉の増進に何ら寄与せず、経済的な有益性もない。一部の富裕層や多国籍企業を利するだけで、不平等を拡大させている。」「貧しい国は最も大きな影響を受けており、少なくとも毎年1700億ドル(18兆4800億円)の税収を失っている。」

と批判しています。

東京新聞の記事とオクスファム書簡の全文はこちら。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/list/201605/CK2016051102000143.html

◎ 租税回避は競争力向上や利益最大化なのか

日経新聞もかなりの報道ぶりです。4月後半から「衝撃 パナマ文書」という記事を何度も掲載して、日本を含む各国の受け止め方や実態などを報じてきました。

5月11日の日経新聞ではキンバリー・クロージング米リード大学教授が、「収益や本社の米国がいい点による節税を、競争力向上や利益最大化という株主の責任と説明する傾向もあります」という日経記者の質問に対して、

「それには同意できない。たとえば米企業は国内での研究開発活動などに政府から助成金や補助金を受け取っている。その成果を法人税として納め、社会に還元するのは企業の倫理的義務だ。」

と答えています。

日本でも三井住友銀行をはじめ多くの金融機関や多国籍企業が同様にほとんどまともな税金を払っていない実態があります。労働者から搾取して得た利益から、さらに税金も払わずネコババしているというのが租税回避の本質です。オックスファムの公開書簡は次のように締めくくられています。

「アダムスミスは言った。富を持つものは収入の割合に応じてでなく、その割合以上に公共に貢献すべきだ」

そのとおりです。貧乏人や中小零細企業と違い、富裕層や大企業は分相応以上の税金を払う必要があります。

◎ それは倫理の問題なのか

日経新聞も、榊原定征(さだゆき)・経団連会長の「合法であっても過剰な節税は慎むべきだ」「国家や国民を率いる政治指導者は襟を正すべきだ」というコメントを紹介。5月11日付けの社説では、「行き過ぎれば税収に悪影響が及ぶ。一般の納税者とのあいだの不公平感が強まり、税制への信頼は損なわれる。」と過度な租税回避への警鐘を鳴らしています。

過度な租税回避は、実は過度な租税引き下げ競争に原因の一端があります。しかし、連休中に安倍首相は外遊先のベルギーで対日投資セミナーに出席し、こんなふうに放言しているのです。

「アベノミクスにより、日本の投資環境は確実に改善しました。」「この4月から、法人実効税率を一気に20%台へと引き下げました。2018年度には更に引き下げを実施し、ドイツ並みの水準にいたします。」

法人税率の過度な引き下げ競争がもたらしたのがパナマ文書に示される租税回避という認識はゼロです。

安倍首相はこんなことも言っています。

「企業収益は過去最高になり、新たに110万人以上の雇用が生みだされました。」

しかし新たに生み出された雇用の大半が非正規であり、実質賃金は下がり続けていることには触れません。

これは倫理の問題でしょうか? そうではなくシステム、G7サミット体制が体現する資本主義システムの問題ではないでしょうか。大企業の利潤は、自然と労働からの搾取が源泉です。

自由主義経済においては、つねに利潤を拡大することが使命となっており、それは倫理の問題ではなく、システムの問題です。G7諸国が骨抜き気候変動対策しかできないのは倫理に欠けるからではなく、自由主義経済システムと地球環境の保全が衝突するからです。アベノミクスで青年、労働者、高齢者が貧困にあえいでいるのは倫理の問題ではなく、システムの問題です。

日経新聞の報道で問題なのは、企業による租税回避には一定の合理性があり、問題なのは租税回避をさせてしまうような日本の税制のゆがみにある、という日本企業の言い分をもっともらしく紹介していることです。

5月16日付の日経新聞17面では、「衝撃 パナマ文書」という連載記事のなかで、「日本の企業関係者」の主張として「ゆがむ税制 不満根強く」と題したコメントを紹介しています。一見、タックスヘイブンによって税制が歪んでいるという主張と勘違いするかのような見出しですが、ちがいます。以下、全文を抜粋します。

===以下、抜粋====

「日本の企業関係者 ゆがむ税制 不満根強く」

企業関係者の中には「合法的に節税をするのは、投資家から利益率が高い経営を求められる企業としては当然だ」「租税回避地を利用すること自体が悪いかのような風潮には違和感がある」などの声も根強い。

国際ビジネスに詳しい外立憲治弁護士は「回避地が多く使われる事実は、日本の税制のゆがみの裏返しでもある」と指摘し、二重課税の問題がなかなか解消されない実態や、諸外国に比べて法人税が高いことを問題視する。

日本の法人実効税率は近年は徐々に引き下げられているとはいえ、2016年度で29.97%(財務省調べ)。法人税ゼロの回避地はもちろん、英国(20%)や韓国(24.2%)などを大きく上回る。相続税の最高税率は55%で先進国で最高水準だ。高額所得の所得控除は縮小され、所得税の負担も以前より重い。

外立弁護士はパナマ文書問題について「回避地利用の批判に終始するのではなく、企業や富裕層の資金が海外に流出しないような魅力的な制度を整える議論の出発点にすべきだ」と話している。

===以上、抜粋===

金持ちや大企業にとって魅力的な制度とはなんでしょうか。相続する資産すらない貧乏人には全く関係のない優遇税制でしょうか。

つまり、大企業や富裕層、そしてそれらに寄生する「専門家」らは、このパナマ文書の公開を契機にして、日本の税制をタックスヘイブンに近づけろ、というゆがんだ主張を恥知らずにも叫んでいるのです。

◎ 財政出動か緊縮政策かはおなじコインの裏表

他のG7諸国よりも先行して危機が続いてきた日本資本主義が、アベノミクスの「異次元緩和」を採用せざるを得なかったのは当然のことですが、それがG7全体のコンセンサスにはならないこともまた当然のことです。グローバル化したとはいえ、各国の資本主義は不均等にしか存在し得ません。欧州統合の神話であるユーロは、大国主導の不均等発展こそが経済成長のカギでしたが、昨年のギリシャ危機では、その神話の真実が、ギリシャ民衆のたたかいによって暴露されました。

日本においては、日銀の国債引き受けが財政出動の財源になっています(もうひとつは庶民増税)。それによって金融機関に巨額のマネーが滞留し、メガバンクや大企業のマネーゲームの資本になっています。新自由主義者のお得意の理論「トリクルダウン」は、日銀→メガバンク→富裕層というトリクルダウンだけです。貧乏人は労働と消費で搾取されるだけです。

金融緩和で円安がすすみ、為替投機も活発化。「ミセス・ワタナベ」というセクシャル・バイアスのかかった名称の円キャリートレードが復活しています。09年には2000兆円の取引でしたが、15年は5524兆円に膨れ上がっています。個人取引は98年外為法改正で解禁されたものです。詐欺まがいのビジネスが氾濫し、2010年に証拠金規制を導入。11年には上限25倍の規制が導入されましたが、法人は規制の対象外。

巨額の投機マネーには規制を目的としたトービン税こそが有効です。しかし投機マネーの源泉は、いうまでもなく日銀の異次元緩和にあります。そのツケは将来にわたる庶民からの搾取によってまかなうというのが異次元緩和の本質です。

◎ 日銀の株式売買

日銀は年間80兆円の国債を銀行から購入しています。新規国債発行額は35兆円ですから、買い入れ額の巨大さは群を抜いています。日銀は株の買い支えもしています。

日銀が02~04年(小泉政権)、09~10年(リーマン危機)の時期に銀行から買い取った株式を、今年の4月から売却を始めています。今後10年かけて1兆3000億円程度を売却する予定です。いっぽうで株式相場の影響を抑えるために毎日12億円の上場投資信託(ETF)を購入しています。年間3000億円に上る額です。

これとは別に、異次元緩和として年間3兆円もの巨額の上場投資信託(ETF)を購入しています。金融緩和の実態は株式市場の買い支えにすぎません。日銀は、小泉改革、リーマン・ショック、そしてアベノミクスの落ち込みを下支えするための資金を供給するシステムに成り下がっています。

◎ アベノミクスの矢が狙うのは労働者と農民の権利

アベノミクスという財政政策は、なにもタダで世の中にお金をばらまくわけではありません。その矢の的(マト)には資本主義的生産性向上という労働者に対する攻撃がはっきりと書かれています。

G7サミットを前にした協調政策をアピールしたい安倍政権に対して、経済浮揚に効果を発揮しない異次元緩和・アベノミクスをどうすればいいのかについて、「専門家」からは常にこんな意見が発せられています。

「政府債務を増やすような財政赤字拡大ではなく、金融緩和を継続する中で、ターゲットを消費性向の高い若年層に絞った可処分所得の向上策や、投資を呼び込むような規制緩和策の実施が賢明だ。そしてそうした政策はG7でも共感を呼ぶはず」。「日銀から銀行への貸出支援基金の貸出金利をマイナスにすることと組み合わせて、祖父母から若年層への贈与税免除により新規住宅の保有を後押しする制度の拡充」。「強い農業をつくる。生乳生産に関して補助金を使った実質的な生産調整を全廃し、質の高いものは世界に向けて高く売るよう奨励する」。「特区で計画されている混合診療の解禁を外国人患者の受け入れ……世界の富裕層を受け入れるような病院・ホテルを建設するにはマイナス金利の今がチャンス」
――――伊藤隆敏 コロンビア大学教授(日経新聞2016年5月9日19面「経済教室」)

「(G7サミットで政策協調を実現するには)……構造改革に踏み込むことだ。マクロ政策には限界がある。労働市場改革、先端技術開発とそれらの設備投資への体化、参入障壁の撤廃、過剰な生産設備やゾンビ企業の整理・淘汰を進めていけば、生産性や潜在成長率を引き上げられる。」(日経新聞5月12日21面「大機小機」)

富裕層の方しか向いていない政策提言の典型です。金持ち向けの病院にカネをかけるより、低所得の多数者にたいして十分な社会保障を提供するほうが先でしょう。

マイナス金利で住宅ローンが下がる、マイナス金利を利用して孫への贈与税への優遇政策を実施する……などという論調もみられますが、どれもこれも貧乏人には関係のない、むしろ貧乏人からむしりとった資源で金持ちを優遇する政策です。公共住宅、老後にかかる費用の無償化、学費無料化などなど、社会全体の在り方そのものを転換すべきでしょう。

異次元の緩和と財政出動や団塊の世代の交代によって、ほぼ完全雇用が達成されています。しかし雇用の多くはひどい労働条件と権利切り捨ての内容。非正規の増加に対しては「団塊の世代の退職者が再雇用で非正規化しているだけ」という意見もあるようですが、退職という首切りで労働条件を引き下げられてもさらに賃労働で搾取されなければならない状況がそもそもおかしいのではないでしょうか。

「公正な一日の労働に対する公正な賃金」という200年近くも前のスローガンを、いまだ掲げなければならないほど、日本と世界の雇用は壊れています。労働からの搾取こそが資本主義の本質であり、「賃労働の廃止」を掲げるアンチ・カピタリスタの原理を忘れ去る必要はますますありませんが、尊厳ある労働(ディーセントワーク)を求める運動の盛り上がりの中から、システムそのものへの異議申し立てが登場することを願っています。


◎ 再びパナマ文書の衝撃――彼らは何を恐れているのか

先に紹介したオクスファムの公開書簡では、「活動実態がないペーパー会社などが存在して世界の経済をゆがめている。」「脱法行為の隠ぺいや富裕層や多国籍企業が別のルールで行う活動を許すと、経済成長を支える法の秩序も脅かされる恐れがある。」と述べています。

しかし多国籍企業が主導する「経済成長」そのものを疑った方がいいのではないでしょうか。タックスヘイブンとは自由経済システムの「鬼っ子」ではなく、多国籍企業が主導する「経済成長」に不可欠のシステムのひとつです。

「世界経済をゆがめている」のは、そして気候変動によって地球環境全体をゆがめるどころか破たんの淵に追いやっているのは、タックスヘイブンではなく、多国籍企業が主導する自由経済体制による「経済成長」をとげてきたG7諸国をはじめとする先進資本主義大国のほうではないでしょうか。


「衝撃 パナマ文書」という連載記事を続けている日経新聞でおそらく最初に「パナマ文書の衝撃」と書いたのは、日経新聞4月7日付のマーケット紙面(19面)に掲載された「パナマ文書の衝撃波」というタイトルのコラム「大機小機」だったのではないでしょうか。

このコラムの最後では、大企業や富裕層にとっていったい何が「衝撃波」となるのかをあけすけに語っています。

「ただでさえ、失業や格差に対する不満が募っている局面である。政治不信が一段と高まり、ポピュリストの勢力が増大しかねない。世界経済下支えの協調行動が求められるというのに、各国の政治的な指導力の低下が懸念されている。08年のリーマン・ショックは米大統領選の政治空白が事態を悪化させた。単純に歴史は繰り返すまい。が、悪寒が走る。」
――― 日経新聞2016年4月7日19面 コラム「大機小機」

政治空白を避けたい支配層の意図が透けて見える、まさに悪寒が走るようなコラムです。

OECD租税委員会で進めてきた租税回避対策(BEPSプロジェクト)は、タックスヘイブンに対する長年来の批判的世論を無視できなくなった支配階層による対策です。納税者の大半を占める労働者階級が租税に対して不公平感と不信感を持つことに不安を感じとったことも、BEPSプロジェクトが進められてきた大きな理由でしょう。

OECD租税委員会の議長としてBEPSプロジェクトを指揮してきた浅川雅嗣財務官は、5月17日付の日経新聞のインタビューでこう答えています。

「回避地に利益を移転することを自体はよくあることで合法的な節税行動だ。ただ行き過ぎると、利益を上げた場所で適正に納税しないことになる。そこは法律の締め直しが必要で、国際社会の合意をきちっと実行していかなければならない。」

租税回避についての国際社会の合意とは、透明性と情報の交換にとどまっているに過ぎません。日本をはじめ各国の多国籍資本にとって「合意をきちっと実行」するということは、それ以上の規制や罰則をともなった対策には反対するということでしょう。

本当に悪寒が走ります。


◎ 仲間は世界中にいる

G7サミットはこのような資本主義システムを維持するための会合であり、未来を先取りするものではなく、過去を維持するための会合にすぎません。しかしG7が開かれる各国ではわたしたちの友人たちが、G7が支配する世界ではないもうひとつの世界を目指して、さまざまな取り組みを行っています。「サミット反対」の声は世界の社会運動の常識です。

サミット参加国のフランスでは対テロ戦争の非常事態宣言下において、労働規制緩和をはじめ貧困や差別に抗する若者たちによる「夜たち上がれ」という呼びかけが世界に向けて発せられています。イギリス労働党の新しい顔であるコービンへの支持やアメリカ民主党大統領候補予備選におけるサンダース現象の根底には、貧富の格差と不公正を維持し続けるいまのシステムに対する人々の怒りがあります。カナダ・モントリオールでは、戦争と搾取と差別のないもうひとつの世界を目指す人びとの集まりである世界社会フォーラムが6月に開かれます。

G7諸国だけではありません。アジアでは台湾ひまわり運動や香港雨傘運動、スペインのキンセ・デ・エメ(M15=5月15日)運動、不当な債務に怒るギリシャの人びと、儲けをタックスヘイブンに隠していた首相を打倒したアイスランドの人びと、アラブの春、クルドの炎、ラテンアメリカやアフリカでももうひとつの世界を目指す人々はいます。

気候変動、沖縄の基地問題、福島の被ばく問題、そして熊本や大分の被災後の対応など、どれひとつとってもシステムの問題です。このシステムとのたたかいの先にこそ希望があることを訴え続けていきたいと思います。

◎ 賃労働と資本に抗うフランスにおける階級闘争――新しい社会秩序は可能だ

オクスファムの書簡でアダムスミスの言葉が紹介されていましたので、もうすこし時代を下り、5月15日に全世界に向けて賃労働と資本の関係の変革のために「夜たちあがれ」と呼びかけているフランスの青年たちに敬意を表して、マルクスの「賃労働と資本」「フランスにおける階級闘争」という古典に序文を寄せたエンゲルスの言葉で最後を締めくくりたいと思います。

「社会は、途方もなく豊かな少数の者と多数の何も持たない労働者階級とに分裂し、そのせいで、この社会は、それ自身の過剰さによって窒息しながら、その一方で成員の大多数が極度の窮乏からほとんどないしまったく保護されないでいる。このような状態は日々ますます不条理なものとなり、そして不必要なものになっていく。それは取り除かれなければならないし、取り除くことができる。新しい社会秩序は可能だ。」

――― フリードリヒ・エンゲルス 1891年4月30日、ロンドン


(2016/5/19追記)

上記、エンゲルスの「序文」を当初「フランスの階級闘争」としていましたが、まったくの勘違いでした。本当はマルクスの「賃労働と資本」の序文でした。お詫びして訂正します。お詫びついでに「フランスにおける階級闘争」に寄せたエンゲルスの序文から、如何なる情勢分析が必要なのか、についての名言を紹介します。

「今日に歴史におこるいろいろの出来事や出来事の系列を判断する場合に、究極の経済的原因にまでさかのぼることは、とうていできないことだろう。……世界市場における商工業の進行と生産方法に生じる変化を日々追求して、さまざまにもつれあい、たえず変動する、これらの諸要因から、あらゆる任意な時期に対して、一般的な総括をひきだせるようにすることは、不可能なことであろう。おまけにその諸要因のうちでも、もっとも重要なものは、たいてい長いあいだ隠れた状態で作用したのちに、突然強力に表面にあらわれてくる……統計はそのさいなくてはならない参考資料であるが、それはいつもおくれてやってくる。……唯物論的方法は、きわめてしばしば次の点に限定されざるをえないだろう。すなわち、政治的闘争を、経済的発達から生じた現存の社会階級および階級分派間の利害の闘争に還元すること、そして個々の政党が、これらの階級や階級分派の多かれ少なかれ適当な表現であることを証明すること、これである。」
――― フリードリヒ・エンゲルス、1895年3月6日、ロンドン

アベノミクスとそれに対する対応を分析するさいにも役立つ名言だとおもいます。

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