中国:広東省の労働NGO活動家に弾圧(2015/12/8)

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[attac_ml:5708] 中国:広東省の労働NGO活動家に弾圧
2015/12/8, Tue


こんにちは、稲垣です。

12月にはいって中国広東省の労働NGOの活動家が逮捕される事件がありました。以下はそれを論じた香港フェミニストの論評です。

原文は、
http://hk.on.cc/cn/bkn/cnt/commentary/20151205/bkncn-20151205000314669-1205_05411_001.html

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外遊先で面会し、家に帰って掃除する
労働NGOがまだ残っていたか


趙思楽(フェミニスト・メディア人)
12月5日(土)

全体主義は止まるところを知らない。それは「掃除」(弾圧)を通じて自らの存在感と安心感を維持しているのだ。

12月3日、少なくとも16名の広東省で労働者の権利に関する活動をする人間が警察に連行されたり家宅捜査を受けたり、事情聴取された。この原稿の締め切りまでに、まだ8人が警察に拘束されている。そのうちの4人は、広州市の「番禺打工族服務部」責任者の曽飛洋、仏山市の「南飛雁社会工作服務中心」責任者の何曉波、広州「海哥労工服務部」(旧広東労維弁護士事務所工人研修部)責任者の陳輝海、番禺区「労働者互助小組」責任者の彭家勇。ほかの4人はこれらの団体の活動に関係する朱小梅、何明輝、三木(仮名)、?小明、孟?[原文のママ]。そのうち陳輝海は軟禁状態にあったが連絡はとれた。しかし他の人たちとは連絡が取れなくなっている。

警察が曽飛洋のかつての同僚の家宅捜査を行ったときに示した令状は「曽飛洋等が集合して社会秩序をかく乱する容疑についての捜査」と書かれてあり、何曉波の自宅を捜査した警察は彼の妻に対して「職務横領罪の疑い」だと伝えた。広東の労働運動活動家は、今回の弾圧の最終目標は曽と何の二人ではないかと分析している。12月4日午後、何曉波の妻は刑事拘留通知書を受け取った。

長年広東省で労働者の権利に関する活動する肖魏(仮名)は、今回捜査が及んだ人間は全員かつて「 番禺打工族服務部」で活動していたことがあるという。また、曽飛洋に対する捜査はしばらく前から続いてたのではないかという。一週間前には広州市Li湾区逢源街の清掃労働者がストライキを打ったとき、独立した労働者のニュースサイト「錘子之聲」編集者の王福菊がストを現場で見守っていたところ、当局から呼び出されたという。現場には曽飛洋もいたが、戻ってきた王福菊によると当局は曽のことばかりを尋ねたという。曽も肖魏に対して、すぐに逮捕されるかもしれないと漏らしていたという。

肖魏は「今回は明らかに当局は高いレベルでの統一行動を取っています。友人たちが尋ねられた内容から、独立した幾つかの労働者組織が曽飛洋をトップとする一つの集団だという証拠を集めているようです。それよってさらに監視を強めようとしているのかもしれません。」と話す。今回、広州市と仏山市の労働者組織に対する弾圧は、以前から準備されており、「向陽花」と「南飛雁」の団体は今年中ごろには登録抹消を強要されたという。「経済状況が悪化するなかで社会に対する統制を強化しようとしているのでしょう。労働者団体への弾圧は労働者の運動への弾圧です。曽、駱、陳、彭の団体は積極的に労働者の団体交渉を推進していました。当局の弾圧は団体交渉という合法的な要求に対する拒否を意味しています。」

肖魏は次のように分析している。「中国の経済悪化はおもに輸出データに示されています。鉄鋼、石炭産業の不況は、中国が長期的に輸出志向型で、生産能力過剰の構造矛盾の表現であり、来年こそ経済不況の本番であるという分析が多く示されています。その時には当局はさらに社会統制や労働者団体への弾圧を強めることになるでしょう。」

広東省の労働NGO(他の地域では行動力のある労働者組織はほとんどない)が警察にマークされ弾圧をうけるというのは目新しいニュースではない。経済情勢の悪化は労働者の抵抗が増大する可能性を秘めているが、このかん大規模なスト事件もなく、労働者団体の活動も活発ではなくなっている。現在活動している労働者団体も地域を越えたストライキを組織する状況もないしそのような力もないなかで、この時期に警察が大規模な弾圧を行ったことに、多くの人が驚いている。


一方で、広東省では全国に影響を与える事件の処理を巡って注目が集まっている。香港オキュパイ運動を応援して後に逮捕された謝文飛、王黙の「国家政権転覆」事件が、一年余りたった11月19日に、広州中等裁判所で審理が行われた。11月27日には2013年初めに雑誌「南方週末」を応援して8か月後に逮捕されて2年間拘留され、ずっと判決が出されていなかった郭飛雄と孫徳勝の「集合して公共場所の秩序をかく乱させた」事件の判決が言い渡され、郭飛雄に対して裁判官自ら「騒動挑発」という容疑を書き加えるというトンデモないことが行われて6年の実刑、孫徳勝は2年半の実刑判決が言い渡された。2013年よりも前につかまっていた劉遠東は同日、3年の実刑が言い渡された。[訳注:改革派の雑誌『南方週末』が2013年新年に政治改革を求める社説を掲載しようとして党宣伝部がそれを差し替えたことに雑誌社内外で抗議が拡大した]

放置されてきた労働団体や民主派に対する案件をなぜ権力機構は集中して処理しようとしたのだろうか。

昨年末の「雨傘運動」事件のときから、政府の治安政策は各地の状況に応じて実施する「安定維持モデル」から統一した対処を行う「国家安全局モデル」へと転換し、正式に実行に移されてきた。今年に入ってからの弾圧は3月7日のフェミニストに対する弾圧から始まり、4月に5人のフェミニストが釈放された後も、彼女らが所属する反差別団体「益仁平」が外務省から名指しで違法団体として指摘された。

5月と6月には「益仁平」と関係のある多くの反差別機構も警察の捜査を受けて、代表者が逮捕されるところもあり、各地でNGOに対する嫌がらせと登録強要が行われた。賈霊敏[住居の強制立ち退きに抗して2014年5月に逮捕された教員]の案件は5月に裁判が開かれ、唐荊陵[市民的不服従運動の提唱者で2014年5月に逮捕]の案件は6月に裁判が行われた。また呉淦と山東省の陳情者が逮捕され、7月には「7・9弁護士大弾圧」が発生し、8月まで関連する動きが続いた。

8月中旬から11月にかけて、「戦火」続きの市民社会は比較的おとなしかったが、最高権力は「忙しそう」にしていたことは誰の目にも明らかだった。8月の軍事パレート特訓期間のあいだ、北京全域ないし全国で「戒厳」状態に突入していた。9月の軍事パレードにつづいて[習近平国家主席の]アメリカ訪問と国連総会への出席。アメリカから帰国して何日もたたないうちに欧州五カ国と英国への歴訪。10月23日にイギリス訪問を終えて、11月上旬が「嵐の前の静けさ」の時だった(本当に静かだったわけではなく、公安部[警察]は11月14日に新疆特殊警察による56日間の追撃で、現地のテロ分子に対する「総攻撃」を仕掛けて、テロリストを殺害している)。……そして「市民社会に対する大掃除」が広東省から始まったというわけだ。

これはまるで大掃除の最中に人と会う約束の時間が来たので、とりあえず掃除をやめて鍵をかけて出かける(人権弁護士たちが出国できなくなった)、そして家に帰ってきたら、また掃除機のスイッチを入れて、最後に溜まったゴミを捨てる、という風に。

権力の意志は、国家の統治というよりも、自分の家を管理するかのようだ。あるいはその両者の区別がつかないのだろう。全体主義は自分自身の議事日程をもっている(いや、「議事」なんてものは存在せず、審「議」することなど考えもつかない。たんに決められた「予定通りのスケジュール」があるだけだ)。

気に入らない人や事件や物が家の中に出現すると、それをゴミとして掃除するだけなのだろう。さらに恐ろしいのは全体主義は後戻りできないことだ。それは「掃除」を通じてしか自分の存在感と安心感を維持できないのだろう。

市民的権利のための団体は掃除されてしまった。独立研究機関も掃除されてしまった。反差別団体も掃除されてしまった。人権弁護士も掃除されてしまった。草の根の活動家も掃除されてしまった。そして今回は労働者団体の番だったのだ。半年、一年後には、きれいさっぱり掃除されてしまうだろう。
 
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