紹介:中台関係に関する両岸労働者階級の立場(『台頭する中国』からの抜粋)

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中国共産党の習近平さんと国民党の馬英九さんが、1949年の分断以来66年ぶりのトップ会談に臨んだニュースは日本でも大きく取り上げられました。来年1月に予定されている台湾総統選挙で、野党・民進党にリードされている国民党の「援護射撃」的な意味合いもありますが、中国の習政権が掲げる「中華民族の偉大な復興という中国の夢」である両岸の統一の具体化の一環だともいえます。

いうまでもなく二つの政権が対立、とくに軍事的に対立するよりも、それぞれの思惑はあるとはいえ、まずは協議のテーブルに着くための友好的雰囲気を演出することは重要だと思います。一方で、それだけにはとどまらない重要な視点かいくつもあると思います。

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台湾には独立派の勢力もあります。「台湾人アイデンティティ」を自任する住民はこの20年のなかでも最も多くなっているという調査結果もあります。昨年3月には中国とのサービス貿易協定締結に反対する「太陽花(ひまわり)運動」が大きく注目されました。

つい先日、台湾の若いマルクス主義者が書いた太陽花運動に関する長い論評が「苦労網」ウェブサイトなどに掲載されました(げんぶんはこちら→)。大変示唆に富む論評ですが長文なのでぼちぼち翻訳することとして、そのなかで国民党が「反共」から「親共」に転じた大きな理由として、中国の資本主義化が挙げられていました。また台湾社会における「中国要素」が様々な社会的抗議を引き起こしていることも紹介されています。太陽花運動はその代表的なケースです。

この「中国要素」への抗議は、反共主義者からブルジョア独立派、そして社会運動派までさまざまな形で表れていますが、共通するのは中国の「官僚資本主義」に対する反発です。

この若い筆者は長い論評の最後をこう締めくくっています。

「両岸四地(中国、台湾、香港、マカオ)の20年を振り返ると、一つの共通した傾向を見出すことができる。それは中国共産党の資本主義が進めば進むほど、その反動性が増せば増すほど、人民大衆の反感を引き起こしてきたということである。これは周辺国家に限定されるものではなく、中国共産党の直接的統治下で生活している人民にも当てはまることである。この傾向はさらなる発展と激動は、アジアの未来の運命を決することになるだろう。」---「左翼的観点からみた太陽花」(毛翊羽)

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昨年夏に日本での出版をお手伝いした『台頭する中国 その強靭性と脆弱性』のなかにも、 「中台関係に関する両岸労働者階級の立場」という香港のマルクス主義者、區龍宇さんの論考が収録されています。これは日本語版を出版するにあたって英語の原書には収録されていなかった論考を、日本の読者にとっては参考になるだろうということで急きょ収録したものです。

この論考は馬英九さんが最初に相当に当選する直前の2007年12月に執筆されたものですが、大きな枠組みは変わっておらず、とくに台湾左翼の基本的立場については、上記の若い台湾マルキストの結論とも相通じるものがあると思いますので、重要な箇所を抜き出して紹介したいと思います。

區龍宇さんは太陽花運動の主題であった中台サービス貿易協定の問題についても論考を発表しています。今年出版をお手伝いした『香港雨傘運動』にも収録を予定していたのですが、紙幅が大幅にオーバーしたのでカットしました。こちらのサイトで読めます。

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中台関係に関する両岸労働者階級の立場(『台頭する中国』からの抜粋)

現在の中台両岸関係は「ひとつの中国、二つの政府」である。(359p)

台湾人民には当然自決権があり、中国大陸との統一あるいは独立を自ら決めるべきである。……もし中国が台湾との統一を求めるのであれば、台湾人民の自決権の尊重を前提とするしかない。(363p)

台湾人民の総方針は「苦労を耐え忍んで統一を待つ」であり、中国大陸における支配の危機の爆発を、台湾が統一交渉の攻勢によって打って出る機会としてとらえ、民主的統一を実現するということでなければならない。われわれは現在の事実上の独立状態を、いずれかの将来において台湾に有利な統一を実現するチャンスとして活用することができる。台湾人民は中短期においては守勢に立たされるが、長期的な戦略配置においては攻勢的立場を採用すべきであり、中国大陸の人民とともに中国の独裁腐敗政権を改造し、同時に両岸人民のどちらにとっても有利な統一を実現しなければならない。この意味において、われわれは統一はであるし独立派でもある。中短期においては事実上の独立を擁護し、長期的には統一を実現する。(367p)

台湾が法理独立を進めさえしなければ、中国が台湾に性急な統一を迫りさえしなければ、両岸の政治関係が冷めていようとなかろうと、貿易関係はさらに緊密になる一方であり、そしてこの状況は翻って両岸関係の緩和の推進力にもなる。誰も戦争などしたくはないからだ。だがこれは唯一の結果ではない。相反する結果もある。それは、両岸経済の統合は台湾のプチブルの一部と労働者民衆に被害をもたらすからである。両岸の賃金水準があまりに違いすぎるので、両岸経済の統合の結果、労働条件の底辺への競争と産業空洞化による失業が発生する。両岸の大ブルジョアジーは、自由かつ共同で両岸の労働者人民と自然資源からの搾取によって富をなし、さらにグローバル・サプライチェーンの緊密な協力者となっている。台湾の二大政党(国民党と民進党:引用者)は両岸の資本と商品の往来の発展について基本的に一致した主張を持っている。(372p)

われわれ社会主義者は根気強く民衆に次のように説明しなければならない。台湾民衆の貧苦の理由は「台湾の資本主義の規模が小さいからであり、大中華資本主義になることでそれは発展し改善する」などということはなく、「台湾資本が邪悪な中国によって買収され愛国心をなくし、台湾にとどまらないから」でもないのである。この二つの主張は表面的には対立しているが、実際の違いは、資本の自由移動と自由搾取における範囲と程度の違いにすぎない。結局のところ、中華民族主義と結びつくのか台湾民族主義と結びつくのかということなのである。この二つは高度な次元で共通性をもっている。それは資本主義制度には触れない、ということである。しかるに、もし両岸労働者人民の過去20年間の基本的生活がともに悪化しているというのであれば、その主要な要因はまさに資本主義制度にあり、中国、台湾、香港、マカオの大中華経済圏の資本主義制度による搾取の軌跡にそって進行しているのである。それゆえ、仮に客観的に一部の政策に改良の余地があったとしても、左翼はそこにとどまるべきではなく、両岸の労働者人民の認識を根本的なオルタナティブ、つまり資本主義を取り除き、労働者人民が主人公の社会主義へと誘導しなければならない。(373-374p)

現在、両岸のあいだでの貿易はますます頻繁かつ緊密なサプライチェーンを形成し、両岸労働者階級の団結のための経済的基礎を作り出しつつある。同じ台湾企業に雇用されている両岸労働者の数は幾万人にものぼる(2015年現在では幾十万にものぼる!)。……台湾労働者は、ただ両岸労働者の団結した闘争で待遇を向上させることによってのみ、そしてより大きなプロレタリア権力の実現からプロレタリア民主主義の実現によってのみ、労働条件の底辺への競争という市場メカニズムのさらなる効用の発揮を阻止できるということを認識しなければならない。両岸においてもし何らかの経済貿易協定を締結するのであれば、そこには中国大陸における労働三権の実現、両岸労働者人民の境界を越えた団結の権利が含まれなければならない。(374p)

台湾人民の自決権承認が(台湾)左翼としてのベースラインとなる。……台湾労働者の階級的自覚と両岸労働者階級の団結を促進させることが最高の戦略目標である。(377p)

2007年12月1日執筆(08年8月に若干改定)

『台頭する中国 その強靭性と脆弱性』(つげ書房新社)に収録
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