
▲attacブリュッセルのサイトより拝借
以下、attac首都圏の会員MLに投稿したメールです。
[attac_ml:5347] 「いかさま師か、救世主か」~迫真 綱渡りのギリシャ2
2015/7/23
こんにちは。話のついでに、今朝の日経新聞「迫真 綱渡りのギリシャ2」の感想。
今日のタイトルは、「いかさま師か、救世主か」。
資本家新聞の恒例として、日経新聞の記事は、庶民へのまなざしを持った政治家は大衆迎合のポピュリストとして報道しています。
チプラスを支持する労働者二人が登場。
5年間定職につけず一日一本70円のボールペンを売り歩き一日の売り上げが670円にしかならないニッキー・セオハリさん(42歳)。財政赤字削減のため前政権が閉鎖した国営テレビを復活させるという公約をしてそれを実行したチプラスを支援する同テレビリポーターのエマニュエラ・アルゲイティさん(38歳)。どちらも僕と同世代。
前政権で解雇された財務省清掃員の女性労働者50人を官邸に招き入れて再雇用を約束したチプラスの「(彼女たちの闘いは)公正な闘いだった」という発言も紹介。
これらすべてが
「国民の歓心を買い支持層を広げるためには政策手段を選ばない。」
「7月5日の国民投票はチプラスの訴え通り欧州連合が強いる緊縮策への反対票が賛成票を上回った。しかし現実を見れば、無料の電車を運行した公共交通機関や、清掃員を増員した財務省の経費は今日も拡大している。」
として、チプラスの「いかさま師」ぶりを強調する内容です。
しかし、これまでの政権だって同じように「国民の歓心を買い支持層を広げるためには政策手段を選ばない」やり方をしてきました。
違うのは、これまでの政権は、ギリシャ、ドイツ、フランスなどの資本家に有利な政策を行う政党が、政権の座につくために「国民の歓心を買い支持層を広げるためには政策手段を選ばない」やり方をしてきたということでしょう。
しかしそのような「国民の歓心を買い支持層を広げるため」の政策は、結局のところ資本家のための政策だったので、それがコケたらそのツケは労働者たちに押し付けられたことを、ギリシャの労働者は今回の危機ではっきりと分かったので、シリザを選んだ、ということです。
「いかさま師」が誰なのかはいうまでもありません。
左派ポピュリストに対する批判は重要ですが、日経新聞の記事に代表されるようなネオリベ右派からの批判は、本当におかしいと思います。
この「いかさま師か、救世主か」というタイトルを見たとき、ギリシャ危機の直接のきっかけとなった粉飾財政をギリシャ政府に指導したゴールドマン・サックスのことを思い出しました。
2011年暮れのCTT部会でギリシャ危機を話す機会がありました。そのときのレジメには、「ギリシャの債務が増加した理由」としてこう書かれてあります。
+ + 以下、レジメ抜粋 + + +
◆ ギリシャの債務が増加した理由
・1967年~74年の軍事政権時代の間に公的債務は4倍に膨れ上がる
・90年代、企業富裕層への優遇策を穴埋めするための借入
・仏独米からの武器購入
・2001年のユーロ加盟で民間債務増加
・2004年のオリンピック費用
・2007年世界的な金融緩和によるマネーの流入:低金利資金の借り入れの増大
◎オリンピック:97年当初13億ドルの予算→53億ドル→04年オリンピック後には142億ドル
◎独シーメンス社との癒着:パトリオットミサイル(贈賄額1千万ユーロ)、通信機器(贈賄額1億ユーロ)、オリンピック用セキュリティシステム(全く使用せず)
それ以外にも欠陥設備が搭載された傾いた潜水艦(50億ユーロ)など
◎軍事費: 09年GDPの4%、EU中最高、NATOでは米国に次ぐ。欧州五大武器輸入国のひとつ。輸入に占める戦闘機購入の割合は38%(F-16、ミラージュ等)。フランス軍需産業にとって三大輸出先の一つ。
◎ゴールドマンサックス(GS):2001年にユーロ加盟後に政府債務を円建てからユーロ建てに変更。EU加盟には財政赤字をGDP3%以内に抑える必要があった。GSは本来融資として赤字計上される資金を為替取引による収益として黒字計上することを助言。これによりEU加盟を果たす。ギリシャ政府はGS社員をコンサルタントして雇う。2010年に粉飾が明らかになる直前には、GS元社員がギリシャ公的債務管理庁の長官に就任。GSは一方でギリシャ国債暴落で利益を得るスキーム。
(2011年12月18日レジメ「不正が法になるとき抵抗は義務である――ギリシャ危機」より)
+ + 以上、レジメ抜粋 + + +
ドイツは、トルコと緊張関係にあるギリシャに対して、ギリシャ軍と言うよりドイツ軍と言った方がいいくらいの巨額の武器を売っていました。
先に紹介したギリシャ債務真実委員会の報告書では、危機が発覚して以降の「ギリシャ救済」のほうが不正が横行したともあります。
結局、ドイツの銀行はギリシャ国債への投資に失敗し、ドイツ政府はドイツの民間銀行の投資失敗のツケを税金で救済したということです。
ドイツ国民の税金でドイツの民間銀行のビジネスの失敗を補ったメルケルは、その責任を問われないようにするために、ギリシャに対する強硬姿勢を演じ続けました。これを「いかさま師」といわずして何というのでしょうか。
この「いかさま師か、救世主か」の記事の見開きの反対側(3面)には、「郵政、資産運用で攻勢」という記事が掲載されています。ゆうちょ銀行(45%)、日本郵便(5%)、三井住友信託(30%)、野村HD(20%)が資本金5億円の新会社を設立して、「今秋の株式上場を見据えて収益力を高めるため、資産運用ビジネスに経営の軸足を移す。」
「長期的な安定収益の確保につながる」と述べる、ゆうちょ銀行や日本郵便の持ち株会社の日本郵政の西室泰三社長は、いま経営トップの「いかさま師」問題でゆれている東芝の出身です。
日経のこの記事はこう締めくくられています。
「投信分野では今年に入って銀行による運用会社の設立や再編の動きが相次いでいる。ゆうちょ銀行の本格参入により、100兆円規模に育った投信市場の個人マネー争奪戦が激しさを増しそうだ。」
「いかさま師」たちによる個人マネー争奪戦が激しさを増しそうだ、と思いました。
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