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[attac_ml:4449] 紹介:転機の紅いメジャー(日経新聞)
2014/9/5, Fri 16:32
日経新聞の2014年9月3日と4日の朝刊の国際面では「転機の紅いメジャー」という記事が上下で掲載されています。7月末に重大な不正による党規律違反で調査を受けていることが公表された周永康・元中共中央政治局常務委員らを頂点とする、いわゆる「石油閥」と中国石油メジャーについても記事です。
この連載では、くだらない党内闘争ではなく、中国の台頭とともに米エクソンモービル社をを上回る巨大企業グループにのし上がった中国石油メジャーのいびつな発展が、周やその家族を頂点とする膨大な石油閥らの腐敗を広げたことが描かれています。
そして習政権が、このいびつに発展した石油産業を、中国経済の発展のスローダウン(新常態=ニューノーマル)にあわせて軟着陸させる方針であることなどもわかります。
4日付の「下」のほうは、どのくらいの腐敗が行われているかもわからない不正会計などの是正に舵を切り、ガソリンスタンド経営部門などで、民間に開放する政策をすすめているが、外資にはまだ規制があって自由に参入できないのでダメだ、というようなくだらない国際ブルジョアジーの叫び声のこだまが最後に響いていますが、全体としては従来のあほな派閥闘争分析にくらべるとずっとましな記事になっていますので、関心のある方は図書館などでご覧ください。
周が腐敗でため込んだ蓄財は1兆5000億円にものぼるといいます。石油メジャーの利益を掠め取ったのでこんなにもびっくりするほどの額になるのですが、じつは中国の官僚は大虎も小蠅もみんな大なり小なり、いろいろな利権グループに属しており、その連合体が中国共産党だという見方もできます。
ここ1年来の習政権の腐敗撲滅運動、そして今回の前政権トップ層に対する摘発について、「個人独裁を強めている」というようなアホな分析はさておくとして、いくつかの評価があります。
ひとつは「ついに権力資本主義(原文は権貴資本主義)へのメスを入れて、中国の特色ある社会主義を本気で進めようとする決意だ」というものです。これは党内保守派やナショナリストらの見解でしょう。ちょっとトホホな分析ですけど、まじめにそう考えている人も中国国内にはきっとたくさんいそうです。
もうひとつは、権力資本主義の支配階層である官僚体制全体を守るための動き、というものです。これは自由主義右派である何清漣などが主張するもの。この何清漣さんのブログの日本語訳でおもしろい記事があります。参考までに。
周永康事件ー権力と資本の結託の最高見本(日本語)
http://heqinglian.net/2014/03/02/zhou-yongkang-japanese/
僕自身も、習政権に対する評価は、この何さんの見解に近いです(もちろん政治的なオルタナティブは異なりますけど)。
以前このMLで、出版をお手伝いした『台頭する中国』という本の紹介をさせていただきました。(下に張り付けています)
その著者の區龍宇さんが最近独立ウェブメディアに、先日の香港の選挙制度をめぐる中国政府の対応を批判した文章を発表しており、そこでは、習近平という「無冠の皇帝」は官僚体制全体の利益を守る象徴であり、時には官僚グループへの弾圧をこなうこともあるし、ときには「親民的」であったりもするが、それはあくまで官僚体制全体の維持のためであり、その官僚体制は独裁を維持しているがゆえに存在可能であり、その独裁は香港の民主主義やプロレタリアートと敵対的な関係にある、というような論評を書いています。
話がそれてしまいましたが、中国の石油閥への弾圧は、官僚資本主義の持続的発展にとって障害となっている石油閥という構造は解体する、という程度のものにすぎません。すぎません、といってもその影響はすごい大きいんですけど。
一年前ですが、attacこうとうのブログに、こんな文章を書いていたことを思い出しました。
◎中国:党内粛清と階級闘争(2013年9月1日)
では。
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> 『台頭する中国 その強靭性と脆弱性』
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> 著者:區龍宇/寄稿:白瑞雪、ピエール・ルッセ、ブルーノ・ジュタン
> 訳者:寺本勉、喜多幡佳秀、湯川順夫、早野一
> 出版:柘植書房新社
> 定価:4600円+税(ハードカバー、463ページ)
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> ◎ 目次
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> 日本語版への序文(區龍宇)
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> 序 ジグソーパズルの欠けたピース(區龍宇)
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> 第1部 中国の台頭とそこに内在する矛盾
> 中国の台頭とそこに内在する矛盾(區龍宇)
> 中国の対外経済進出(區龍宇)
> 中国の台頭は不可避なのか、それとも没落の可能性があるのか(ブルーノ・ジュタン)
> 毛沢東主義――その功績と限界(ピエール・ルッセ)
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> 第2部 中国における労働者・農民の抵抗闘争
> 中国における労働者の抵抗闘争 1989-2009(區龍宇、白瑞雪)
> 「主人」から賃奴隷へ――民営化のもとでの中国労働者(區龍宇)
> 社会的アパルトヘイト下での使い捨て労働――新しい労働者階級としての農民工(區龍宇)
> 中華全国総工会の役割――労働者にとっての意味(白瑞雪)
> 新しい希望の兆候――今日の中国における抵抗闘争(區龍宇、白瑞雪)
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> 第3部 中国における新自由主義派と新左派
> 中国――グローバル化と民族主義者の反応(區龍宇)
> 中国の党・国家はいかに社会主義なのか? 書評 汪暉著『革命の終焉 中国と近代化の限界』(區龍宇)
> 薄熙來と「一都市社会主義」の終焉(區龍宇)
> 劉暁波氏と中国の自由主義者(區龍宇)
>
> 第4部 中国共産党の台湾・チベット・新疆ウイグル政策
> 中台関係に関する両岸労働者階級の立場(區龍宇)
> 自発的な連合か強制的な統一か――中国共産党のチベット政策(區龍宇)
> 二重の抑圧――新疆短評(區龍宇)
> 香港のオルタ・グローバリゼーション運動(區龍宇)
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> 訳者あとがき
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> 原注
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