「お屠蘇気分に乗って使っていって、お金をぐるぐる回していく」のがアベノミクス

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2013年最後の日経新聞の一面トップは「今年、歴史的値動き」「株高41年ぶり 円安34年ぶり」という見出しで、現職総理としては初めてとなる安倍首相の東証大納会での挨拶写真付。

安倍首相は上機嫌でこうあいさつしています。

「今日、朝からですね、せっかく行くのに株が下がったら嫌だなと思っていたところでありますが、年初来最高値でありました。まさにこれこそ、この取引所の『おもてなし』ではないかな。最高のおもてなしでありました。・・・・・・今年は私たちが3本の矢、新しい経済政策でデフレ脱却に挑んだ年となりました。ちょうど昨年の今頃、エコノミストが集まって、来年の今頃は果たして株価がいくらになっているのかなあ、こう予測をしたんですね。一流のエコノミスト全部合わせて、『平均は1,000円高くなっている』。ずいぶんショボいじゃありませんか。株式売買代金は、まさに倍になった。『倍返し』ですね。そして、1万6千円以上になりました。6割近く上がった。これはですね、1972年以来。あのまさに沖縄返還や日本列島改造論、あの時代であります。」

全文は「東京証券取引所2013大納会での挨拶全文」(首相官邸ホームページ)にあります。

同日の日経新聞では3面に「株高・円安 恩恵広がる」という見出しの記事はつぎのような出だしで始まっています。

「『70万円から100万円のタイプが人気』。高島屋の国内18店では3~11月、高級腕時計『ロレックス』の売上高が前年同期に比べ8割増えた。・・・個人投資家の持つ株式資産は1年間で約30兆円笛、92兆円程度になったもよう。・・・1~11月の全国の百貨店の美術・宝飾・貴金属の売上高は2819億円と前年同期比15%増えた。冬のボーナスも増加し、高級ブランド売り場で『一般の消費者の姿も目立つようになった』(そごう・西武)・・・・・・」。

こんなふうに高級消費の好調さが延々と続く記事なので「バブルやん!」と思わず叫んでしまうくらいです。もちろんこの記事はバブルの危険を指摘することはなく、お決まりの新自由主義的決まり文句で終わっています。

「企業が前向きの経営判断に踏み切れるように、政府が規制緩和など成長戦略を着実に進められるかがカギとなる。」

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安倍を喜ばせたこの「41年ぶり、34年ぶり」の理由について、日経新聞では企業業績の回復などいろいろな理由を挙げていますが、直接には今年4月に行われた日銀の異次元緩和によるものです。巨額のマネーが金融市場にあふれています。そこに米連邦準備理事会(FRB)の量的緩和政策の変更が加わり、資金が新興国株式市場やその他の金融市場から日米欧の先進国の株式市場へと流れ込んだ、という構図です。

日銀は13年4月4日の金融政策決定会合で「量的・質的金融緩和」の導入を発表し、金融市場調節の操作目標を、金融機関同士が短期資金を貸し借りするときの利率である無担保コールレート(オーバーナイト物)から、市中に出回っている流通現金(紙幣と貨幣)と金融機関が日銀に開設している「日銀当座預金」の合計であるマネタリーベースに変更しました。

94年10月の金利自由化によってそれまでの政策金利であった公定歩合にかわって無担保コールレートが政策金利の役割を果たしてきましたが、2001年3月から2006年3月の量的金融緩和政策でも同じく無担保コールレートからマネタリーベースによる金融市場調節が行われ、06年には景気回復の兆候から再度コールレートによる政策に復帰していました。しかしいずれの時期を通してもコールレートの金利は1%を大幅に下回るもので、なんらかの経済的動揺による経済縮小に対応する金利引き下げ政策をとる余地はきわめて少ないものでした。

そこに襲いかかったのが未曾有の危機であるリーマンショックでした。FRBの量的緩和にあわせて日銀はゼロ金利を実施。世界中で金融危機と金融緩和が進行しました。バブルで膨れ上がった金融市場は急速に収縮する一方、「大きすぎてつぶせない」といわれる金融機関は、中央銀行による金融緩和によってさらに肥大化しました。肥大化した金融機関に滞留するマネーを押し出すために日銀はさらなる緩和策をとりました。これが2013年4月の日銀の異次元緩和です。

この異次元緩和で日銀は2%のインフレ目標を設定し、12年末のベースマネー138兆円を2014年末には270兆円にまで引き上げる決定を行いました。ベースマネー増加の中心となる当座預金残高は、12年末の47兆円から14年末には170兆円にまで引き上げるという目標です。当座預金を増やすには金融機関が保有する長期国債などの金融資産を日銀が購入する方法で行われます。長期国債の購入に限って言えば、12年末に保有していた89兆円の長期国債を毎月7兆円ずつ買い上げ、14年末には190兆円にまで引き上げる目標です。2001年の金融緩和の際の月4000億円の国債買い切りオペ(後に1兆2000億にまで引き上げられましたが)による当座預金残高目標の35兆円が鼻クソに見えるくらいの規模です。

FRBは2008年のリーマン危機を受けて、同年11月、10年11月、12年9月と3回の量的緩和を行い、3.5兆ドルのマネーを共有し、市中の紙貨幣およびFRBの準備預金は08年1月から13年末までに約4.5倍に増加しています。FRBは市場から米国債などを買って、市場にマネーを流し込んできました。その結果、米国債の利回りが押し下げられました。つまり儲けの対象としての「うまみ」が下がったわけです。その結果、投資資金はより「うまみ」のある株式などへと流れました。

世界中から日米欧などの先進国の株式市場に流れ込んだマネーは2621億ドル。内訳は米1110億ドル、欧州438億ドル、日本429億ドル、その他644億ドル。なんとも巨大なマネーの流れです。

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前日、12月30日の日経新聞朝刊では「キーワード2013 編集委員がやさしく解説」という見開き8ページをつかった特集が組まれており、そのなかには「アベノミクス」や「緩和マネー」という項目もあります。「緩和マネー」では当然、日銀の異次元緩和にも触れているだろうと思いきや、対象は前述のFRBによる量的緩和でした。記事によると3.5兆ドルの供給によって4.5倍に膨れ上がったベースマネーにもかかわらず、経済をめぐるお金の量を示すマネーサプライは1.4倍にしか増えていないのですが、「それでも、米ダウ工業株30種平均は2013年に約25%上がって最高値を更新。米住宅市場も、全米平均で1割強上昇した。高リスクの社債や商業不動産にも大量の資金が流れ込んでいる。なぜか。」と疑問を呈しています。

そして「ひとつには、FRB(による米国債)の大量購入で、安全性の高い米国債などの利回りが押し下げられたためだ。この結果、運用益の拡大をめざす投資資金がよりリスクの高い株式などの資産へと向かった。・・・・・・懸念は、こうして株や不動産、高リスク債券などに向かったマネーが過度に価格を押し上げ、市場のゆがみやバブルを招かないか。今のところは銀行に滞留しているマネーがいずれ市場にあふれ出すとの見方もある。」と結んでいる。

FRBの政策に対するこの指摘は、アベノミクスを支えている唯一の政策である日銀の政策に当てはまる指摘なのだが、驚いたことにこの大特集の「アベノミクス」のページでは、見出しで「大胆緩和で円安・株高に」とあるように正しく分析しているかと思いきや、バブルの「バ」の字もないどころか、むしろこのバブルを煽るような書きぶりなのです。

「黒田日銀は4月、金融市場へのお金の供給量を2年で2倍に増やすと決め、2年を念頭に2%の物価上昇を達成すると約束した。政策の急転回に市場は驚き、海外の投資家を中心にアベノミクスの方向性に沿った『日本株買い・円売り』が膨らんだ。」

「アベノミクスによって市場の先行きの見通しが強気になり、次いで家計や企業経営者の気持ちが明るくなった。『今度こそ日本は変わるかもしれない』。そんな期待が高まり始めたのは確かだ。期待は確信に変わるのか。期待先行の景気回復の動きが働く人の収入増や設備投資の本格回復へとつながり、さらにある生産や消費に結びつく。そんな好循環が欠かせない。」

事実上の日銀の国債引き受けでつくられた株高・円安が生み出す「期待」? それが「確信に変わる」?それこそバブルの再演でしょう。株はまだまだ上がるという「期待」、日銀はまだまだ国債を買うという「期待」、いずれバブルは破綻するという「期待」、金持ちのおこぼれがそのうち庶民にまで広がるという「期待」・・・・・・。そんな期待が確信に変わったところで、1000兆円にものぼる国債の元利払いは、庶民からの収奪、労働からの搾取という構造的な仕組みはなんら変わるところはありません。

最初に紹介した大納会で、安倍首相はこんなふうにも述べています。

「大切なことは、まだ今日、明日ありますから、このお金を皆さんがしっかり使っていく、今年中にですね。来年の正月もどんどん、お屠蘇気分に乗って使っていって、お金をぐるぐる回していく。これが大切ではないのかなと思います。・・・・・・皆さん、来年もアベノミクスは、『買い』です! このことを宣言したいと思ってやってまいりました。どうぞ皆様、良いお年をお迎えください。」

「お屠蘇気分に乗って使っていって、お金をぐるぐる回していく」?

どこのペテン師的証券マンのセリフなのかと思います。そんなことは自分のお年玉くらいでやってほしい。ふつうは、そんなことは国債や税収をあてにしてやることではないだろうとおもうのですが、少数者が支配する国家とはそもそもそんな歴史を繰り返してきていると思えば、安倍首相の「アベノミクスは『買い』」発言も、うれしさのあまりつい本心を吐露してしまったのか、と思わなくもない。

2014年が「あばら家に平和を! 宮殿に戦争を!」の一年になりますように。
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