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[attac_ml:3665] Re:アイルランドの消費税(代理投稿)
2013年10月2日
もうひとつ、安倍が昨日発表したことがあります。
「法人実効税率の引き下げを真剣に検討」
です。
これについて、すこしまえの9月29日の日経新聞の「けいざい解読」というコラムに、小竹洋之編集委員が「法人減税は企業優遇か」「成長の果実、家計にも」というタイトルでこんな風に書いています。
「家計の負担増と企業の負担減という組み合わせは評判が悪いが、ステレオタイプの企業優遇批判で問題の本質を見誤らないようにしたい。」
「問題は法人課税だけではない。OECDがはじく『タックス・ウェッジ』は、社会保険料と所得税の負担が雇用者所得のどの程度を占めるかを示す。この割合が高いと雇用のコストが膨らむ。」
「12年の日本の割合は単身者で31%。社会保険料の負担増が響き、00年から6ポイント上昇した。先進国平均の36%を下回るとはいえ、低下や横ばいが多い欧米とは対照的だ。今後は企業のコストを抑える年金・医療の抜本改革も問われるだろう。」
つまり、いまは労働者と企業の折半で負担している社会保険料を、今後は企業負担を減らすように見直せ、ということです。ひどいはなしだ。
小竹はそのような批判を分かっており、つづけてこう述べています。
「しかし公的な企業負担の軽減には感情的な反発がつきまとう。」
そしてブルジョアイデオローグの本領を発揮してこう述べます。
「企業に重い法人税や社会保険料を課せば、結局のところ家計にしわ寄せがいく。その点が十分に理解されているとは言いがたい。」
そして分かりづらい言い回しでこうのべます。
「米コロンビア大のスティグリッツ教授は自著『公共経済学』にこう記した。『企業は法人税を負担していないという点で、経済学者の意見は一致している。』企業は人件費や製品価格を調整し、法人税の多くを家計に転化しているとみるのが経済学の主流だ。『米国の法人税負担の70%程度は労働者に帰着する』という米議会予算局の試算もある。」
「東大の岩本康志教授は社会保険料の企業負担についても『大部分が労働者の資金に転化される』と話す。企業の重荷を下ろす改革は最終的には家計の利益にもなる。」
どうですか?分かりづらいですよね? ぼくは2~3回読んで、やっと言いたいことが分かりました。
つまり、法人税や社会保険料を引き上げても、企業はその負担分を労働者からの搾取分で補うだけであり、逆に言えば法人税の負担や社会保険料の法人負担分を軽減すれば、最終的には家計の利益(労働者の賃金)にもなる、ということなのです。
なるか!
そして、いつものようにこんな呪文を唱えます。
「財源を確保しながら法人実効税率を引き下げることができれば、成長力の強化につながる。その成果は家計にも徐々に還元されるだろう。」
されるか!
そして最後に申し訳程度に(本当に申し訳程度に)こう付け加えています。
「アベノミクスの追い風も受けて、収益を拡大し、雇用の増加や賃金の上昇につなげる企業自身の努力も要る」
アベノミクスの第一の矢からしてすべて労働者のフトコロと心臓を射抜くものであり、アベノミクスの「追い風」は、労働者にとっては「向かい風」のなにものでもありません。
ただ、「問題の本質を見誤らないようにしたい」という小竹氏の戯言は、まったく逆の立場から言うと正しいなぁ、と。
「一方が多く取れば取るほど他方の取り分はそれだけ少なくなり、一方が少なく取れば取るほど他方の取り分は多くなるであろう。量が決まっているばあいにはいつでも、その一方がへるのに反比例して、他方がふえることになる。賃金が変われば、利潤はそれと反対の方向に変わることになる。賃金が下がれば利潤は上がり、賃金が上がれば利潤は下がることになる。」(『賃金・価格・利潤』、カール・マルクス、1865年6月)
右も左も「賃上げ」を言う人が増えてきました。安倍の場合は、消費増税のための「にんじん」でしょうが、左の人間は「問題の本質を見誤らないようにしたい」ものです。
『賃金・価格・利潤』の最後にマルクスはこう記しています。
「公正な一日の労働にたいして公正な一日の賃金を!という保守的なモットーのかわりに、彼らはその旗に『賃金制度の廃止!』という革命的な合言葉を書きしるすべきである。」
「労働組合は、資本の侵害にたいする抵抗の中核としては十分役にたつ。その力の使用に思慮分別を欠けば、それは部分的に失敗する。現存の制度の諸結果にたいするゲリラ戦だけに専念し、それと同時に現存の制度をかえようとはせず、その組織された力を労働者階級の終局的解放すなわち賃金制度の最終的廃止のためのてことして使うことをしないならば、それは全面的に失敗する。」
全面的に失敗した労働組合に押し上げられた政権の末路は全面的な失敗でした。
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