中国の銀行貸出金利の下限撤廃の報道ぶり(2013年7月21日)

2013年7月21日にattac首都圏の会員メーリングリストに投稿したものです。

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[attac_ml:3547] 中国の銀行貸出金利の下限撤廃の報道ぶり
2013年7月21日

金融の話なので投稿します。

中国人民銀行(中央銀行)が貸出金利の下限規制を撤廃、というニュースに対する、日本国内の報道ぶりのあまりの新自由主義ぶりに呆れています。

中国の「影子銀行」(影の銀行)についての懸念が広がる中、7月19日、中国人民銀行は銀行の融資金利(6%)の下限規制(4.2%)を撤廃すると発表。

これまで国有企業へ偏っていた銀行融資が、銀行間の競争によって民間企業にも融資が回るようになる、という解説が日本でも出回っています。

また、厳しすぎる銀行規制が、影子銀行を生み出した理由だとする解説もあります。

そして、金融改革は道半ばであり、さらなる改革(規制緩和)を進めなければダメだ、という論調が中心です。

しかしこれはおかしな主張です。

影子銀行はGDPの6割にあたる400兆円もの規模にのぼり「不良債権の規模は220兆円あっても不思議ではない」(渡辺博史・JBIC副総裁)にまで膨れ上がっています。

不良債権の中身は、官僚の業績と汚職のためだけに地方政府によって行われた誰も買わない高級マンション開発、資本主義生産の無政府性が引き起こした過剰生産・過剰投資のツケとして赤字転落した民間企業の資金繰りなどなどです。

このような投融資案件に、リスク覚悟で融資金利を引き下げて融資する銀行家がいるとすれば、それは何か別な意図があっての融資としか考えられません。まさにドラマ「半沢直樹」の世界です。

「撤廃されたのは融資金利だけで、預金金利はまだ固定されたまま」だとか「厳しすぎる銀行規制が影子銀行を生み出した」とか騒ぎたてさらなる金融緩和を叫ぶ主張には注意が必要です。

中国に金融緩和を要求しているのはIMFやグローバル資本だけではありません。先にあげた地方官僚や民間企業だけではなく、銀行システムそのものが、一層の緩和を求めています。影子銀行の資金源の一つとなっている高利回りの「理財商品」は銀行を通じて販売されています。サブプライムのときは儲かる商品として銀行がサブプライム商品をつくって売りまくるように販売会社などに「依頼」したことが危機を拡大させた理由の一つでした。中国でも預金金利が3%に固定されていることから、もっと利子の高い商品を販売することで資金を集めて、それを企業や富裕層に販売して荒稼ぎをしてきました。

預金金利規制を撤廃すれば、それに上乗せされたさらなる高利回り商品が開発・販売されるだけです。必要なことは金利の緩和ではなく、錬金術よろしくどんどん儲かることを売りにして作られる投機商品に対する規制です。

しかし中国政府は規制ではなく、いっそうの自由化(市場による自動的な調整、資本市場の育成、資本取引の自由化)によって問題を解決しようとする流れに、すでに転換しています。

今回、貸し出し金利の下限撤廃だけが大きく報道されましたが、中国人民銀行はその他に、固定化されていた手形割引率を完全に自由化(上下限撤廃)し、農村信用社の貸出利率の上限を撤廃したことも見逃せません。とくに手形割引率の自由化は、手形業務を通じ他銀行融資や銀行信用から、証券市場等の資本市場へのシフトの一環であるとも一部では言われています。

中国政府は資本市場の育成を掲げています。資本市場には十分な流動性が必要であり、あわてて自由化してしまうと、グローバルマネーが一気に流れ込むことから、中国政府は慎重に、そして着実にこの歩みを進めています。今年3月に総理に就任した李克強氏は、従来の金融自由化路線をさらに強力に推し進めるだろうと「市場関係者」は希望的な予測しています。

今回の貸し出し金利の下限撤廃は、影子銀行の説明をG20で求められた中国政府によるブラフだという主張もありますが、グローバル資本主義のルールに沿った改革であり、それは決して外圧だけではなく、中国国内の資本主義システムの構築(構造改革と呼ばれていますが)に必要な改革でもあると思います。

そのようなシステムの構築と発展で、中国の大多数の人々が幸せになることができるのかは大いに疑問です。このシステムは中国以外の世界中で何度も破たんを繰り返し、そのツケが99%の人々に押し付けられているのですから。このシステムが中国で破たんした暁には、「倍返し」(半沢直樹)どころの騒ぎではないなぁ、というのがいまの率直な感想です。

「日本でも性急な金融緩和のツケがいまだに清算されていないので、中国は慎重に緩和を進めるべきだ」というもっともらしい意見をのべる識者もいますが、目指すべき方向性は同じなのかよと呆れてしまいます。200年以上かけて発展してきたこのシステムがいま世界中で大失敗しているのですから、中国は何百年、何千年かければいいのでしょう? 

「同じ失敗は繰り返さず教訓のほうを生かせばいい」という主張もあるかもしれませんが、なんで影子銀行という同じ失敗がこんなに早く繰り返されたのか?とも思ってしまいます。このシステムは教訓よりも失敗のほうを繰り返すみたいです。ツケを庶民に押しつけることができれば、かれらにとっては成功なのかもしれませんが。

押しつけられたツケを「倍返し」するくらいのグローバルな社会運動。これこそが必要な教訓ではないか、とおもいます。

与党の議席倍返しが予想される厳しい選挙結果になりそうです。
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