続・金融緩和の隠れたコスト(2013年6月11日)

2013年6月11日にattac首都圏の会員メーリングリストに投稿したものです。

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[attac_ml:3473] Re:金融緩和の隠れたコスト
2013年6月11日

先日、日銀の金融緩和についてのメールを投稿しましたが、ちょうどよい本が出版されましたので紹介がてら。


『国債がわかる本 政府保証の金融ビジネスと債務危機』
山田博文 著/大月書店 1500円+税
http://www.otsukishoten.co.jp/book/b110079.html


サブタイトルからも分かるように、国債が金融ビジネスのタネになっている、という内容です。国債(国の借金)を銀行など金融資本の側からみたものです。

「国債は、政府の金融債務であり、同時に、民間部門にとっては金融資産」(14頁)
「国債の発行が新たなビジネス・チャンスを提供し、実体経済が低迷しているにもかかわらず、国債ビジネスを通じて金融機関・投資家は、莫大な利益を獲得してきた」(18頁)

空前の利益を上げた三菱東京UFJ、三井住友、みずほの三大メガバンクの2012年3月決算で、業務純益にしめる国債売買差益の割合が21.1%。つまり利益の5分の1は税金など、詳しいデータももちろんあります。

戦前戦中の日銀による国債引き受けとその結果など、歴史的な解説もあります。
もちろんこの4月の日銀の「異次元緩和」についても言及されています(その後の国債市場の混乱はさすがにありませんが)。

世界に先駆けて異次元に飛んでしまった日本経済・日本国債についての簡明な入門的解説書となっています。

現在の金融が優先される社会になった理由の一つに、巨額の国債発行があった、という次のような指摘は重要です。

「日本経済が構造的な不況に陥り、国債大量発行期となった1975年以降になると、金融機関の引き受けた国債の市中売却制限が解除され、国債が流動化され、国債流通市場が退場する。もはや日銀による国債買いオペによっては消化しきれないほどの大量国債が発行されるようなったからでもある。とくに第二次オイルショックや円高不況などにより経済的な混迷が深まるにつれて、国債管理政策は、金融機関による国債の自己売買業務(国債リーディング)を認可し、銀行の国債売買が飛躍的に増大するなかで、大口の国債流通市場へと成長していく」(67頁)

そして、市場関係者の利便性のために、国債の種類、発行方式、売買方式(先物)、インフラなどが多様化され整備されていきます。

その結果、2007年には1京2323兆円もの国債売買高という巨大市場に成長しますが、

「雪だるま式に膨張する国債発行高と累増する国債残高の前に、絶えず価格暴落・金利暴騰のリスクにさらされ、国債市場を起点にした金融市場の混乱や経済危機の懸念を抱え込むもとにあった。このようなリスクをできるだけ抑え込むため、結局のところ、国債管理政策の最後のよりどころとなるのが、中央銀行=日本銀行の信用供与と金融政策である」(69頁)

として、黒田日銀の異次元緩和へとつながったと指摘しています。

まだ半分読んだところですが、後半は「第IV章 グローバル化する政府債務の危機」など興味深い内容です。金融取引税導入の呼びかけもしています。

ギリシャ国債危機の解決方法(元本の53%の債務不履行)などを評価しているなど、どうかな?と思うところもありますケド。

あと不況の原因を賃下げとリストラであるとか、不況から脱出するには、賃金カットをやめ、リストラをやめる必要があるとか、という不況の現象と原因を混同してるのでは?というような主張もありますケド、まあそのへんは置いておいたとしても、良い本だと思います。

最後の、企業国家(日本)、軍事国家(アメリカ)、福祉国家(ドイツ・フランス)のどのモデルを選択するのか(147頁~)、というのもちょっとどうよ~とは思いますが、現在編集中のattacスペインの『もうひとつの道はある:スペインで雇用と社会福祉を創出するための提案』(仮題)をがんばって出版にこぎつけて、スペイン型というのもあるよ、と認識してもらいましょう~。
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