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[attac_ml:3465] 金融緩和の隠れたコスト
2013年6月4日
先日のattac発送作業の後の交流会で、日銀の異次元緩和の話になりました。
以下は、その続き、ということでご容赦ください。
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異次元緩和から2ヶ月。金融市場の混乱が続いていますが、今日の日経新聞朝刊(2013/6/4)のマーケット総合2面のコラム「大機小機」のタイトルは「金融緩和の隠れたコスト」。文末は以下のように結ばれていました。
「長期国債を大量に購入する日銀は、金利の上昇で巨額の損失を被る。・・・これは、デフレからの脱却で民間の銀行や保険会社などが負担する国債価格下落の影響を、日銀が実質的に肩代わりしたものだと解釈できる。損失は、日銀将来の収益で償却する必要がある。このため長期的には、日銀の損失は将来の日銀から政府への納付金の減少として現れることになるだろう。」
このコラム、郵政民営化やアベノミクスなど、日本を代表するブルジョア新聞ならではの経済的視点を入れながらの応援団的内容が目立ちますが、たまに率直に経済に潜むリスクについて述べることがあります。
日銀は金融資産などによる利益を政府に収めています。たとえば2012年4月1日~2013年3月31日の会計年度では約5470億円を国庫納付金として政府に納めています。国債購入による巨額の損失はこの納付金=政府の収入の減少になります。
4月の異次緩和以降、国債市場の混乱に対して「新発国債の7割を日銀が市場から購入することになるので、流動性(売買の余地)が制限され、わずかな取引でも価格と利回りが大きく動くリスクがある、市場に日銀が介入した悪影響だ」と大手銀行などによる批判が聞かれました。
そのころから、えらい身勝手な言い分だなと思っていましたが、このコラムでも分かるように、じゃあ国債リスクも東電リスクもアフリカ投資リスクも、税金に頼らずにぜんぶ銀行が自分で引き受けてやってくれ、と言いたいくらいです。
日銀による大量の国債購入は、アベノミクスのための財政ファイナンスが最大の目的だとおもいますが、それに伴う国債価格の下落リスクを、大量に国債を保有している銀行や保険会社などから日銀が引き受けるという、バブル崩壊以降に行ってきた銀行救済政策の延長です。
こんな指摘もあります。
「国債は国の債務であるものの、市場における主要な金融資産としての性格も有している。また、バブル崩壊後の経済バランスシート調整においては、民間セクターの過大な負担を、一旦、公的セクターが肩代わりする過程として重要な機能を持つ。即ち、国債は民間の過剰債務を抱えて大きく膨れた『身代わり地蔵』であったと考えることができる。」(『世界国債暴落:世界を蝕む日本化現象』高田創、柴崎健、石原哲夫、東洋経済新報社、2010年11月、15頁)
この「身代わり地蔵」は、規制緩和と緊縮財政という形で、人びとの肩に重くのしかかってきます。「(国債への依存は)賃金労働者を従順、節倹、勤勉にし、そのうえに・・・・・・過度の労働に堪えさせるための、最良の制度であるとした」と紹介したマルクスの言葉を思い出します。
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