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[attac_ml:3398] Re:Re: トヨタ純利益1兆円台?
2013年5月9日
この日経のトヨタ記事ですが、輸出については、「主力市場の北米や東南アジアなどで販売が伸びる」(1面)、「国内生産のほぼ半分を輸出に回すため、単独決算は特に為替に左右されやすい。」(3面)などの記述もあります。
従来なら平均為替レートが1ドル=90円でないと単独決算が黒字にならなかったが、「カイゼン」のおかげで、前期平均レート83円でも黒字化が達成できた、として、先に紹介した労働強化、安全軽視、下請けイジメが紹介されています。
なので「円安になっても(部品の調達価格を)値上げしなかったから」ではないと思います。円高の為替リスクを下請けと労働者に押し付けたからじゃないでしょうか。
長くなるので書きませんでしたが、記事ではこんなことも言っています。
「今後の課題は最大市場となった中国をはじめとする新興国戦略だ。中国では独フォルクスワーゲン(VW)が17%とシェア首位だが、トヨタは5%程度で低迷する。新興国の環境対応車でも、割安な価格で低燃費を実現する『ダウンサイジング』で欧米勢が先行し、ハイブリッド普及率はなお低い。持続的な利益成長には、中期的な市場拡大が見込まれる新興国での競争力強化がカギを握る。」
うーん、中国で日本並みのモータリゼーション化が進むと、地球がいくつあっても足りないと思うんですが・・・。「持続的な利益成長」とか、こわい。
もうひとつ、長くなるので書きませんでしたが、愛読紙である東京新聞の2013年4月21日の社説は「企業は国民のために」というタイトルでした。それを思い出しました。
◎週のはじめに考える 企業は国民のために(東京新聞2013年4月21日)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2013042102000124.html
社説の内容は、アベノミクスで賃上げと言われているが、実際には春闘の賃上げ幅は昨年を下回っている、企業は内部留保を200兆円溜め込んでる、一方で働く人の多様化の触れ込みで導入された非正規雇用が拡大して4人に一人が年収200万円以下、多くの企業が「人件費が削減できた」といっている、経団連は企業行動憲章である「従業員が安全で働きやすい環境を確保し、ゆとりと豊かさを実現する」を実行しなければならない、というとてもよい社説なのですが、最後のところが、どうもしっくりとこないのです。
「企業は日本を母国とする以上、国民経済に資する行動を貫くべきです」として、「ひとつのモデルケース」と断っていますが、トヨタのケースを紹介しているのです。
「トヨタ自動車の子会社が岩手県で生産している小型ハイブリッド車、アクアの一二年度販売台数が二十八万台に達し、プリウスを抜いてトップの座につきました。」
「燃費性能やコンパクトな車体が人気を呼んでいます。工場の従業員二千六百人に加え、千社に上る部品供給会社の雇用も増えています。発売から一年余、既に六万台近くが米国などに輸出され、海外の需要を取り込み始めました。」
「宮城県に企業内訓練校を開校し、東北のモノづくりの拠点づくりにも乗り出しています。トヨタの目標は国内生産三百万台。技術革新、技能伝承に最低限必要な台数を維持し、プリウスやアクアのようなヒット商品を生み出す戦略です。」
海外の需要の取り込みとは、失業の輸出であり、もしその代わりにTPPが約束されているのであれば、それは僕たちのモデルケースではなく、大企業と大国の富裕層だけを利するモデルケースではないのか、と。内需拡大、輸出も輸入も必要ない、という自給自足経済主義がよいとは思いませんが、トヨタの国内生産300万台は、あくまで世界市場における1000万台を維持するためのコアだとおもうのです。
先の日経新聞の記事では「今後の課題は最大市場となった中国をはじめとする新興国戦略だ。」とあります。中国のトヨタ車販売店は、競争に勝ち抜くために大変な売上目標を押し付けられ在庫解消に必死になっていることは想像に難くありません。新興国のひとつ南アフリカ・ダーバンには地元最大の企業としてトヨタ自動車工場がありますが、自動車用座席をつくる現地のトヨタ紡織工場では昨年手当てをめぐって争議が起きています(がんばれ!)。
最大市場としての新興国を対象とした戦略とは違う「戦略」をぼくらは考えるべきなのではないか、とも思うのです。
東京新聞の社説は最後にこうのべています。
「本業の土台を立て直し、賃金を増やして家計の財布のひもを緩めさせ、景気をよくしてデフレから抜け出す。企業の出番です。」
賃金を上げて、景気をよくして、デフレから抜け出す。アベノミクスのいう金融緩和と国債発行と雇用破壊で「日本を取り戻す」よりもマシだとは思いますが、賃上げで景気回復?と思ってしまいます。
総会のときに皆さんに「いいほんですよ」と紹介した『アベノミクスの陥穽』という本も、最後まで読んでみると、同じような論調でややがっかりしました。かつては財界が主張していた「賃上げで物価が上がる」という主張に対して、賃金と商品の費用価格とは直接の関係はない、と正しく主張していたとおもうのですが、おなじ論理でいけば賃上げで物価は上がらないと思うのです。もちろん東京新聞も『アベノミクスの陥穽』も、「物価を上げろ」といっているのではなく、景気をよくしろ、といっていると思うのですが、どうも「賃金」という搾取の仕組みの本質をスルーして「景気をよくしろ」と言っているように思えてならないのです。
『アベノミクスの陥穽』
http://www.kamogawa.co.jp/kensaku/syoseki/a/0604.html
大ヒットしている吉川洋『デフレーション』(日本経済新聞出版社)の読後感想も同じようなものでした。
デフレの原因は賃金が上がっていないことにある、というのがこの本の主張です。日本的ケインズ主義の主張でした。
話があちらこちらに飛んでしまいましたが、以上、おもったことをつらつらと書きました。オチ、ないですよ。
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