TINA(オルタナティブはない) VS. もうひとつの道はある

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attacスペイン科学委員会メンバーの3人の経済学者によるスペイン危機と新自由主義に対する怒りの書『HAY ALTERNATIVAS-Propuestas para crear empleo y bienestar social en España』の邦訳『もうひとつの道はある:雇用と社会福祉のための提案』がついに出版されました!

訳者のひとり、海老原弘子さんのブログ「RAMON BOOK PROJECT」で、目次、日本語版まえがき、訳者あとがきが見られます。この記事の説明も秀逸です。ぜひご覧あれ!

本書のタイトルは『もうひとつの道はある』です。このタイトルは、「新自由主義というオルタナティブしか道はない」という故サッチャーの「There is no alternative」に対抗してオルタグローバリゼーション運動が掲げた「Another World is possible!(もうひとつの世界は可能だ)」とおなじものです。

ところで、15日の臨時国会の所信表明演説でも「日本は『世界で一番企業が活躍しやすい国』を目指します」と述べた安倍首相、じつは今年6月のG8サミットでイギリスを訪れた際に、所信表明演説と同様に「日本の市場をオープンにすること」と述べた講演のなかで、このサッチャーの「There is no alternative」とアベノミクスを重ね合わせて述べています。

以下は、そのときにattac首都圏のメーリングリストに投稿したものですが、記録としてブログに掲載しておきます。

さて本書『もうひとつの道はある』は新自由主義に対する怒りに満ちた反駁の理論書です。サブプライムローンの破綻を契機とした金融危機はもとより、スペインの経済危機の根底にある新自由主義的改革の破たんに対して、事実をあげて反論するだけでなく、「もうひとつの道はある」と述べて、いくつもの具体的な改革案を示しています。ぜひお買い求めを!


% % 以下、attac首都圏への投稿 % %


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TINA(オルタナティブはない)VS.もうひとつの道はある
2013年6月23日


6月19日、G8サミットを終えた安倍が、世界の金融の中心であるシティ・オブ・ロンドンのド真ん中にあるギルド・ホールで講演しました。

安倍首相の講演(2013/6/19)

このシティについては、以前にMLでも紹介した書籍『タックスヘイブンの闇』(ニコラス・シャクソン著、朝日新聞出版)の12章「怪物グリフィン」で、ロンドン中心部のテムズ川沿いの約2平方キロの小さな区画であるにもかかわらず、かつてはイングランド銀行の庇護下にあり、その後も歴史的な経緯からさまざまな法的規制から除外され、世界中のタックスヘイブンから富をあつめる「クモの糸」の中心部分的存在であり、財務大臣やエリザベス女王でさえその権威下にある様子が描かれています。(グリフィンは空想上の怪物で、シティ・オブ・ロンドンの紋章の真ん中に描かれています)。

「2008年には、国際的な株式取引の半分、店頭デリバディブ取引の45パーセント、ユーロ債取引の70パーセント、国際通貨取引の35パーセント、国際的な新規株式公開の55パーセントをシティが占めていた」(359頁)

「ニューディール規制の負担を回避しようとするアメリカの銀行に逃げ道を提供したのは、1950年代後半、イギリスの公式な帝国が崩壊したちょうどそのときロンドンに誕生した規制のないオフショア・ユーロ市場だった。」(359頁)

「シティは1980年代には富裕なアラブ人を迎え入れ、1990年代にはカネ持ちの日本人や石油富豪のアフリカ人を迎え入れた。そして最近は、キプロスのようなコンデュイットの助けを得て、ロシアの財閥たちに自国の法執行機関の力が及ばない抜け穴を提供することで、彼らを積極的に誘致してきた。」(361頁)

「金融の魔都」であるこのシティの詳細は、この本を読んでもらえるとよく分かりますが、安倍首相は、この世界最大のタックスヘイブンであるシティのロード・メイヤー(シティ市長)であるマイケル・ロジャー・ギフォード市長ら400人の投資家を前に、「日本を政治的、経済的に売り込むため」に講演をぶちました。

この講演は、アベノミクスが、ケインズの一般理論の5年前に時の蔵相、高橋是清が実施した日銀引き受けなどの金融緩和政策=ケインズ政策に勇気をもらい、アベノミクスがサッチャーの「TINA」(There is no alternative オルタナティブはない=新自由主義しかない)の日本版であることをあけすけに語ったものであり、福島原発事故をビジネスチャンスに結びつける電力自由化の狙いをあけすけに語ったものだといえます。

安倍首相は講演でこう語っています。

「高橋(是清)が、才能をいかんなく発揮したのは、大恐慌が世界を襲った1930年代のことです。実行したのは、典型的な、ケインズ政策でした。ジョン・メイナード・ケインズが、『一般理論』を発表する5年前、高橋は1931年に、ケインズを先取りする政策を打ち、深刻なデフレから、日本を、世界に先駆けて救い出すことに成功したのです。高橋は、私を勇気づけてやまない先人です。」

「日本の雰囲気は、大胆な金融政策と、機動的な財政政策という、私の射込んだ一本目、二本目の矢で、確かに大きく変わりました。しかし最も大切なのは、三本目の矢である成長戦略です。成長戦略のコンセプトを、私は、チャレンジ、オープン、イノベーションという、3つの言葉に託しました。その要点をお話しする前に、これは日本にとって、いまは亡きマーガレット・サッチャーさんにならうなら、『TINA』ということ、There is no alternativeだということを、ご理解ください」

「日本の再興に必要なものは、古い日本を新しくし、新しい日本をもっと強くする、強力な触媒です。対日直接投資に、その期待がかかります。……ひとつ、例を紹介します。限りないイノベーションの起こり得る、大きな市場が、日本に現れようとしています。電力市場のことです。福島を襲った悲劇は、終息しておりません。被災者の苦労を思うと、いても、立ってもいられない思いがしますしかし、電力市場を改革するなら、最大の危機を、機会に変えるべし。私のなかで、次第にそういう考えが強くなりました。原子力発電の安全性を高め、不拡散レジームに、貢献し続けること。世界の先頭を走ってきた日本は、ここから撤退する道を選びません。……私たちは、欧州が、20年以上かけ、電力市場の自由化、開放と、発電・送電システムの分離、そして電力市場の連携と統合を進めてきた歴史に、多くを学びました。そして日本でも、つい先日、半世紀以上続いた市場の寡占に終止符を打ち、電力市場の自由化と、送配電の分離を進める意思決定をしたのです。これは、必ずや、広範なイノベーションのトリガーになります。投資を惹きつけてやまない、膨大な機会が現れるはずです。」

以上、安倍首相の講演(2013/6/19)より

アベノミクスが現代のケインズ政策だというのは、ちょっとまえから感じていたことです。良心的なケインジアンの方には申し訳ないのですが、安倍の言っている事は正しいと思います。

つまり資本主義の歴史的な危機の前に、これまで資本主義がそのサイクルにあわせて採ってきた経済政策である自由放任政策(昭和恐慌、世界恐慌でおわり世界大戦へ)→ケインズ主義(戦後復興で軌道に乗るがオイルショックで終わる)→TINA=新自由主義(労働運動を解体して活気づくがサブプライムで終わる)のサイクルをもういちど循環するものとして「アベノミクス」が、その触媒になると宣言したようなものです。

安倍首相の全文もそれほど長くなく、わかりやすいので、ぜひ下記の首相官邸のリンク先からみてください。

安倍首相は演説の中で、90年代のバブル崩壊後のツケをなんとか金融投機でしのごうとしていた日本市場でぼろもうけをたくらんでいた投資銀行のひとつであるスカンディナビア・エンスキルダ銀行日本部門のトップとして90年代中ごろから2000年まで日本で活動していたギフォード・シティ市長のギフォード氏に向けてこんなことを言っているのです。

「市長、市長は、S.G. ウォーバーグでキャリアを始めた方ですから、1980年代の初め、シティのマーチャント・バンクが、こぞって東京に店を構えた時代を、よく覚えておいでですよね。あの頃以上の活気を、日本の随所で取り戻したいのです。ですから若い人を、『日本へ行け』と、どうか促してください。と、いうのも、国家戦略特区という、総理の私が、直接担当する場所で、徹底的な規制撤廃を図り、世界から資本と、叡智があつまる場を、日本にこしらえるつもりだからです。」

80年代はバブルでボロもうけしたでしょ、90年代にはデリバディブで日本企業をカモってボロもうけしたでしょ、そのバブルをもう一度東京でやります、夢よもう一度ですよ、とタックスヘイブンの中のタックスヘイブンであるシティ・オブ・ザ・ロンドンのド真ん中のギルド・ホールで、世界の金融界に向けて演説したということです。

安倍は「アベノミクス以外に、他の道はない(TINA)」と言っているのです。しかし、アベノミクスは働く人々のいまと未来、そして地球環境の犠牲の上で進められるというのは明らかだとおもいます。財政再建と経済成長という、大企業と金持ちの世界と日本のWin-Winしかない、という言い切る安倍政権に対して『もうひとつの世界は可能だ』の声を上げなければならないと思います。

現在翻訳がほぼ終わり出版に向けて準備を始めているattacスペインの本のタイトルは『もうひとつの道はある』(仮題)です。※出版されました

7月27日(土)の午後には、おなじみラバンデリアで、この本の出版前の宣伝を兼ねて、スペインの5月15日運動(広場占拠)のドキュメント映像『目覚めゆく広場』の日本語版(http://ramonbook.wordpress.com/)鑑賞会とattacスペインの本『もうひとつの道はある』のエッセンスを語ってもらうattacカフェを企画しています。また詳細がきまればお知らせします。※終了しました

ぜひ参加を。


【参考】
2013年6月19日 安倍総理大臣・経済政策に関する講演
2013年6月14日閣議決定 経済財政運営と改革の基本方針(PDF)



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