自民応援団のヒドイ本、『TPP黒い条約』

この半年ほど、ブログ掲載が滞っていました。attac首都圏の会員MLにはその時々で投稿してたんですけどね。ということで、やや古いかもしれませんがアーカイブとして掲載していきます。

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[attac_ml:3531] 自民応援団の中野剛志さんのヒドイ本、『TPP黒い条約』
2013年7月3日 水曜日

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昨日、書店に立ち寄ったときに『TPP 黒い条約』という新書を買いました。元経済産業省の役人で現在は評論家の中野剛志が『TPP亡国論』につづいて出版した新書です。『黒い条約』のほうは、TPPに反対する何人かの評論家や学者らとの共著です。あまりに**なので紹介します。

出版社のサイトから中野氏の「序にかえて」が読めます。

中野氏は、「稀代の批評家」と高く評価する保守派の論客、福田恆存を引いてこう述べています。

「日本人は、元来、和を尊ぶ国民性をもっていた。それが明治になって、他人を自己の敵とみなすかのような西洋の対人関係や、正邪・善悪・権利義務をはっきりさせようとする西洋の制度がもち込まれた。そして、日本の文化や日本人の国民性を省みない、性急かつ無批判な近代化が進められたのである。これこそが、日本および日本人の混乱の原因である。」

うーん、どう考えても日本の近代化は、日本的な天皇制にもとづいて進められ、日本人のみならず、アジア、世界の人々に大混乱と大破壊をもたらしたと思うんだけど・・・。

こういう思想上の異議については、さておくとしても、中野氏が書いている第一章「世界の構造変化とアメリカの新たな戦略―TPPの背後にあるもの」もヒドイ。全部アメリカが悪者になっている。

アメリカ型の自由貿易グローバリゼーションによって、「企業は、安価な資本財や労働力を求めて、海外投資や海外への委託生産を積極的に行ったために、国内の雇用は海外へと流出し、国内の製造業の衰退が加速するとともに、賃金も伸び悩むようになった。他方で、金融市場の自由化によって、金融部門が異様に発達した。・・・家計部門は、賃金の上昇によってではなく、負債と資産価格の持続的な上昇によって消費を拡大し、需要を生み出すようになったのである。」(32頁)と批判するのですが、日本もそうだろ、と。だからTPP交渉への参加をしようとしてるんだろ、と思うんですが。中野氏の論考のなかには、日本資本主義への批判はまったくありません。おどろきです。

対中関係を最重要視するようになったアメリカに対して、「日本はいかなる選択をするべきなのだろうか」と問い、こう述べます。

「アメリカにとって日米同盟の意義は著しく低下し、日本は中国の侵略から領土を守るのに、アメリカには依存できなくなる可能性が高まる。これに対処するには、日本が自らの防衛力を格段に強化するしかない。」(59頁)

自民応援団ですね。***―。

そして、

「日本はアメリカの一極主義=グローバル化に異を唱え、それに代わる経済秩序として、各国経済の多様性を重視し、各国の経済運営の自律性と自由貿易を両立させる『埋め込まれた自由主義』(GATT体制に象徴される管理された自由主義:引用者注)への回帰を提案すべきである。・・・TPP交渉に参加するのであるならば、ン本は、交渉の中で『埋め込まれた自由主義』への回帰を提案すべきであろう。幸いなことに、自由民主党外交・経済連携本部TPP対策委員会の『TPP対策に関する決議』は『埋め込まれた自由主義』にふさわしい提案となっている。」(60頁)

やっぱり自民応援団ですね。そしてTPP交渉参加推進者でもある。***ー。

そして、オバマもこの「埋め込まれた自由主義」の賛同者であるとして、オバマが2009年に大統領になる前にNAFTAを批判したときの演説を紹介しています。

「もし、我々が貿易の結果としての失業等の問題にもっと考慮を払い、競争により人々を奈落の底に落とすのではなく、労働や環境の基準が、世界中の世界水準を押し上げるように作用し得ると心から信じることができるようになるならば、それによって、初めて、我々は自由貿易の利益を享受できるのだ。そして、それが持続的な成果を生み、長期にわたり政治的な支持を勝ち得るものとなるのだ」(61頁)

中野氏は2009年以降のアメリカの気候変動条約に関する対応やNAFTA追認の姿勢を知らないのでしょうか。というよりも選挙前のリップサービスを真に受けてる?***。

で、論考の一番最後には、自民応援団の面目躍如、昨年末の総選挙直前に発売された『文藝春秋』2013年1月号に安倍が寄稿した「新しい国へ――戦後の歴史から日本という国を取り戻したい」と文章から次の一文を紹介しています。

「私は瑞穂の国には、瑞穂の国にふさわしい資本主義があるのだろうと思っています。自由な競争と開かれた経済を重視しつつ、しかし、ウォール街から世間を席巻した、強欲を原動力とするような資本主義ではなく、道義を重んじ、真の豊かさを知る、瑞穂の国には瑞穂の国にふさわしい市場主義の形があります。」(62頁)

結局最後まで自民応援団の中野剛志さんでした。

「***ー」と資本主義が大笑いしている姿が浮かびます。



◆『TPP 黒い条約』
集英社新書/定価:798円(税込)

目次
序にかえて/中野剛志
第一章:世界の構造変化とアメリカの新たな戦略―TPPの背後にあるもの―/中野剛志
第二章:米国主導の「日本改造計画」四半世紀/関岡英之
第三章:国家主権を脅かすISD条項の恐怖/岩月浩二
第四章:TPPは金融サービスが「本丸」だ/東谷 暁
第五章:TPPで犠牲になる日本の医療/村上正泰
第六章:日本の良さと強みを破壊するTPP/施 光恒
第七章:TPPは国家の拘束衣である―制約されるべきは国家か、それともグローバル化か―/柴山桂太

著者
中野剛志 評論家。元京都大学大学院准教授。主な著書に『TPP亡国論』。
関岡英之 評論家・ノンフィクション作家。主な著書に『拒否できない日本』。
岩月浩二 弁護士。「TPPを考える国民会議」世話人。
東谷 暁 ジャーナリスト。主な著書に『経済学者の栄光と敗北』。
村上正泰 山形大学大学院医学系研究科教授。主な著書に『医療崩壊の真犯人』。
施 光恒 九州大学大学院比較社会文化研究院准教授。主な著書に『リベラリズムの再生』。
柴山桂太 滋賀大学経済学部准教授。主な著書に『静かなる大恐慌』。


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