たたかいの場は国会から職場、地域、そして世界へ
ATTAC Japan(首都圏)@nother post project
10月11日、衆院本会議において賛成338、反対138で可決され郵政民営化関連法案は、参院に送られ、10月14日、参院本会議で賛成134、反対100で可決、成立した。
先の国会において衆院本会議で賛成233、反対228と5票の僅差で可決し、賛成108、反対125の17票の大差での否決した8月8日の参院本会議から、わずか2ヶ月前のことである。
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小泉自公連立政権は、マスメディアと金融・産業界の全面的支援を受け総選挙に打ってでたにもかかわらず、選挙区の総得票数では、郵政民営化賛成候補者が獲得した票よりも、反対候補者が獲得した票のほうが約30万票も多かった。郵政民営化法案は有権者の信任を得るには至らなかったのだ。にもかかかわらず、小泉自公連立政権は、小選挙区制度という政治的意見の多様性を排除する新自由主義選挙制度によって、衆院の三分の二を制することになった。先の国会でも、また選挙期間中も、そして今国会においても、郵政民営化が誰の要請であり、それはどのような結果をもたらすのかということをあいまいにしつつ、「改革か抵抗か」というイメージだけを押し出した戦略によって議席を拡大した。それは決して郵政民営化法案やそれがもたらす結果が多数の有権者に支持されたということではない。逆に過半数の有権者は、圧倒的な権力と財力を投入して宣伝された郵政民営化のイメージにだまされることなく、先の国会で郵政民営化法案に反対を投じた候補者に投票したのだ。希望の灯は燈りつづけている。
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民意を正確に反映しない小選挙区制度によって水ぶくれ的にふくれた小泉自公連立政権によって成立させられた郵政民営化法案によって、郵政事業という公共サービスは「商品」となる。郵便事業は同業他社との競争を迫られ、そのしわ寄せは労働者と利用者へと押し付けられるだろう。過疎地域の郵便局は撤退し、地域の荒廃はよりいっそうすすむだろう。郵便貯金や簡易保険にあつまる庶民のたくわえは国内外の多国籍金融資本によって奪われ、マネーゲームの掛け金として「金融市場」というカジノに投げ込まれるだろう。脆弱な社会保障を補ってきた庶民の貯金や保険はこうして多国籍金融資本のあらたな「商品」として、完全な自己責任のもとで食いつぶされるだろう。それは私たちが思い描く「もうひとつの世界」とは正反対の「新自由主義の世界」になるだろう。
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郵政民営化を求めたのは私たち市民ではない。それは350兆円にものぼる個人資産をあらたなマネーゲームの資金にしようとする内外の多国籍金融資本の要請である。それは、なんら資本を保有することなく本来であればとっくの昔に没落していただろう階層であるにもかかわらず、日本資本主義の歴史的経緯から、いまだに政治に大きな影響をあたえる可能性のある特定郵便局長らを中心とした古い利権構造を一掃し、弱肉強食の新自由主義グローバリゼーションのルールのもとにこの国の経済を作り変えようとしてきた多国籍産業資本の要請である。たたかいによってかち取られてきた労働者の権利を奪い、公共サービスを破壊し、人間生活と自然環境のすべてを「商品」とする社会をつくりあげる。これこそが郵政民営化の狙いの一つである。多国籍金融・産業資本に主導される新自由主義グローバリゼーションは「小泉」という格好の人材を見出し、彼を権力につけ、そして存分に利用し、このくにを作り変えようとしている。
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郵政民営化法案は、2007年から2017年までの10年間のスパンで民営化を設計している。私たちはこの10年という期間を、民営化の問題点を暴き、それに反対し、職場と地域、そして世界から、新自由主義グローバリゼーションという流れを逆転させる運動を作り上げるために全力を尽くすだろう。民営化にむけた動きの中で、職場内の競争や労働強化、人権侵害はこれまで以上に厳しくなるだろう。とりわけ権利を主張するたたかう労働組合や、無権利状態にある非正規雇用労働者たちに、その矛先はむけられるだろう。地方のサービスは切り捨てられるだろう。それは利用者や地域へのサービスの低下となってあらわれるだろう。今回の国会を中心とした郵政民営化に反対するたたかいを通じて、私たちは公共サービスのあり方、労働のあり方を深く考えさせられた。これは今後のオルターグローバリゼーション運動が取り組むべき課題を浮き彫りにした。私たちは地域から郵便局を包囲し、郵便局で働く労働者とともに、この社会のあり方、働き方、生き方を考え、そして変えていく取り組みを継続するだろう。たたかいの場は国会から職場と地域へと移る。総選挙において郵政民営化反対票が賛成票を上回ったという事実はここで重要な意味を持つだろう。
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職場と地域、労働者と利用者のたたかいををつなぐことになった郵政民営化法案は、もうひとつ、日本の運動とと世界の運動をつなぐことになった。民営化はひとり日本だけで進められてきたものではない。通信や金融の民営化は世界的にも進められており、それは水や教育などの公共サービスという権利や生活に密着する分野にまで拡大してきた。1973年9月11日にアジェンデ政権をCIAの援助によってクーデータで打ち倒したビノチェト独裁のチリが、アメリカの多国籍資本のための民営化の実験場となったことは有名である。その後も、経済的、軍事的に影響力を行使してきたG8をはじめとする世界の大国は、世界銀行や国際通貨基金(IMF)、世界貿易機関(WTO)のサービス貿易に関する一般協定(GATS)など通じて、各国に公共サービスの民営化を強要してきた。人々の生活と自然環境のすべてが「商品」とされ、富めるものはより豊かなサービスを享受し、貧しいものは一切のサービスから排除されようとしている。このような新自由主義的グローバリゼーションがもたらす貧困に対して、「もうたくさんだ!」とメキシコのサパテ・u档Bスタが蜂起してから10年、抵抗は全世界に広がった。民営化に抵抗する世界の社会運動は困難なたたかいを強いられながらも持続・拡大し続けている。今回の日本における郵政民営化反対のたたかいは、世界のオルターグローバリゼーション運動からも注目、激励された。8月8日の参院での法案否決のニュースはあっというまに世界に広がった。「おめでとう!」のメールが世界各地の社会運動から相次いだことは、このたたかいが世界にいかに注目されてきたかを示していた。
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残念ながら、郵政民営化法案は可決、成立した。「小泉」というスポークスパーソンを見出したこの国の新自由主義グローバリゼーションは、しばらくは変革を求める人々の願いを原動力として突き進むだろう。そのパワーはわれわれの想像をはるかにしのぐ巨大なものかもしれない。当面は厳しい局面の中で取り組みを継続することが予想されるだろう。しかし「変化」をもとめる人々の願いは決して新自由主義グローバリゼーションによっては実現・達成することはできない。活動の場を、国会から職場、地域、そして世界へと移し、たたかいを継続しよう。本当の社会変革をもとめる人々に訴え続けよう。郵政民営化を阻止することは可能だ、公共サービスと民主主義を取り戻すことは可能だ、もうひとつの世界は可能だ、と。
ATTAC Japan(首都圏)@nother post project
2005年10月15日
小泉自公連立政権は、マスメディアと金融・産業界の全面的支援を受け総選挙に打ってでたにもかかわらず、選挙区の総得票数では、郵政民営化賛成候補者が獲得した票よりも、反対候補者が獲得した票のほうが約30万票も多かった。郵政民営化法案は有権者の信任を得るには至らなかったのだ。にもかかかわらず、小泉自公連立政権は、小選挙区制度という政治的意見の多様性を排除する新自由主義選挙制度によって、衆院の三分の二を制することになった。先の国会でも、また選挙期間中も、そして今国会においても、郵政民営化が誰の要請であり、それはどのような結果をもたらすのかということをあいまいにしつつ、「改革か抵抗か」というイメージだけを押し出した戦略によって議席を拡大した。それは決して郵政民営化法案やそれがもたらす結果が多数の有権者に支持されたということではない。逆に過半数の有権者は、圧倒的な権力と財力を投入して宣伝された郵政民営化のイメージにだまされることなく、先の国会で郵政民営化法案に反対を投じた候補者に投票したのだ。希望の灯は燈りつづけている。
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民意を正確に反映しない小選挙区制度によって水ぶくれ的にふくれた小泉自公連立政権によって成立させられた郵政民営化法案によって、郵政事業という公共サービスは「商品」となる。郵便事業は同業他社との競争を迫られ、そのしわ寄せは労働者と利用者へと押し付けられるだろう。過疎地域の郵便局は撤退し、地域の荒廃はよりいっそうすすむだろう。郵便貯金や簡易保険にあつまる庶民のたくわえは国内外の多国籍金融資本によって奪われ、マネーゲームの掛け金として「金融市場」というカジノに投げ込まれるだろう。脆弱な社会保障を補ってきた庶民の貯金や保険はこうして多国籍金融資本のあらたな「商品」として、完全な自己責任のもとで食いつぶされるだろう。それは私たちが思い描く「もうひとつの世界」とは正反対の「新自由主義の世界」になるだろう。
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郵政民営化を求めたのは私たち市民ではない。それは350兆円にものぼる個人資産をあらたなマネーゲームの資金にしようとする内外の多国籍金融資本の要請である。それは、なんら資本を保有することなく本来であればとっくの昔に没落していただろう階層であるにもかかわらず、日本資本主義の歴史的経緯から、いまだに政治に大きな影響をあたえる可能性のある特定郵便局長らを中心とした古い利権構造を一掃し、弱肉強食の新自由主義グローバリゼーションのルールのもとにこの国の経済を作り変えようとしてきた多国籍産業資本の要請である。たたかいによってかち取られてきた労働者の権利を奪い、公共サービスを破壊し、人間生活と自然環境のすべてを「商品」とする社会をつくりあげる。これこそが郵政民営化の狙いの一つである。多国籍金融・産業資本に主導される新自由主義グローバリゼーションは「小泉」という格好の人材を見出し、彼を権力につけ、そして存分に利用し、このくにを作り変えようとしている。
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郵政民営化法案は、2007年から2017年までの10年間のスパンで民営化を設計している。私たちはこの10年という期間を、民営化の問題点を暴き、それに反対し、職場と地域、そして世界から、新自由主義グローバリゼーションという流れを逆転させる運動を作り上げるために全力を尽くすだろう。民営化にむけた動きの中で、職場内の競争や労働強化、人権侵害はこれまで以上に厳しくなるだろう。とりわけ権利を主張するたたかう労働組合や、無権利状態にある非正規雇用労働者たちに、その矛先はむけられるだろう。地方のサービスは切り捨てられるだろう。それは利用者や地域へのサービスの低下となってあらわれるだろう。今回の国会を中心とした郵政民営化に反対するたたかいを通じて、私たちは公共サービスのあり方、労働のあり方を深く考えさせられた。これは今後のオルターグローバリゼーション運動が取り組むべき課題を浮き彫りにした。私たちは地域から郵便局を包囲し、郵便局で働く労働者とともに、この社会のあり方、働き方、生き方を考え、そして変えていく取り組みを継続するだろう。たたかいの場は国会から職場と地域へと移る。総選挙において郵政民営化反対票が賛成票を上回ったという事実はここで重要な意味を持つだろう。
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職場と地域、労働者と利用者のたたかいををつなぐことになった郵政民営化法案は、もうひとつ、日本の運動とと世界の運動をつなぐことになった。民営化はひとり日本だけで進められてきたものではない。通信や金融の民営化は世界的にも進められており、それは水や教育などの公共サービスという権利や生活に密着する分野にまで拡大してきた。1973年9月11日にアジェンデ政権をCIAの援助によってクーデータで打ち倒したビノチェト独裁のチリが、アメリカの多国籍資本のための民営化の実験場となったことは有名である。その後も、経済的、軍事的に影響力を行使してきたG8をはじめとする世界の大国は、世界銀行や国際通貨基金(IMF)、世界貿易機関(WTO)のサービス貿易に関する一般協定(GATS)など通じて、各国に公共サービスの民営化を強要してきた。人々の生活と自然環境のすべてが「商品」とされ、富めるものはより豊かなサービスを享受し、貧しいものは一切のサービスから排除されようとしている。このような新自由主義的グローバリゼーションがもたらす貧困に対して、「もうたくさんだ!」とメキシコのサパテ・u档Bスタが蜂起してから10年、抵抗は全世界に広がった。民営化に抵抗する世界の社会運動は困難なたたかいを強いられながらも持続・拡大し続けている。今回の日本における郵政民営化反対のたたかいは、世界のオルターグローバリゼーション運動からも注目、激励された。8月8日の参院での法案否決のニュースはあっというまに世界に広がった。「おめでとう!」のメールが世界各地の社会運動から相次いだことは、このたたかいが世界にいかに注目されてきたかを示していた。
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残念ながら、郵政民営化法案は可決、成立した。「小泉」というスポークスパーソンを見出したこの国の新自由主義グローバリゼーションは、しばらくは変革を求める人々の願いを原動力として突き進むだろう。そのパワーはわれわれの想像をはるかにしのぐ巨大なものかもしれない。当面は厳しい局面の中で取り組みを継続することが予想されるだろう。しかし「変化」をもとめる人々の願いは決して新自由主義グローバリゼーションによっては実現・達成することはできない。活動の場を、国会から職場、地域、そして世界へと移し、たたかいを継続しよう。本当の社会変革をもとめる人々に訴え続けよう。郵政民営化を阻止することは可能だ、公共サービスと民主主義を取り戻すことは可能だ、もうひとつの世界は可能だ、と。
ATTAC Japan(首都圏)@nother post project
2005年10月15日
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