ギリシャについて考えた二つの報道

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ΟΧΙ」(オーヒ、ギリシャ語でNOの意)※ギリシャの祝日「オーヒの日」について「ギリシャ人は、〔1940年〕10月28日の〔ファシストイタリアによる侵略に抵抗した〕ギリシャ・イタリア戦争の開戦記念日を『オーヒの日』と名づけて今でも国の祝日として祝っているのです。こんなに弱くて小さい国でも、国の危機のときは敢然と立ち向かう必要があるのだと言うことを後世に伝えようとしているのである。」全文はこちらのブログから

ギリシャ情勢に注目が集まっていますね。ギリシャの仲間たち、がんばれ~。NHKと東京新聞、ふたつのメディアの報道姿勢から考えてみました。以下は2012年5月21日にattac首都圏のメーリングリストに投稿したものです。

二つ、三つ……数多くのギリシャをつくれ、これが合言葉だ!

以下、2012年5月21日のメールです

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ギリシャの反緊縮派の躍進を巡ってなんかマスコミは必死ですね。金貸し=金融資本の本音をこれほどみごとに代弁するのも珍しい? 週末、ギリシャ情勢を伝えるNHKと東京新聞、ふたつのケースについて考えてみました。

★NHKの場合

毎週土曜日の朝のNHKの報道番組、「週刊ニュース深読み」は、分かりにくいニュースを、アナウンサーが模型やパネルなどを使ってプレゼンをして、ゲストや専門家らとの対話を交えて分かりやすく解説しています。

先週5月19日の深読みコーナーは『"ギリシャ危機"ふたたび!?どうなる?わたしたちの暮らし』。浜矩子さん(同志社大学大学院教授)、真壁昭夫さん(信州大学経済学部教授)、神子田章博(NHK国際部記者)が専門家として出演。
※"ギリシャ危機"ふたたび!?どうなる?わたしたちの暮らし(2012年5月19日放送)
http://www.nhk.or.jp/fukayomi/backnumber/120519.html

じつは昨年12月3日の深読みでは、同じ出演者らが『"危機"は食い止められるのか?欧州発 広がる信用不安』と題して欧州国債危機について議論。その中身があまりにひどかったのを記憶していました。
※"危機"は食い止められるのか?欧州発 広がる信用不安(2011年12月3日放送)
http://www.nhk.or.jp/fukayomi/backnumber/111203.html

しかし5月6日に投票が行われたギリシャ総選挙で、緊縮財政に怒るギリシャの人々の押し上げで反緊縮派が躍進し、情勢は一挙に変わりました。番組の冒頭の報道映像でも、反緊縮派の筆頭で、第二党に大躍進し、来月6月17日の選挙では第一党になる可能性もある急進左派連合の党首の発言や街頭デモをするギリシャの人々のコメントを紹介していたころから、同じ専門家の人たちがどういう発言をするのか、ちょっとだけですが期待をもって見ました。

完全に裏切られた、というか裏切られなかったというか、ひどい内容でした・・・。「借金を踏み倒す!?」とか「市場に信頼されない」とか「落ちこぼれ」等など・・・、ひどいなー、と。

ギリシャがユーロ圏に入ったことについては、ドイツやフランスなどの優等生がたくさんいるエリート校に、無理やり入学した落ちこぼれ、という風に表現していました。「だから無理にユーロに残らないほうがギリシャも肩の荷が下りる、エリートたちも本音ではそう思っている」というコメントは「なるほど」とはおもいましたが、それにしても、です。

アナウンサーのプレゼンにはギリシャに投資する「市場UFO」も登場します。

景気のよかったときにはふわふわとギリシャに近寄っていきギリシャ国債を買っていた「市場UFO」なのですが、ギリシャ粉飾発覚やその後の「ギリシャ支援」の枠組みを巡るごたごたによってギリシャから離れていきます。そして反緊縮派が大躍進したいま、「市場UFO」は、ギリシャ、そして緊縮財政と引き換えにギリシャにお金を貸したEUからも離れていこうとする・・・。プレゼンはこんなふう。

「優等生」であるフランスやドイツをはじめとする「市場」という名の民間金融機関が、ただたんにもうけるためだけにギリシャに無茶な投資、投機をしたことにはほとんど触れていません。「市場はすでに借金を半分近く棒引きにしている」と、擁護さえしていました。

しかしその代償としてギリシャ民衆に押し付けられたのは、賃下げ、失業、混乱、社会福祉カット、自殺などなどの緊縮財政です。「借金を踏み倒す!?」と驚きの大声を上げたスタジオゲストたちですが、踏まれて、そして倒されているのは他でもないギリシャの人々のほうです!

他の専門家に比べて、浜矩子さんは比較的冷静にコメントをされていましたが、番組全体に流れる「ギリシャ困ったヤツ」の空気の流れには違和感なく乗っていたきがして、残念でした。

CafeGlobe.comというウェブサイトに連載されている「浜矩子のお金の正体の話」では、昨年10月12日に「ギリシャ発のユーロ危機、なぜ起きた?」というタイトルで浜さんが、この問題を語っています。
※ギリシャ発のユーロ危機、なぜ起きた?(浜矩子のお金の正体の話 2011年10月12日)
http://www.cafeglobe.com/news/hama2/hm111012.html

残念なことに編集の技法として、ギリシャ問題をイソップ童話の「アリとキリギリス」に当てはめ、ドイツを働き者の「アリ」、そしてギリシャを「怠け者のキリギリス」とイメージさせるようになっています。編集側の問題かもしれませんが、極めて残念なことです。

※「浜矩子のお金の正体の話」の最新のテーマは「財政危機と政権交代」。ここでも残念なことに「消費税増税なしに財政再建に近づくことができない」として民主党応援団になっています。
http://www.cafeglobe.com/news/hama2/hm120508.html

NHKは、ギリシャ危機の真相をギリシャ民衆の立場から描いたドキュメンタリー『Debtocracy』(日本題:ギリシャ 財政破綻への処方箋)を、もう一度無償で視聴者に提供すべきだとおもいます。CD化したら絶対買うよ。

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★東京新聞の場合

以前、昨年9月、ギリシャ危機に際して、9月25日付「東京新聞」の日曜社説「週のはじめに考える」がひどい社説を掲載したことを紹介しました。
※社説はリンク切れなのでその社説を紹介したブログ記事のアドレスを紹介しておきます。
http://attackoto.blog9.fc2.com/blog-entry-216.html

ギリシャ総選挙での反緊縮派の躍進によって、「緊縮財政の約束を反故にするのか!」「借金を踏み倒そうとしているのか」という金貸したちの意向を受けた主流メディアをはじめ、世界中がふたたびギリシャ情勢に注目していた2012年5月20日の日曜日、東京新聞の「週のはじめに考える」では、「欧州の分断を選ぶのか」というタイトルでギリシャ情勢について触れています。

「 『まるでギリシャ語のようだ』と英語で言うと、不可解、という意味になるそうです。昨今のギリシャ情勢は、欧州分断の芽をも孕(はら)んでいます。」

という文章から始まる社説、「どうせまた『約束反故なんてけしからん!』というような社説なんだろうな~」と期待もせずに読み出すと、どうもそうではない。
※社説:週のはじめに考える 欧州の分断を選ぶのか(東京新聞2012年5月20日)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2012052002000144.html

「ギリシャは観光以外に有力な産業がないうえ、働く人の四人に一人が公務員といわれるほど公務員天国のお国柄です」というような上っ面だけの昨年9月25日の社説とは違い、今回の社説はギリシャとヨーロッパの関係を歴史的、文化的な流れで描写していて、読み物としても面白い。

そして危機の直接の原因に触れることはしないのですが、こんな風に述べています。

「古代、中世ギリシャ研究に比べ近現代ギリシャを研究する専門家は極めて少ないそうです。そのせいもあるでしょう、ギリシャ危機が語られるのは経済的文脈、それも、国際基準となっている英語圏主流のマクロ経済の文脈に沿ったものが専らです。この文脈で語られることに甘んじる限り、現代ギリシャは『支援に甘える欧州の依存症患者』というイメージから免れそうにありません。」

つまり、英語圏主流のマクロ経済の文脈ではない、別な文脈でギリシャ危機を見ることも可能だということを示唆しているようです。

長くなりましたが、以上、NHKと東京新聞、ふたつのケースについて週末に考えたことでした。
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