
ケイマン諸島との租税協定が署名されました:財務省 2011年2月7日
「本協定は、租税に関する国際標準に基づく税務当局間の実効的な情報交換の実施を可能とするものであり、一連の国際会議等で重要性が確認されている国際的な脱税及び租税回避行為の防止に資することとなります・・・・・・」(財務省報道発表)
証券取引等監視委員会の調べに対し「いつか『当たる』と思ってやっていた。もう100億円あれば、なんとか巻き返せたのに」と答えたAIJの浅川和彦代表取締役らの年金詐欺まがいの防止に資することにはなりませんでした・・・。
2012年2月18日のメール
『タックスヘイブンの闇 世界の富は盗まれている!』
ニコラス・シャクソン 著/藤井清美 訳
定価:2625円(税込)
発売日:2012年2月7日 四六判上製 448ページ
http://publications.asahi.com/ecs/detail/?item_id=13465
「タックスヘイブンは必要だ」という推進派らのキーパーソンらへの取材で、推進派の本音が描かれていて面白いです。そしてそれに対してきっちりと反論をしているのもたいしたものだと思います。
タックスヘイブンがたんに富豪らの租税回避に役立っているだけでなく、それによって社会保障の財源が減少し、その分を庶民が負担することになっていることを明らかにしています。こんなふうにわかりやすく説明しています。
「タックスヘイブンは確かに避難場所だ。ただし、一般庶民にとっての避難場所ではない。オフショアは、富と権力を持つエリートたちが、コストを負担せずに社会から便益を得る手助けをする事業なのだ。」
「具体的なイメージを描くとすれば、こういうことになる。あなたが地元のスーパーマーケットでレジに並んでいると、身なりのいい人たちが赤いベルベットのロープの向こうにある『優先』レジをすいすい通り抜けていく。あなたの勘定書きには、彼らの買い物に補助金を出すための多額の「追加料金」も乗せられている。『申し訳ありません』とスーパーマーケットの店長は言う。『でも、われわれには他に方法がないのです。あなたが彼らの勘定を半分負担してくださらなければ、彼らはよそで買い物をするでしょう。早く払ってください。』」(21頁)
日本でも「税と社会保障の一体改革」などと言っていますが、タックスヘイブンへの規制にまったく手をつけない「改革」のでたらめさが改めて浮き彫りになります。
日本でも、ブラックリストにリストアップされたタックスヘイブンに対する規制として、タックスヘイブンとの情報交換条約を締結するというG20のタックスヘイブン規制にあわせて、2009年のバミューダとの条約締結に向けた協議を皮切りに、ジャージー、ケイマン、マン、スイスなどとの条約の交渉および合意・締結を進めてきています。
・租税条約に関するプレスリリース
日本政府のタックスヘイブン対策については、参議院外交防衛委員会調査室のレポートがわかりやすいです。
・タックス・ヘイブンを利用した脱税及び租税回避行為への対策
G20や日本政府が進めてきたタックスヘイブン規制=タックスヘイブンとの情報交換条約の締結では、規制にならないだろう、しかし、日本の税務当局にとっては税務調査のためには、情報交換条約はないよりはあるほうがいいかな、タックスヘイブンにとってはいやいやでも情報交換条約を締結しないと規制の対象になってしまうから締結したのかな、という程度に考えていたのですが、本書を読んで、これは大きな間違いだった、と思いました。
タックスヘイブンの側にとってではなく、日米欧の大企業や富豪など、租税回避をしたい側にとって、「情報交換条約」を締結することで、タックスヘイブンへの免罪符とし、正々堂々と租税回避ができるようにした、ということです。
「この分野についておそらく誰よりもよく知っているマイケル・マッキンタイア教授は『ブラックリストは悲しいジョークだった』と述べている。OECDのプログラムは、納税者が母国の租税を逃れるのを積極的に手助けしている国々に世間体のよさを与えた」。
「ブラックリストはごまかしだった。先ごろの金融危機で一時的に後退したものの、オフショア・システムは今ではふたたび猛烈な勢いで成長している。そして、OECDは今日に至るまで、そのほとんど役に立たない『請求に基づく』方式の情報交換が『広く受け入れられている国際基準』だと主張しているのである。」(309頁)
多国籍企業は、「二重課税」の回避を主張しますが、それはじつは「二重非課税」とおなじことだと指摘したり、上記タックスヘイブン規制を骨抜きにするために動きまわっているシンクタンクのキーパーソンらを面白おかしく紹介したりと読みどころけっこうあります。
まだまだ読書中ですが、とりあえず感じたことつらつらと書いてみました。
スポンサーサイト